9月21日(火)のBS-TBS『報道1930』はとても重要な問題、この夏の新型コロナの感染爆発がどうして、いま、急激に収束しているのか、を、東大先端研の児玉龍彦を招いて、論じていた。
残念なことに、私はそれと気づかず、終わりの20分ほどになって見た。だから、児玉龍彦が何を言いたかったは、ネット上での番組へのコメントを見ても、良く分からなかった。
きのう、24日(金)になって、TBSの番組サイトに8分17秒のまとめの動画が載った。要約であるが、それでも、非常に驚く内容であったので、もっと完全な動画をみたいと願っている。まとめは、不自然に途中でとぎれている。
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動画によると、細胞内で急激に増殖するRNAウィルスには、複製するときのコピーエラーが多い。コピーエラーが積もると、生存に適さなくなり、自滅するようになる。変異とはコピーエラーのことである。これが、ウィルスの自壊の原理だという。これを「エラーカタストロフ」というらしい。
新型コロナは3万余の塩基の配列からなり、RNAウィルスのなかで他より巨大である。巨大であればあるほど変異が起きやすくなる。変異を防ぐためか、コロナの18番目の遺伝子は、そのコピーエラーを修復する仕組みを生み出すようになっていた。コロナウイルスは巨大だが変異が起きにくいと思われていた。
ところが、新型コロナに昨年の春から変異がやたらと起きるようになった。患者数が多くなれば、複製の回数が増えるから、1回あたりの複製エラーの確率が一定でも、変異がふえる。児玉の仮説では、それだけでなく、複製エラーの確率が変わったという。多数のウィルスが排出されることで、粗製乱造になったのだと推量する。
変異株が感染力を増したのは、ウイルスのスパイク蛋白が、細胞の表面にあるACE2受容体により強く結合して、細胞のなかにより侵入しやすくなったというより、新しい変異株の感染者が排出するウイルスがより多くなったからであるという。
そして、変異株が前の変異株を押しのけ、急激な感染拡大を招き、市中を席捲したころ、コピーエラーが積もって、自壊が始まり、感染が急速に収まる。これが、新型コロナの繰り返す感染の波であるという。
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大事なことは、児玉がウイルスは自滅するとの楽観論を述べているのではないことだ。この辺が、番組が作ったまとめの動画で含まれていない。
児玉は、収束といっても、波の前の水準より高い新規感染者数があると指摘する。粗製乱造されエラーが積み重なったウイルスが死滅するだけで、欠陥の少ない丈夫な株が残っているのだ。そこから、また、粗製乱造する株が変異で生じれば、急激な感染拡大が生じる。そして、医療体制に無理な負荷がかかり、死ななくてもよい人が死ぬ。
収束期にこそ徹底的にウイルスを抑え込まなければならない。特にウイルス排出量の多い新しい変異株が広がるのを未然に抑え込まないといけない。そのために、変異株追跡の遺伝子配列解析検査を増やさないといけない。感染者が出たら、すぐ治療する機関を増やさないといけない。
児玉は、免疫不全の人が新型コロナにかかり、長期療養となると、そのひとりの体内で、ウイルスのいろいろな変異がおきるという。免疫不全の人、基礎疾患のある人の、ワクチンによる予防と感染初期の徹底的治療が、変異株の出現を抑えるためにだいじだと言う。カクテル治療のように、多種の変異株に対応する治療が必要だと言う。
最後に、番組に戻ると、キャスターの松原耕司がすべてを取り仕切る現在の体制では、無理だと思う。報道1930は、事実の的確な把握が命であるので、番組がリサーチャを抱え、問題の深堀をし、それをキャスターに講義した上で、本番に進んだ方がよい。21日(火)では、松原の分子生物学的知識の欠如が目立ち、児玉の話を混乱させるコメントを乱発していた。知識の欠如はだれにでもあることで、自分が何でも知っているとの虚勢を張るより、キャスターは、知らないことを認め、ほかの人にわかりやすく伝える努力をした方がよいと思う。
[お願い]だれか、完全版の21日(火)の録画をネットにあげてください。
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