飛ぶ鳥の
明日香の川の
川上に
茂る玉藻は
川下に
流れて靡く
玉藻なし
寄り添い合って
靡いては
愛する人の
たたなづく
柔肌どころか
剣太刀も
身に添わせずに
褥して
荒れましょう
だからこそ
どう慰めて
よいのやら
もしや逢えるかと
玉垂の
越智の岡辺で
朝露に
裳裾を乱し
夕霧に
衣を濡らせ
旅をする
君に逢いたい
君に逢いたい
【訳者(悠山人)注】柿本人麻呂作。夫忍壁(川島)皇子の死を悼む妻泊瀬部(明日香)皇女。底本西本願寺本。
【電網版原文】http://manyou.utakura.com/index.htm#002