2007-0828-yts441
ひと茎の葦といはれし人の世も
悲喜哀悦に満ちてあるかな 悠山人
○短歌写真、詠む。
○このところ、他人のブログを拝見し、その人生模様に感じることが、非常に多い。私の読者の中にも、複数の方が、深い傷のなかにある。郊外のレストランで、写真のようなディスプレイを眺めながら、一挙にそのあれこれが溢れて来た。結句を「満ちあふれをり」とすると、前句と合わせて混雑し過ぎなので、おとなしく詠んだ。
¶ひと茎(くき)の葦(あし)=いうまでもなく、パスカルの名句である。
¶¶悲喜哀悦(ひきあいえつ)=私の創作四字熟語。
□短写441 ひとくきの あしといはれし ひとのよも
ひきあいえつに みちてあるかな
【写真】先日、レストランO亭で。
【memo】考える葦 Blaise Pascal の『Pensées』。英語の think-thought に対応して、仏語では penser-pensé になる。書名を英語風に読むと「パンジー」で、そのまま外来日本語の花名になった。本題の『パンセ』は、有名なわりには、全部読み切った日本人は、そう多くないと思う。というのも、私の考えによると、哲学者で神学者の文章である、思い浮かんだ言葉・文章が系統的でない、挿入・削除が非常に多い、成立史的に編者・学者の間で論争が絶えない、学者特有の外国語(仏語以外)も多い、他に残らない史実なども注釈なしで頻繁に出て来る、などなどの理由による。私が車のひとつに,いつも入れておいて、時折り眺めるのは、中公文庫版(前田陽一・山本康 訳)だけれど、訳注などを含めて六百ペイジを遥かに超える。
「考える葦」の章句は、中公版で断章347番の前半。例によってわが青の時代に、その前田さんの仏文テクストを完璧に暗誦しておいたので、下に掲げる。悠山人による、お気楽訳は、機会があれば、としよう。
L'homme n'est qu'un roseau, le plus faible de la nature; mais c'est un roseau pensant. Il ne faut pas que l'univers entier s'arme pour l'écraser : une vapeur, une goutte d'eau, suffit pour le tuer. Mais, quand l'univers l'écraserait, l'homme serait encore plus noble que ce qui le tue, puisqu'il sait qu'il meurt, et l'avantage que l'univers a sur lui, l'univers n'en sait rien.