2006-0731-yms098
九重に八重の桜が咲き誇り
かさねて春の花見するとは 悠山人
○紫式部集、詠む。
○略注=前口上に、卯月(うづき[寛弘4年(1007年)四月])に内裏で八重桜が咲くのを見て、と。百人一首に伊勢大輔(たいふ、たゆう、おほすけ。[女性])の「いにしへの奈良の都の」があるけれど、<『伊勢大輔集』によれば、奈良から八重桜が献上された時、伊勢大輔が取り入れるに当り、>「いにしへの」を詠んだ。それに対する<中宮の返歌となっている。作者[紫]が中宮の代作をしたのであろう。>(新潮版) 平王クには、興福寺とこの桜との因縁がもう少し詳しい。平王ク歌番号104。
¶九重に=「九重」「かさねて」、さらに現代詠の「八重」と、桜花
謳歌の縁語尽くし。「かさねて」は、このあいだ春盛りを楽しんだ
ばかりなのに、(遅咲きの)八重桜でまたまた春の花見が出来る
とはと、「きたる」は「来たる」「着たる」と。まさに追い駆け(懸)詞。
□紫098:ここのへに にほふをみれば さくらがり
かさねてきたる はるのさかりか
□悠098:ここのえに やえのさくらが さきほこり
かさねてはるの はなみするとは
*now streaming : Mighty G Sound - The Revival -Mighty G Sound-Amazulu*(sophis'd African songs in their native language)
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2006-0730-yms097
ひっそりとわが家に咲いた紅梅の
香りが雲に届きますよう 悠山人
○紫式部集、詠む。
○略注=宮中へ差し出す紅梅に添えて。里篭りながら、梅の花が綺麗に咲きました。(わが身はまだ出仕していないので、)せめて香りだけでも内裏へ届いてほしいものです。平王ク歌番号103。
○「梅」の読みについて。「むめ」から「うめ」へ移行、が定説で、平王ク・渋谷版とも「むめ」読み。ただし新潮版は指定なし。旺文版古語辞典の用例に、時代はだいぶ下るが、「むめ一輪 一りんほどの あたたかさ」(嵐雪)。「埋」についても同様。ここでは二語同時なので、「むめ」「むも」に統一したが、かなり早い時代から「む」「う」が併用されていたから、「うめ」「うも」は誤記誤読、とは言えない。
¶むもれ木(埋もれ木)=「土中や水中に埋もれている木。」(新
潮版) 続けて「やつるる」(みすぼらしい、貧弱な)と、謙譲を重
ねる。合わせて蟄居生活も滲ませる。平王クは「埋木」と表記。
¶雲の上=宮中。内裏。
□紫097:むもれぎの したにやつるる むめのはな
かをだにちらせ くものうへまで
□悠097:ひっそりと わがやにさいた こうばいの
かおりがくもに とどきますよう
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☆午後、東北を除いて、長すぎた梅雨が明けた。☆
2006-0729-yts190
夕月夜闇に紛れて電磁波の
牙は増えつつ獲物狙ひぬ 悠山人
○短歌写真、詠む。
○ある時とつぜん街中に、田園に登場し、数年で狭い国土に横溢した、「あれ」。今なお限りなく増殖中。便利さと交換したものは何か。【写真の技法】フィルム増感ISO400→3200の感じ。昨夜の月齢は3.3で、まさに「柳眉の月」だった。
¶夕月夜=読みは「ゆふづくよ」から「ゆふづきよ」へ移って来た。
「ゆうづきよ=陰暦10日ごろまでの、夕方だけ月のある夜。」(広辞苑)
□ゆうふづくよ やみにまぎれて でんじはの
きばはふえつつ えものねらひぬ
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私こそ三笠の霞吹き飛ばす
あなたの風を待っているのに 悠山人
○紫式部集、詠む。
○略注=返し。平王ク歌番号102。
¶さし=二歌とも、「三笠」「さし」が使われるが、「(笠を)さす
(差す)」と読み取る。
□紫096:さしこえて いることかたみ みかさやま
かすみふきとく かぜをこそまて
□悠096:わたしこそ みかさのかすみ ふきとばす
あなたのかぜを まっているのに
2006-0728-yts189
空の青海の蒼さよ蘇れ
ヴァナレン帯に汚泥に伏するな 悠山人
○短歌写真、詠む。
○ヴァナレン帯 Van Allen Belts は、地球全体を取り巻く高エネルギーの放射線帯。写真は合成。
□そらのあを うみのあをさよ よみがへれ
ヴァナレンたいに をでいにふするな
*now streaming : To kill a mockingbird - Elmer Bernstein - Suite*
http://59.148.170.254:8080
☆(追記)2006年08月11日付けの朝日新聞は、James Van Allen が9日、91歳で死去した、と報じた。☆
お互いに三笠の麓に住みながら
隔てる谷は深そうですね 悠山人
○紫式部集、詠む。
○略注=詞書は、「少将・中将と名ある人々の、同じ細殿に住みて、少将の君を夜な夜なあひつつ語らふを聞きて、隣の中将」。少将・中将は女房の呼び名。「少将」は既出、親友の小少将か。中将は不詳。細殿(さいでん)は、「殿舎の側面や背面などの細長い廂の間。」(新潮版) この場合は、弘徽殿の西廂の間。平王ク歌番号101。渋谷版は100。
¶三笠山=「ここは、近衛の大将・中将・少将の異名。」(同) 現
代詠も踏襲。
□紫095:みかさやま おなじふもとを さしわきて
かすみにたにの へだつなるかな
□悠095:おたがいに みかさのふもとに すみながら
へだてるたには ふかそうですね
title : Crape myrtle
yyyy/mm : 2005/07
notes : 百日紅。さるすべり。今年は梅雨前線の居座りで、梅雨明けが大幅に遅れている。きのう、ようやく九州・四国に宣言。写真は同期、旧作。
み吉野はもう春霞それなのに
この身は雪の下草なのです 悠山人
○紫式部集、詠む。
○略注=寛弘3(1006)年正月(むつき)10日ごろ、春の歌をとの命があったので、「まだ出で立ちもせぬかくれがにて」と前書き。平王ク歌番号060。
¶かくれが(隠れ家)=「ひっそりと暮らしていた物陰に等しい場
所。または宮仕え前に住んでいた自邸とは別の、目立たない家
か。」(平王ク)
¶みよしの(吉野)=「み」は「御・美・深」の意味と、接頭語・整
調語を兼ねる。吉野山は、深雪で広く知られる。
□紫094:みよしのは はるのけしきに かすめども
むすぼほれたる ゆきのしたくさ
□悠094:みよしのは もうはるがすみ それなのに
このみはゆきの したくさなのです<rdf:RDF xmlns:rdf="http://www.w3.org/1999/02/22-rdf-syntax-ns#" xmlns:trackback="http://madskills.com/public/xml/rss/module/trackback/" xmlns:dc="http://purl.org/dc/elements/1.1/"> </rdf:RDF> --><rdf:RDF xmlns:rdf="http://www.w3.org/1999/02/22-rdf-syntax-ns#" xmlns:trackback="http://madskills.com/public/xml/rss/module/trackback/" xmlns:dc="http://purl.org/dc/elements/1.1/"> </rdf:RDF> -->
title : molto marguerites
yyyy/mm : 2006/07
notes : 木春菊(もくしゅんぎく)。マルグリット marguerite(仏語。通名マーガレット)。英日辞典の発音をカタカナふうに転記すると「マーグリート」。フランス語名が付いているのは、旧仏植民地の原産か。撮影日は承前、河口湖畔。
*now streaming : Blue Six - Close to Home*
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宮中の花が吹きまく風ならば
かたい心もきっと解けます 悠山人
○紫式部集、詠む。
○略注=返し。道長は娘、藤原彰子(しょうし)を天皇(一条)の后にし、紫は彼女に仕えることになる。彰子は以後、中宮彰子と呼ばれる。新潮版はこの歌を中宮の慈愛を称えるものと解釈。平王ク歌番号059。
¶みやまべの花=平王クの注釈は、<深山辺の花……深山辺に
宮前を懸けて、中宮の御前に侍る女房を花に見立てた。> これ
は、なかなか華やかな情景である。
□紫093:みやまべの はなふきまがふ たにかぜに
むすびしみづも とけざらめやは
□悠093:きゅうちゅうの はながふきまく かぜならば
かたいこころも きっととけます