弁護士任官どどいつ集

弁護士から裁判官になった竹内浩史のどどいつ集

裁判を「しない」裁判官か?それとも「できない」「させられない」?

2024年02月01日 18時14分03秒 | 裁判
最高裁を頂点とする「官僚司法」批判の一環として「司法官僚」すなわち「裁判をしない裁判官」に対する批判は、半世紀以上前から続いている。
しかし、私は最近、この批判は不正確かつ不十分なのではないかと疑念を抱くようになった。
本当は「裁判をできない裁判官」、もっと言えば「裁判をさせられない裁判官」なのではないか。
最近激増中の会議で接する「裁判をしない裁判官」たちの裁判実務的なセンスが極めて悪いと感じる場面が多いからだ。おそらく弁護士からの評判も、あまり芳しくない人たちだろう。
こういう人たちが煽てられて、現場の優秀な裁判官をリードしようとするから、文字通りのミスリードをしょっちゅう起こす。明らかに裁判で評価されて出世している訳ではないのだから、もう少し謙虚になってもらいたいものだ。

団藤判事の 思いを継いだ「反対意見」の 宇賀判事

2024年02月01日 00時19分48秒 | 判決どどいつ
名張事件第10次再審請求特別抗告審の1月29日付け最高裁決定の宇賀反対意見から。
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=92687
この事件で直ちに再審を開始すべきとの意見を述べた最高裁判事は初めてらしい。確かにこれまでの最高裁決定は、最善でも名古屋高裁への差戻しまでだった。
宇賀反対意見は、毒ぶどう酒の封緘紙の糊の成分の新鑑定の評価から出発して、新旧全証拠を総合してこの結論を導いた実に立派な意見だと思う。
多数意見は、団藤判事らが築いた白鳥事件決定の「疑わしきは被告人の利益に」の大原則は再審にも適用されるとの判例に違反するのではないかと厳しく指弾した部分もある。
元々一審の津地裁では無罪判決だったから、再審請求の手続は逆転死刑を宣告した名古屋高裁から始まる。おかげで津地裁に請求が来ることは無い。
それにしても、薄い証拠で有罪にされてしまうと、かえって覆すのが難しいという、まさに究極の矛盾を思い知らされる事件だ。