弁護士任官どどいつ集

弁護士から裁判官になった竹内浩史のどどいつ集

転勤までの 半年間で「仮処分出せ」と 言うけれど

2024年02月20日 08時01分47秒 | 大分
私の名前で検索すると、どうしてもこの記事が上位に出て来てしまう。
「裁判官は弁明せず」の法諺もあって品が無いようにも思えたので沈黙してきたが、私の名誉の問題もあるので、この際、反論しておきたい。
https://facta.co.jp/article/201706039.html

大分地裁部総括3年の期間も残すところ半年余りとなった時期、段ボール何箱もになる大量の申立書類が届いた。
その瞬間、在任中の決定はほぼ絶望的と思わされるほどの分量だった。裁判官は常に百件以上の事件を担当していることを忘れないでほしい。いくら重要な事件といっても、市井の通常の事件に対して特急列車並みの優先通行権があるわけではない。
ましてや、合議事件としない訳にはいかないから、裁判長の意見だけで進められるものではない。
そもそも、本案訴訟の最高裁判決と同じ効力を直ちにもたらすような極めて重大な仮処分を、無担保でそう簡単に出せるものではない。

申立書では、多数の争点を総花的に展開するだけで、いわゆる勝負所の設定すらしていなかった。その後の法廷で、弁護団の重鎮は「どの争点でもいいから裁判所が選んで直ちに勝利決定を出してほしい」などと宣うた。

裁判官もスーパーマンではないし、ましてや、大量の情報処理を瞬時に行える量子コンピュータでもない。
この件には限らないが、勝機をみすみす逃してしまうような「戦略」なき弁護団が目立つことは、弁護士任官者として甚だ残念に思っている。