抱きしめて 夏 20

2008-06-05 | イラスト

暗い店内から


君は再び


現れた。


それはまるで暗黒をつんざく


一筋の光のように


私を貫いた。


私は事態を飲み込めないばかりか


さっきまでの悲しみすら忘れ


その光のもとである君へ


駆け寄った。



「ごめん、探した?トイレ分からなくて」



もうどうでもいい。



強く抱きしめた。



もう、どうでもいい。


抱きしめる。



反省の気持ち、君の気持ちの確認


どうでもいい。


君を抱きしめる。


うおおおおおお


なんという嬉しさ


なんという快感


伝わっているか

君へ、この喜びが!


君の拒否反応、今は感じない。

まるで私を受け入れてくれているかのようだ!



君の胸が私に当っている。

なんという喜び!

最高だ。


このまま唇と唇を重ねてしまおうか。


あああ



もう我慢できてない


このまま君を してしまおうか


あのマスターさえいなければな。





青空は再びその広がりを


カモメは再び翼のはためきを


取り戻したかのようだ。


寄せる波

優しい風


まるで永遠のように続く時間を

与えてくれているかのようだ。



何もいらないのだ。


君がいてくれれば


他には何もいらない。



至福の喜びは私を寛大な大人にした。


スッと腕をとき


真面目な顔で君を見つめた。


奇麗だな~


「デザート、食べよう」


「うん」


私はマスターを呼びつけさっきのプリンをオーダーした。


ついさっきマスターがくれた

あのプリンだ。


おいしいことは知っている。


「お待たせしました」






何!さっきと違う。


一瞬焦るが、なんとか冷静を保つ。


君は私を見つめていた。


何故か、目を合わせてくる。


なんとも好意的な視線だ。


一体トイレで何があったのだろう。



そしてプリンを口に入れる。


「ん」

「おいしい」


といって笑顔になった。


私は吸い込まれそうだった。





真っ白なペンキで塗られたウッドデッキ。


そこは幸せで溢れていたのだ。
コメント (3)
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