DAY 21
カラン・・・
客:「どうも~」
ゆうすけ:「いらっしゃい」
「外は寒いでしょ」
客:「もう、冬だねぇ」
ゆうすけ:「冬ですねぇ。」
客:「生、で。」
ゆうすけ:「はいよぅ」
プシュ~・・・
トン
客:「 」
ゴクっ
客:「く~~~・・・」
ゆうすけ:「 」
客:「 」
客:「歌ってもいいかな?」
ゆうすけ:「どうぞ。」
ゴクっ
客:「 」
「♪ サーイ・レン・ナ~イ ♪」
「♪ ホーリィ・ナ~イ ♪」
ゆうすけ:「 」
シクシク・・・
客:「♪ ホ~シ・ワ~・ヒ~カァリー ♪」
客:「ども。ありがとう。」
「気分も晴れたよ。」
ゆうすけ:シクシク
客:「ごめんね。しんみりさせちゃった?」
ゆうすけ:「いえ、良かったです。」
「なんか切なくなっちゃって。」
客:「こんな夜もたまにはいいよね。」
ゆうすけ:「そうですね。」
DAY 22
カラン・・・
客:「おー、寒っ」
ゆうすけ:「いらっしゃい」
客:「なんか暖かいのくれる?」
ゆうすけ:「ホット・ココア」
「なんてどうです?」
客:「えっ、あ、まあ、じゃそれ」
ゆうすけ:「 」
シュボ~・・・・
ボボボ
ゆうすけ:「お待たせしました」
客:「ん、いい香り」
コク
客:「はー。」
「んー。たまにはいいね。ココア」
ゆうすけ:「寒いとこれ欲しくなりますよ」
客:「ふー。」
ゆうすけ:「私も飲もっと」
コク
ゆうすけ:「ふー。」
コク
客:「ふー。」
コク
ゆうすけ:「はー。」
DAY 23
カラン・・・
客:「ご無沙汰~」
ゆうすけ:「どうも」
客:「ここは今年いつ迄?」
ゆうすけ:「実は昨日迄なんすけど」
客:「えっ!?」
「あ、終わってんだ、もう」
ゆうすけ:「ま、いっすよ。」
「何します?」
客:「いいの?」
「じゃその前にトイレ借りるわ」
ゆうすけ:「あ、トイレ終わっちゃってんです」
客:「えー!?何それー!?」
ゆうすけ:「最後の掃除して」
「お浄めしちゃったんです」
客:「お浄め?」
ゆうすけ:「最後の掃除」
客:「あ、そう。」
「じゃ、いいわ。駅でするから」
「そのまま帰るわ。」
ゆうすけ:「そうですか」
客:「浄めたとこへするのもやだしさ」
ゆうすけ:「その方がいいです」
客:「ま、じゃ良い年を」
ゆうすけ:「よいお年を」
「よいしょんべんを!」
客:「やなこというねー」
バタン・・・
ゆうすけ:「また、ひとりか」
DAY 24
カラン・・・
外国人客:「ア・ハッピー」
「ニュー・イヤー!」
「アレ?ダレモ・イナイゾ」
ピラ
外国人客:「ナンダ?コノ・カミハ?」
「ドレドレ・・・」
紙:「あけましておめでとうございます」
「昨年をもちまして私退職いたしました」
「今年はかってにやって下さい」
「店主 ゆうすけ」
外国人客:「エー!ウッソー!」
「シンジラレナイ」
「エー?」
ゆうすけ:「よう。」
「ティム。」
外国人客:「ユウスケ!?」
「コレナニヨ!!」
ゆうすけ:「おう。もう店はやめだ。」
外国人客:「ジャナニシニココへ?」
「ノコノコト」
ゆうすけ:「オレが働くのを止めただけだ。」
「スナック・ゆうすけは続くよ。」
外国人客:「?」
ゆうすけ:「今日からオレも客って訳だ」
外国人客:「ワカラナイ」
ゆうすけ:「オレだって分からんさ」
「これからどうなるのか」
「只、このスペースは」
「今後も解放されているってこと」
外国人客:「ワタシモ・オーケイ?」
ゆうすけ:「いいよ。もちろん」
「もう商売じゃないってわけ。」
「新しいこと始めようぜここでよう」
「じいちゃんの店でよう。」
外国人客:「アタラシイコト・・・」
「テロ?」
ゆうすけ:「それはないよね。」
外国人客:「タノシソウデス」
ゆうすけ:「テロじゃないよ。」
外国人客:「ナカマ・ヨビマス」
ゆうすけ:「いいよ。」
外国人客:「カクメイ・シマショウ」
ゆうすけ:「あんた、目がこわいよ。」
DAY 25
カラン・・・
客:「よう。」
ゆうすけ:「よう。」
客:「なに営業しないってほんとなの?」
ゆうすけ:「そのつもりだよ。」
客:「フリー・スペースって訳だ、ここは」
ゆうすけ:「オレの部屋だと思って。」
客:「飲む時はどうすればいい?」
ゆうすけ:「そのビール・サーバーの」
「上にお金置いといてくれよ。」
客:「あれ?いくらだったっけ?」
ゆうすけ:「どうでもいいよそんなもん」
客:「じゃ20円っと。」
「よっこいしょっと」
シュポーン・・・
客:「わ!泡が飛んできたっなんだこれっ」
ゆうすけ:「あ、樽が終わったんだ。」
客:「スーツ濡れっちゃったよ・・・」
ゆうすけ:「 」
客:「あーあ」
ゆうすけ:「 」
客:「で、ビールは?」
ゆうすけ:「もうないんだよ。今日は」
客:「やれやれ」
ゆうすけ:「やなら帰れよ」
客:「もうちょっといいじゃない。」
「で、何してんの?あんた」
ゆうすけ:「考え中。」
「金の儲け方ね。」
客:「考えてたって金はこないぜ。」
「老人からのアドバイス・・・」
ゆうすけ:「黙って。」
客:「尖ってるね~。」
「店やってる時のがいい顔してたよ」
ゆうすけ:「もう!黙って!」
「帰って!来ないで!」
客:「お~ コワ!」
DAY 26
カラン・・・
客:「どーもー・・・」
「あれっ」
ゆうすけ:「 」
スー スー
客:「あらやだ、この人寝てるよ。」
ジー。
ゆうすけ:「 」
スー スー
客:「帰ろっと」
バタン!
DAY 27
カラン・・・
客:「おっす。」
ゆうすけ:「よー。」
客:「なに、表の看板?」
ゆうすけ:「原田塾?」
客:「うん。何それ?」
ゆうすけ:「色々考えてさ」
「教育が一番向いてると思って。」
「オレにとってね。」
客:「何教えるの?」
ゆうすけ:「思想だよ。」
客:「子供に?」
ゆうすけ:「未来を作るのは子供だぜ。」
客:「で、あんたに思想なんてあるの?」
ゆうすけ:「あるよ。」
客:「へー。」
ゆうすけ:「明治維新の前にはそんな」
「塾があったらしいよ。」
客:「で、生徒はどうやって集めるの?」
ゆうすけ:「それがさ、名案があってさ!」
「隣にスポーツ・ジムあるじゃん」
「そこが先月ヨガ教室始めたんだわ。」
客:「?」
ゆうすけ:「で、それに通うマダムに営業かけてね。」
客:「その子供を預かると・・・」
ゆうすけ:「そいうこと」
「託児所の感覚。学童?みたいな。」
客:「あんた信用されたんだ。」
ゆうすけ:「ひとり、昔の常連さんでさ。」
「でもま、今のお母さん方って」
「自分の生活優先らしいよ。」
客:「そうっぽいよね。」
ゆうすけ:「で、子供一人につき」
「1時間3千円。ポッキリ。」
「で、オレが思想を伝授すると。」
客:「コワ~・・・」
「あんたみたいのが増えると思うと」
「コワ~・・・」
「で、いつから?」
ゆうすけ:「もう先週から毎日やってるよ。」
「今日もやってたし。」
客:「ちょっと面白そう。」
「今度見に来るわ。」
ゆうすけ:「授業中は立ち入り禁止だから。」
DAY 28
ウィーン・・・
客:「あっ 自動ドア!」
ゆうすけ:「いらっしゃいませ」
客:「えっ、店に戻ったの!?」
ゆうすけ:「ええ。」
「人生そんなに楽じゃなかった」
客:「やっと気付いたのね。」
ゆうすけ:「1ヶ月もご迷惑かけました。」
客:「ま、私はいいけどさ。」
「こうやって来てる訳だし」
「でも常連減ったでしょ」
ゆうすけ:「当然減りましたね。」
客:「どうする気?今後。」
ゆうすけ:「借金ですが、」
「この店をリニュアール」
「していくつもりです」
客:「ああ、それで入り口も」
ゆうすけ:「便利でしょ。」
客:「いや、私は前の扉が良かった。」
「趣があった」
ゆうすけ:「 」
「え、でもプロの業者が」
「自動じゃなきゃって」
客:「そりゃその人達商売だもの。」
「着けさしたいに決まってるじゃん」
ゆうすけ:「うわっ騙された!」
「なんとか商法?」
客:「そんなレベルじゃなくて、」
「あんたがアホなんだよ」
ゆうすけ:「そりゃないよ~」
「いくらしたと思ってんのよ~」
ウィ~ン・・・
外国人客:「ワオ、ジドウ、イイネ!」
ゆうすけ:「でしょっ!!」
DAY 29
ウィーン・・・
客:「わっすごい爆音!」
音楽:♪チャチャチャチャチャチャチャ・・・♪
ゆうすけ:「らっしゃい!」
客:「すごい音だね」
音楽:♪チャチャチャチャチャチャ♪
ゆうすけ:「JBL、JBL」
客:「えっ?」
ゆうすけ:「スピーカー、スピーカー」
客:「えっ?」
音楽:♪チャチャチャチャチャチャチャ♪
客:「ノリノリだね、生ちょうだい」
ゆうすけ:「えっ?」
音楽:♪チャチャチャチャチャチャチャ♪
客:「生、ちょうだい!」
ゆうすけ:「えっ?」
客:「もういいわ!」
DAY 30
ウィーン・・・
ゆうすけ:「いらっしゃい。」
客:「よっ」
ゆうすけ:「何します?」
客:「じゃ、ジン・ライムくれる?」
ゆうすけ:「はい」
客:「きちんとした店に戻って嬉しいよ」
ゆうすけ:「ありがとうございます」
「ジンライムお待たせしました。」
トン・・・
客:「おっ 。」
グビ
客:「ん~。」
グビ
客:「異常気象だよなー。最近」
ゆうすけ:「ええほんと」
客:「あ、雪だ。」
ゆうすけ:「わっ、急にすごいですね」
客:「わー、凄い降ってきた」
「この曲のせいじゃない?」
「誰の曲?」
ゆうすけ:「レミオロメンの粉雪です」
客:「それだよ、きっと。」
ゆうすけ:「そうですかね。」
外国人客:「ワタシコノウタスキ」
ゆうすけ:「へ~。」
外国人客:♪コナ~ ユキ、ネエ♪
DAY 31
ウィーン・・・
客:「ねぇっ、隣の寿司屋つぶれたの!?」
ゆうすけ:「そうみたいですよ。」
「先月いっぱいだったかな。」
客:「え~、今日あそこの穴子丼食いに来たのに~」
ゆうすけ:「あれうまかったですよね」
「噛まないでもとろけるって」
客:「オレの知る中では一番の穴子だったよ」
ゆうすけ:「あのタレもね、絶妙で。」
客:「あ~!喰いて~!」
ゆうすけ:「うちのでよければ」
「食べていきますか?」
客:「あるの?」
ゆうすけ:「レトルトですけど」
客:「もらおうかな。」
「なんかもう穴子しか喰いたくない気分」
チ~ン・・・
ササッ
ゆうすけ:「はい、お待たせしました」
客:「ん、どれ」
ムニャムニャ
客:「う、うまい!」
DAY 32
ウィ~ン・・・
客:「 」
ゆうすけ:「いらっしゃいませ。」
客:「ここ空いてる?」
ゆうすけ:「ええ。どうぞ。」
客:「ふぅ~。」
「生で。」
ゆうすけ:「はい」
プシュ~
トン・・・
ゆうすけ:「はい、どうぞ。」
客:「 」
グビ
客:「フゥ~。」
グビ
ゆうすけ:「何かあったんですか?」
客:「 」
「今日、妻と別れたんだ。」
ゆうすけ:「 、え、ええっ」
「えええ」
客:「ま、君には分からん問題だよ。」
「熟年離婚。」
ゆうすけ:「 」
客:「すれ違いの連続さ。」
グビ
グビ
グビ
ゆうすけ:「このキムチ、食べて下さい。」
客:「俺キムチ駄目なんだ、悪いね。」
ゆうすけ:「すれ違いましたね。」
客:「えっ?」
ゆうすけ:「私の気持ち、届かなかった。」
客:「えっ? どういう意味?」
ゆうすけ:「こういう積み重ねが」
「奥さんには苦痛だったんでしょう。」
客:「食えないもんはしょうがないだろ」
ゆうすけ:「そうかもしれません」
「私には分かりません。」
客:「分からないなら放っといてくれよ。」
ゆうすけ:「すみません。」
DAY 33
ウィーン・・・
客:「やってます?」
ゆうすけ:「やってますよ。」
客:「良かった入ろ入ろ」
子供:「お腹すいたよ~」
ゆうすけ:「いらっしゃい。」
客:「メニューどこ?」
ゆうすけ:「特に用意してないんですが」
子供:「お腹すいたよ~」
客:「カレー、あります?」
ゆうすけ:「中辛でよければありますよ。」
客:「ダメだわ。子供が食べるんですもん。」
「お子様プレートなんかないわよね」
ゆうすけ:「ええ。ちょっとそういうのは。」
子供:「お腹すいたよ~」
ゆうすけ:「お向いにマクドナルドありますよ。」
客:「もう我慢できないのよこの子」
ゆうすけ:「ピザ、ありますよ。」
客:「すぐできるの?」
ゆうすけ:「10分少々で。」
客:「だからすぐ食べたいって言ってるでしょっ」
ゆうすけ:「 」
子供:「お腹すいたよ~」
客:「じゃもう、カレーでいいわ!」
ゆうすけ:「はい。」
チ~ン・・・
ササッ
ゆうすけ:「お待たせしました。」
客:「はいはいはい、ノリちゃん」
「召し上がれ~」
子供:「いただきまーす」
モグモグ
子供:「お母さん、辛いよ~」
モグモグ
子供:「辛いけど美味しいよ。」
カラン・・・
客:「どうも~」
ゆうすけ:「いらっしゃい」
「外は寒いでしょ」
客:「もう、冬だねぇ」
ゆうすけ:「冬ですねぇ。」
客:「生、で。」
ゆうすけ:「はいよぅ」
プシュ~・・・
トン
客:「 」
ゴクっ
客:「く~~~・・・」
ゆうすけ:「 」
客:「 」
客:「歌ってもいいかな?」
ゆうすけ:「どうぞ。」
ゴクっ
客:「 」
「♪ サーイ・レン・ナ~イ ♪」
「♪ ホーリィ・ナ~イ ♪」
ゆうすけ:「 」
シクシク・・・
客:「♪ ホ~シ・ワ~・ヒ~カァリー ♪」
客:「ども。ありがとう。」
「気分も晴れたよ。」
ゆうすけ:シクシク
客:「ごめんね。しんみりさせちゃった?」
ゆうすけ:「いえ、良かったです。」
「なんか切なくなっちゃって。」
客:「こんな夜もたまにはいいよね。」
ゆうすけ:「そうですね。」
DAY 22
カラン・・・
客:「おー、寒っ」
ゆうすけ:「いらっしゃい」
客:「なんか暖かいのくれる?」
ゆうすけ:「ホット・ココア」
「なんてどうです?」
客:「えっ、あ、まあ、じゃそれ」
ゆうすけ:「 」
シュボ~・・・・
ボボボ
ゆうすけ:「お待たせしました」
客:「ん、いい香り」
コク
客:「はー。」
「んー。たまにはいいね。ココア」
ゆうすけ:「寒いとこれ欲しくなりますよ」
客:「ふー。」
ゆうすけ:「私も飲もっと」
コク
ゆうすけ:「ふー。」
コク
客:「ふー。」
コク
ゆうすけ:「はー。」
DAY 23
カラン・・・
客:「ご無沙汰~」
ゆうすけ:「どうも」
客:「ここは今年いつ迄?」
ゆうすけ:「実は昨日迄なんすけど」
客:「えっ!?」
「あ、終わってんだ、もう」
ゆうすけ:「ま、いっすよ。」
「何します?」
客:「いいの?」
「じゃその前にトイレ借りるわ」
ゆうすけ:「あ、トイレ終わっちゃってんです」
客:「えー!?何それー!?」
ゆうすけ:「最後の掃除して」
「お浄めしちゃったんです」
客:「お浄め?」
ゆうすけ:「最後の掃除」
客:「あ、そう。」
「じゃ、いいわ。駅でするから」
「そのまま帰るわ。」
ゆうすけ:「そうですか」
客:「浄めたとこへするのもやだしさ」
ゆうすけ:「その方がいいです」
客:「ま、じゃ良い年を」
ゆうすけ:「よいお年を」
「よいしょんべんを!」
客:「やなこというねー」
バタン・・・
ゆうすけ:「また、ひとりか」
DAY 24
カラン・・・
外国人客:「ア・ハッピー」
「ニュー・イヤー!」
「アレ?ダレモ・イナイゾ」
ピラ
外国人客:「ナンダ?コノ・カミハ?」
「ドレドレ・・・」
紙:「あけましておめでとうございます」
「昨年をもちまして私退職いたしました」
「今年はかってにやって下さい」
「店主 ゆうすけ」
外国人客:「エー!ウッソー!」
「シンジラレナイ」
「エー?」
ゆうすけ:「よう。」
「ティム。」
外国人客:「ユウスケ!?」
「コレナニヨ!!」
ゆうすけ:「おう。もう店はやめだ。」
外国人客:「ジャナニシニココへ?」
「ノコノコト」
ゆうすけ:「オレが働くのを止めただけだ。」
「スナック・ゆうすけは続くよ。」
外国人客:「?」
ゆうすけ:「今日からオレも客って訳だ」
外国人客:「ワカラナイ」
ゆうすけ:「オレだって分からんさ」
「これからどうなるのか」
「只、このスペースは」
「今後も解放されているってこと」
外国人客:「ワタシモ・オーケイ?」
ゆうすけ:「いいよ。もちろん」
「もう商売じゃないってわけ。」
「新しいこと始めようぜここでよう」
「じいちゃんの店でよう。」
外国人客:「アタラシイコト・・・」
「テロ?」
ゆうすけ:「それはないよね。」
外国人客:「タノシソウデス」
ゆうすけ:「テロじゃないよ。」
外国人客:「ナカマ・ヨビマス」
ゆうすけ:「いいよ。」
外国人客:「カクメイ・シマショウ」
ゆうすけ:「あんた、目がこわいよ。」
DAY 25
カラン・・・
客:「よう。」
ゆうすけ:「よう。」
客:「なに営業しないってほんとなの?」
ゆうすけ:「そのつもりだよ。」
客:「フリー・スペースって訳だ、ここは」
ゆうすけ:「オレの部屋だと思って。」
客:「飲む時はどうすればいい?」
ゆうすけ:「そのビール・サーバーの」
「上にお金置いといてくれよ。」
客:「あれ?いくらだったっけ?」
ゆうすけ:「どうでもいいよそんなもん」
客:「じゃ20円っと。」
「よっこいしょっと」
シュポーン・・・
客:「わ!泡が飛んできたっなんだこれっ」
ゆうすけ:「あ、樽が終わったんだ。」
客:「スーツ濡れっちゃったよ・・・」
ゆうすけ:「 」
客:「あーあ」
ゆうすけ:「 」
客:「で、ビールは?」
ゆうすけ:「もうないんだよ。今日は」
客:「やれやれ」
ゆうすけ:「やなら帰れよ」
客:「もうちょっといいじゃない。」
「で、何してんの?あんた」
ゆうすけ:「考え中。」
「金の儲け方ね。」
客:「考えてたって金はこないぜ。」
「老人からのアドバイス・・・」
ゆうすけ:「黙って。」
客:「尖ってるね~。」
「店やってる時のがいい顔してたよ」
ゆうすけ:「もう!黙って!」
「帰って!来ないで!」
客:「お~ コワ!」
DAY 26
カラン・・・
客:「どーもー・・・」
「あれっ」
ゆうすけ:「 」
スー スー
客:「あらやだ、この人寝てるよ。」
ジー。
ゆうすけ:「 」
スー スー
客:「帰ろっと」
バタン!
DAY 27
カラン・・・
客:「おっす。」
ゆうすけ:「よー。」
客:「なに、表の看板?」
ゆうすけ:「原田塾?」
客:「うん。何それ?」
ゆうすけ:「色々考えてさ」
「教育が一番向いてると思って。」
「オレにとってね。」
客:「何教えるの?」
ゆうすけ:「思想だよ。」
客:「子供に?」
ゆうすけ:「未来を作るのは子供だぜ。」
客:「で、あんたに思想なんてあるの?」
ゆうすけ:「あるよ。」
客:「へー。」
ゆうすけ:「明治維新の前にはそんな」
「塾があったらしいよ。」
客:「で、生徒はどうやって集めるの?」
ゆうすけ:「それがさ、名案があってさ!」
「隣にスポーツ・ジムあるじゃん」
「そこが先月ヨガ教室始めたんだわ。」
客:「?」
ゆうすけ:「で、それに通うマダムに営業かけてね。」
客:「その子供を預かると・・・」
ゆうすけ:「そいうこと」
「託児所の感覚。学童?みたいな。」
客:「あんた信用されたんだ。」
ゆうすけ:「ひとり、昔の常連さんでさ。」
「でもま、今のお母さん方って」
「自分の生活優先らしいよ。」
客:「そうっぽいよね。」
ゆうすけ:「で、子供一人につき」
「1時間3千円。ポッキリ。」
「で、オレが思想を伝授すると。」
客:「コワ~・・・」
「あんたみたいのが増えると思うと」
「コワ~・・・」
「で、いつから?」
ゆうすけ:「もう先週から毎日やってるよ。」
「今日もやってたし。」
客:「ちょっと面白そう。」
「今度見に来るわ。」
ゆうすけ:「授業中は立ち入り禁止だから。」
DAY 28
ウィーン・・・
客:「あっ 自動ドア!」
ゆうすけ:「いらっしゃいませ」
客:「えっ、店に戻ったの!?」
ゆうすけ:「ええ。」
「人生そんなに楽じゃなかった」
客:「やっと気付いたのね。」
ゆうすけ:「1ヶ月もご迷惑かけました。」
客:「ま、私はいいけどさ。」
「こうやって来てる訳だし」
「でも常連減ったでしょ」
ゆうすけ:「当然減りましたね。」
客:「どうする気?今後。」
ゆうすけ:「借金ですが、」
「この店をリニュアール」
「していくつもりです」
客:「ああ、それで入り口も」
ゆうすけ:「便利でしょ。」
客:「いや、私は前の扉が良かった。」
「趣があった」
ゆうすけ:「 」
「え、でもプロの業者が」
「自動じゃなきゃって」
客:「そりゃその人達商売だもの。」
「着けさしたいに決まってるじゃん」
ゆうすけ:「うわっ騙された!」
「なんとか商法?」
客:「そんなレベルじゃなくて、」
「あんたがアホなんだよ」
ゆうすけ:「そりゃないよ~」
「いくらしたと思ってんのよ~」
ウィ~ン・・・
外国人客:「ワオ、ジドウ、イイネ!」
ゆうすけ:「でしょっ!!」
DAY 29
ウィーン・・・
客:「わっすごい爆音!」
音楽:♪チャチャチャチャチャチャチャ・・・♪
ゆうすけ:「らっしゃい!」
客:「すごい音だね」
音楽:♪チャチャチャチャチャチャ♪
ゆうすけ:「JBL、JBL」
客:「えっ?」
ゆうすけ:「スピーカー、スピーカー」
客:「えっ?」
音楽:♪チャチャチャチャチャチャチャ♪
客:「ノリノリだね、生ちょうだい」
ゆうすけ:「えっ?」
音楽:♪チャチャチャチャチャチャチャ♪
客:「生、ちょうだい!」
ゆうすけ:「えっ?」
客:「もういいわ!」
DAY 30
ウィーン・・・
ゆうすけ:「いらっしゃい。」
客:「よっ」
ゆうすけ:「何します?」
客:「じゃ、ジン・ライムくれる?」
ゆうすけ:「はい」
客:「きちんとした店に戻って嬉しいよ」
ゆうすけ:「ありがとうございます」
「ジンライムお待たせしました。」
トン・・・
客:「おっ 。」
グビ
客:「ん~。」
グビ
客:「異常気象だよなー。最近」
ゆうすけ:「ええほんと」
客:「あ、雪だ。」
ゆうすけ:「わっ、急にすごいですね」
客:「わー、凄い降ってきた」
「この曲のせいじゃない?」
「誰の曲?」
ゆうすけ:「レミオロメンの粉雪です」
客:「それだよ、きっと。」
ゆうすけ:「そうですかね。」
外国人客:「ワタシコノウタスキ」
ゆうすけ:「へ~。」
外国人客:♪コナ~ ユキ、ネエ♪
DAY 31
ウィーン・・・
客:「ねぇっ、隣の寿司屋つぶれたの!?」
ゆうすけ:「そうみたいですよ。」
「先月いっぱいだったかな。」
客:「え~、今日あそこの穴子丼食いに来たのに~」
ゆうすけ:「あれうまかったですよね」
「噛まないでもとろけるって」
客:「オレの知る中では一番の穴子だったよ」
ゆうすけ:「あのタレもね、絶妙で。」
客:「あ~!喰いて~!」
ゆうすけ:「うちのでよければ」
「食べていきますか?」
客:「あるの?」
ゆうすけ:「レトルトですけど」
客:「もらおうかな。」
「なんかもう穴子しか喰いたくない気分」
チ~ン・・・
ササッ
ゆうすけ:「はい、お待たせしました」
客:「ん、どれ」
ムニャムニャ
客:「う、うまい!」
DAY 32
ウィ~ン・・・
客:「 」
ゆうすけ:「いらっしゃいませ。」
客:「ここ空いてる?」
ゆうすけ:「ええ。どうぞ。」
客:「ふぅ~。」
「生で。」
ゆうすけ:「はい」
プシュ~
トン・・・
ゆうすけ:「はい、どうぞ。」
客:「 」
グビ
客:「フゥ~。」
グビ
ゆうすけ:「何かあったんですか?」
客:「 」
「今日、妻と別れたんだ。」
ゆうすけ:「 、え、ええっ」
「えええ」
客:「ま、君には分からん問題だよ。」
「熟年離婚。」
ゆうすけ:「 」
客:「すれ違いの連続さ。」
グビ
グビ
グビ
ゆうすけ:「このキムチ、食べて下さい。」
客:「俺キムチ駄目なんだ、悪いね。」
ゆうすけ:「すれ違いましたね。」
客:「えっ?」
ゆうすけ:「私の気持ち、届かなかった。」
客:「えっ? どういう意味?」
ゆうすけ:「こういう積み重ねが」
「奥さんには苦痛だったんでしょう。」
客:「食えないもんはしょうがないだろ」
ゆうすけ:「そうかもしれません」
「私には分かりません。」
客:「分からないなら放っといてくれよ。」
ゆうすけ:「すみません。」
DAY 33
ウィーン・・・
客:「やってます?」
ゆうすけ:「やってますよ。」
客:「良かった入ろ入ろ」
子供:「お腹すいたよ~」
ゆうすけ:「いらっしゃい。」
客:「メニューどこ?」
ゆうすけ:「特に用意してないんですが」
子供:「お腹すいたよ~」
客:「カレー、あります?」
ゆうすけ:「中辛でよければありますよ。」
客:「ダメだわ。子供が食べるんですもん。」
「お子様プレートなんかないわよね」
ゆうすけ:「ええ。ちょっとそういうのは。」
子供:「お腹すいたよ~」
ゆうすけ:「お向いにマクドナルドありますよ。」
客:「もう我慢できないのよこの子」
ゆうすけ:「ピザ、ありますよ。」
客:「すぐできるの?」
ゆうすけ:「10分少々で。」
客:「だからすぐ食べたいって言ってるでしょっ」
ゆうすけ:「 」
子供:「お腹すいたよ~」
客:「じゃもう、カレーでいいわ!」
ゆうすけ:「はい。」
チ~ン・・・
ササッ
ゆうすけ:「お待たせしました。」
客:「はいはいはい、ノリちゃん」
「召し上がれ~」
子供:「いただきまーす」
モグモグ
子供:「お母さん、辛いよ~」
モグモグ
子供:「辛いけど美味しいよ。」