俺が商売に関わりだしたのは10歳そこそこ。
家業の飲食店の手伝いだ。
生まれた時から店にいたよ。
レジの横のベビーカーに寝かされてたらしい。
雑多な空気の中で育った。
厨房裏でくつろぐ職人たち
パンチパーマ 金のチェーン
そしてタバコの煙
かっこいいな~って短パン姿の俺はみてた。
うちの店は拡大して行き、いろんな場所にできた
動物園なんかにもできた
緑のもえる季節、ゴールデンウィークなんかには
外に出店を作って売った
テキ屋です
人通りがありそうなところでアイスクリームを売る
今から、18年近くも前か
飛ぶように売れたな~
ディッシャーアイスだったけど
もう手ががくがくでね
俺だったまだ子供だったけど
売る相手もやっぱり子供
あんまり疲れた時なんか
客にガンくれてたよ
今も思うけどそれは仕方ない
欲しけりゃ黙って並べってね
並んでろ ガキどもって
見れば仲良さそうなファミリー
ゴールデンウィーク満喫だね
そっちサイドじゃ素晴らしい景色だろうよ
大自然、動物たち
彼らが浮かれていればその分だけ
俺はより深くしらけた
酔っぱらいの隣にいると酔えないのと同じ
ただ、俺だって一人じゃなかったよ
血眼になって売りまくる父が横にいた
山下公園の全盛の頃
そこでも売店開いてた
夏の花火大会はすごかった
若い男女が見つめ合ってとろけてた
そんなのを見て俺は内心思った
アホかなこいつら
正面は気合いまんまんの男なんだけど
後頭部にネグセがあったり
なんかへんな顔だったり
そんなのを見て笑っていた
みんなにとっての楽しむ時間は
俺のとっての仕事の時間
だから客はみんな楽しんでる人たち
俺の体制への反逆精神はこのへんの
屈折にあるんだろうな
みみっちいけどしょうがないよ
動物園の売店で、ちょうどユニクロ旋風の時
俺はたしか大学生
親子そろってユニクロフリース
ちょっと見渡すとほとんどの家族がユニクロユリース
子供たちはなんでもないけど
親たちはなんか気まずそうだったな
気まずい国民服みたいな
もののあわれを感じました。
そしてアホだなって思いました。
でもあの当時の日本人のが今よりはましだな
今じゃ女性は疑似セレブ 男は偽トコロさんだもんな
なりきってるから怖いんだよ
あのユニクロ軍団の恥じらいがないんだよ
動物園に来る親たちは
そう、まさに俺の世代
失われた世代
失われたまま消えようよ
そんな人たちに俺はかき氷を作るよ
子供はまんまと欲しがるからね
目を見りゃ分かる
かかったかどうか
で親をみて分かる 買うかどうか
うちの売店の前は段差になってて
たまに子供がこけるんだよね
ちょっとの段差だから怪我はしないけど
かき氷とかポップコーンとかこぼしちゃうの
そんなときは笑う
疲れれいても笑える
いい子にはもう一度入れてあげる
悪ガキでもお母さんがきれいな人だったら入れる
人が楽しむところで働く
それが俺の業
カルマです