
「先生!この炉縁、早くしまってください。」
一月の稽古も二週目を過ぎたころ、こんな声が。
傷つけそうで心配なのだそうです。
「お正月くらいいいでしょう。」というのですが。
そういえば今週末の初顔合わせの茶会は、長板でお点前をと思っているので、
その稽古をしているのですが、
塗りを気遣って水指の蓋を恐る恐る置いています。
その気持ちもわかりますが、
扱いやすい気楽な道具でばかりやっていると、
注意深く扱う気持ちが育たないと思う親心なのですけど。
炉の釜は、小間で使う柏葉姥口釜です。
口の形の関係で、柄杓のかけ方が違うので、
これも練習のために出してきました。
私の大好きな釜で、木越三右衛門造りです。
初代「宮崎寒雉」の弟子で、とても腕の良い職人だったと聞きます。
ですからこれは江戸時代のものです。
縁あって私の手元に来てから五年。
味わいを増すように毎年出しては使っています。
釜肌が少しずつ変化していくのを楽しみにしているのです。
和ずくという砂鉄から採った鉄で作った昔の釜は、
風合いも良く、錆びにくい。
でも細工はとてもしずらいようです。
誰かが引きついて使っていただけるように、
大切に育てていきたいなと思っています。
「なにも姥口でなくて、爺口でもよかったのに」
と言ったりしましたが、
やはりこの口のすぼめ方は姥口でしょうかね。
今は入れ歯が発達していますから、
こんな口になるおばあさんも少ないと思いますが。
終わりはこんな話でごめんなさい。
