本文から
「ぼくはお母さんの腕を切り落としました・・・」
12歳の時に「神の抵抗軍」という反政府軍に誘拐された少年の話。
ぼくには家族がいて普通に暮らしていました。ある日、お母さんが隣村まで用事で出かけました。ぼくはお母さんの帰りが待ちきれず、隣村に迎えに行きました。その途中で、銃を持った兵士たちに囲まれ、反政府軍の部隊に連れていかれたんです。数日してからでした。大人の兵士たちは、ぼくを村まで連れてくると、お母さんを前にしてこう命令しました。
「この女を殺せ!」
僕のお母さんを銃の先でこづきました。怖くて怖くて仕方がありませんでした。
もちろん、「そんなことできない」といいました。そうすると、今度は鉈を持たされ、「それなら、片腕を切り落とせ!そうしなければお前も、この女も殺す!」
ぼくはお母さんが大好きでした。恐ろしくて手が震え、頭の中が真っ白になりました。
とにかく、お母さんも僕も、命だけは助けて欲しいと思いました。
ぼくは手渡された鉈をお母さんの腕に何度も振り下ろしました。
手首から下が落ちました。そのあと棒をわたされ、兵士は「お母さんを殴れ」と命令しました。
僕はお母さんを棒で殴りました。
お母さんは気を失っただけで、命は助かりました。ぼくはそのまま、大人の兵士に部隊へ連れて行かれ、これまでの3年間、兵士として戦って来ました。
1998年の世界の子供兵の分布図によるとロシア・トルコ・アフガニスタン・インド・ミャンマー・メキシコ・アルジェリア・エチオピア・ルワンダ・パキスタンといった紛争地域で、武器を持って戦っている子供兵の数が30万人以上と推定されているそうだ。
子供兵(15~18歳)の中には、ウガンダでの5歳の子供兵も確認されている。
私は戦後生まれて平和な日本という国で生きてきたけれど、この本を読むまでは子供兵の存在や大人の代わりに敵の弾よけにされている子供がいるなんて知らなかった。
紛争地域では自国民の中で資源の奪いあいや、少ない利権を争って多くの血が流れている。本当は武器を輸出している国の一部の人間だけが大きな利益を得ていて、他国に操られて多くの犠牲を強いられ発展を阻害されていることに、どうして気がつかないのだろう。