その日、なぜ早起きしたのか、理由は覚えていません。目を覚ますと家の中は静まり返っていましたが、勝手口の方からガチャガチャと音が聞こえてきました。恐るおそる覗いてみるとそこには母親がいました。
母親が運んでいる黄色いプラスチックの箱の中には牛乳瓶がキレイに並べられていたことを覚えています。
その日から僕の牛乳配達の日々が始まりました。6歳のときのことです。幼い子どもが手伝う(邪魔する?)のですから、配る件数は最初のうちは3件くらいでした。それでも朝早く起きて、手伝うのが嬉しくて仕方なかったのです。
牛乳瓶を落として割ってしまったことも度々あるし、大きくなってからは寝坊して配るのが遅くなってしまったこともあります。それでも中学校を卒業するまでの10年間は続けることが出来ました。
雪が降った朝に新雪に足跡がついて喜んだり、朝吸った空気に懐かしさを含んだ香りを感じたり、まだ暗い朝の空に星が光って見えて嬉しくなったり、今思い出せば良かったことばかり浮かんできます。
僕にとっては貴重な経験です。そういう機会を作ってくれた母親に感謝します。