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その場考学研究所:ボーイング777のエンジンの国際開発のチーフエンジニアの眼をとおして技術のあり方の疑問を解きます

様々なメタ(85) 日本語の「メタ」は不確定

2022年11月05日 18時55分55秒 | 様々な「メタ」、メタとは何か(公開)
日本語の「メタ」は不確定

 広辞苑で初めて「メタ」(ギリシア語の間に、後に、超えるに由来する接頭語)が登場したのは第3版(1983)だった。私は、岩波書店から「アリストテレス全集」が発行されたのが、1968年-1973年なので、その影響と考えている。当時、この全集の発行は、世界的にも注目をされていたとの記録があった。

 一方で、英和辞典には初版本から多くのmeta-が存在する。そこでここでは、英和辞典での過去からの記述から、日本語の「メタ」とは、いったい何を示すのかを考えてみる。
 ちなみに中国語(英中辞典)ではmetaは「元」と明確に示されている。例えば、Meta-engineeringは「元工程」である。
 約150の英語のmeta-の日本語訳(ちなみに国語辞典では、すべて「メタ何々」とカタカナ表示になっており、僅かに形而上学(Metaphysics)などの例外があるだけである)がどのようになっているかを調べてみた。すると、次に示すように、その意味が一定していないことが明確になってくる。なお、ここではベンゼン核に由来する化学的な「メタ」については、全て除外した。
 後に示す英和辞典の日本語訳の文字から、敢えて「メタ」に関係する文字を選ぶと、以下のようになる。

・日本語訳に出てくるmetaに関係ありそうな漢字( )内はその回数。
「変」(15回)
「後」(14回)
「中」(7回)
「超」(6回)
「異」(6回)
「上」(4回)
「比」(3回)
「準」(3回)
「代」(2回)
「主」「同」「初」「原」「全」「真」「場」「多」(各1回)

となる。
中国語訳の「元」は一つもなかった。このことは、何を意味するのであろうか。どうも日本人の文化は「メタ」になじみが全くないように思われる。

新簡約英和辞典(研究社[1961])

meta- (第5版に記載)
metabolism(物質交代、物質代謝)
metacarpal(掌部、掌骨)
metacarpus(中手骨)
metacenter(傾心)
metagalaxy(認識しうる全宇宙)
metagenesis(真正世代交代)
metamer(異性体の一種)
metameric(異性の)
metamerism(体節性)
metamorphic(変化の、変態の)
metamorphism(岩石の変成作用)
metamorphosis(魔力や超自然力による変形、変態)
metaphor(隠喩)
metaphorical(比喩的な)
metaphrase(翻訳、言い換えをする)
metaphysical(難解な、超自然の、形而上学の)
metaphysician(形而上学的理論家)
metaphysicist(形而上学者)
metaphysicize(形而上学的に考える)
metaphysics(形而上学、思弁哲学)
metaplasm(語形変異)
metapolitics(理論的政治学)
metatasis(変形、変態)
metatarsus(中足)
metathesis(患部移動、音位変換)
metayage(分益小作制度)
matayer(分益農夫)
metazoan(後生動物、原生動物の上位にあるすべての動物)

新英和大辞典(研究社[1992])第5版で、初版は1980

meta- 『1.主に科学用語で次の意味を表す:
   a「・・の後;・・を超えた」:metanephros, metagalaxy, metaphysics. 
   b(位置・状態)の変化:metabolism, metamorphosis.
  c「二次的・・」:metalanguage.
2. 「・・より包括的な;超・・」の意で、既存の学問を批判的に扱う新しい関連学科名を表わす:metalinguistics, metamathematics, metapsychology.  
3,【化学】以下省略。』

以下は[1961]版から追加された項目のみを示す。
metabasis(病状変化、主題転移)
metabiosis(変態共生)
metabola(変態類)
metabolic(変態する、変形する)
metabolical(変態する、変形する)
metabolic water(同化作用によって生物体内に生じた水)
metabolite(代謝物質)
metabolous(動物の変態)
metaboly(変態)
metacentric(染色体の中央部にある動原体)
metacentric height(メタセンターの高さ)
metacentric stability(初期復元力)
metacercaria(吸虫類の幼虫の変形)
metacercarial(後生花被類)
metachlamydeae(後生花被類)
metachromasia(異染性)
metachromatism(細胞科学上の染色現象)
metachronal(多足類の歩脚で一定の位相差で運動する性質)
metanathous(二様式口器類の昆虫)
metahistory(対象を一時代に限定せず、多様な時代を比較しながら共通の歴史法則を追求しようとする歴史的認識の立場)
metahistorian(上記の立場の人)
metainfective(感染後におこる)
metakinesis(細胞分裂の中期)
metalanguage(メタ言語)
metalepsis(比喩的な言葉をさらに換喩する)
metalimnion(地質の変水層)
metalinguistic(メタ言語学の)
metalinguistics(メタ言語学)
metamathematical(超数学的な)
metamathematician(超数学者)
metamathematics(超数学)
metamaeral(動物の体節)
metamorphose(一変させる)
metamorphoses(変態の複数形)
metamorphous(変化の)
metanalysis(異分析)
metanauplius(ある種の幼虫)
metanephros(後腎)
metaphase(細胞分裂の中期)
metaphloem(植物の後生)
metaphoric(比喩的な)
metaphorically(比喩的に)
metaphrast(翻訳者)
metaphrastic(直訳的な)
metaphysic(学問・研究の原理体系)
metaplasia(病理の異形成)
metaplast(後形態)
metapleuron(昆虫の後側板)
metapneustic(昆虫の後気門の閉塞)
metapodium(動物の後ろ足)
metapolitician(政治哲学者)
metaphychic(心霊研究の)
metaphychics(心霊研究)
metapsychology(超心理学)
metastability(準安定状態)
metastable(準安定の)
metastable state(準安定状態)
metastasize(転移する)
metastrongylid(肺虫科の)
metatarsal(中足の)
metatheory(超理論、ある理論を一段と高い立場から解明するのに用いられる別の理論)
metatherian(後獣亜綱の)
metathesize(置換えが起こる)
metathetical(人工的患部移動の)
metathoph(複合有機栄養生物)
metatrophic(複合有機栄養形式をもつ)
metaxylem(後生木質部)
metazoa(後生動物門)
metazoan(後生動物門に属する)
metazoea(節足動物の幼生)

 なぜ、日本語に翻訳された「メタ」はこれほどに不確定なのだろうか、そのことの追求は、後刻。


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