メタエンジニアの眼シリーズ(193)
TITLE: 万能型ワクチン
書籍名;「万能型ワクチンの開発でコロナ完封を目指す」[2021]
著者;アダム・ビョーレ 発行所;Newsweek 発行日;2021.6.8
初回作成日;2021.11.8 最終改定日;
日本におけるCovit-19に対するワクチンの開発が、いかに諸外国に対して遅れているかの原因は、会社の規模、使用後に想定されるクレームや副反応に対する裁判等の事例におびえている、など様々な理由が云われている。しかし、Newsweekのある記事を読んで、これらはまったく見当違いの理由付けであることが分かった。それは、戦略の有無の違いであった。
その記事とは表記のもので、副題は「あらゆるコロナウイルスに有効なユニバーサルワクチンで次のパンデミックに備える」である。
記事は、次の文から始まっている、『バーニー・グレアムとジェイソン・マクレランが率いる研究チームは2020年1月、週末の休みを1回だけ返上して、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のワクチンを設計した。』(p.28)だ。勿論Cov-19ではないのだが、この文章が意味することは大きい。なにせ、「1回の週末で設計が完了する」のである。そして、それが可能な「常設の研究チーム」の存在もある、筆者は、これを基にファイザー他の各社で開発されたワクチンを「前代未聞のワープスピード」と評している。
昨年1月に中国から新型コロナウイルスのゲノム情報が発表されると、彼らは、それに対応するワクチンを設計し、モデルナ社に送った。つまり、米国内で患者が発生する前に、ワクチンの製造が始まっていた。
何故、そのようなことが起こったのか。それはSARS(重症急性呼吸器症候群)に遡る。
国立感染症研究所のHPには、次の記載がある.
『中国南部の広東省を起源とした重症な非定型性肺炎の世界的規模の集団発生が、2003年に重症急性呼吸器症候群(SARS: severe acute respiratory syndrome)の呼称で報告され、これが新型のコロナウイルスが原因であることが突き止められた。わが国においては、同年4月に新感染症に、ウイルス が特定された6月に指定感染症に指定され、2003年11月5日より感染症法の改正に伴い、第一類感染症としての報告が義務づけられるようになった。前回の集団発生は2002年11月16日の中国の症例に始まり、台湾の症例を最後に、2003年7月5日にWHOによって終息宣言が出されたが、32の地域と 国にわたり8,000人を超える症例が報告された。』
続いて、MERSが発生した。『中東呼吸器症候群(MERS)は、平成24年9月以降、サウジアラビアやアラブ首長国連邦など中東地域で広く発生している重症呼吸器感染症です。また、その地域を旅行などで訪問した人が、帰国してから発症するケースも多数報告されています。元々基礎疾患のある人や高齢者で重症化しやすい傾向があります。』(厚生省のHPより)
この二人は、この時にワクチンの設計を終えて臨床試験に臨んだが、その間にMERSは終息してしまった。つまり、このシステムではパンデミックには間に合わないことを知った。これらは全てコロナウイルスの仕業であり、今回は3度目になっている。
『ヒトに感染することが分かっている病原性のウイルスは分類学上の「科」のレベルで26を数え、コロナウイルス科はその一つにすぎない。』(p.29)とある。これを霊長類の「ヒト科」と比べると、ヒト科の筆頭はオランウータンで、ホモサピエンスなどの所謂ヒトは、その下の分類の「ヒト属」になる。つまり、様々なコロナウイルスは、何々サピエンスと同等の生物の種類になる。これらに共通する薬は想像に難くない。
そこで彼らは、「新たに出現したコロナウイルスにも使える万能ワクチン」を目指して研究を始めた。
しかし、その開発は容易ではない。そこで取り掛かった具体策は『病原性のウイルスを26の科からそれぞれ代表的なものを少なくとも1つ選び、ワクチンのプロトタイプ(原型)を作っておくとともに、ワクチン製造に必要な原料を備蓄する』(p.30)ことだった。
このような具体策と並行して、この月刊誌が出た時点で、米国立衛生研究所はユニバーサルワクチンの研究を重点研究として、10億ドルの資金を用意して、さらに民間の財団も支援に乗り出したとある。
果たして、日本の政府と感染症学会は、このような過去の動きを、どのよう人捉えているのであろうか。
日本人は、一般的に戦術には長けているが、戦略にはめっぽう弱い。その代表事例ではないだろうか。
TITLE: 万能型ワクチン
書籍名;「万能型ワクチンの開発でコロナ完封を目指す」[2021]
著者;アダム・ビョーレ 発行所;Newsweek 発行日;2021.6.8
初回作成日;2021.11.8 最終改定日;
日本におけるCovit-19に対するワクチンの開発が、いかに諸外国に対して遅れているかの原因は、会社の規模、使用後に想定されるクレームや副反応に対する裁判等の事例におびえている、など様々な理由が云われている。しかし、Newsweekのある記事を読んで、これらはまったく見当違いの理由付けであることが分かった。それは、戦略の有無の違いであった。
その記事とは表記のもので、副題は「あらゆるコロナウイルスに有効なユニバーサルワクチンで次のパンデミックに備える」である。
記事は、次の文から始まっている、『バーニー・グレアムとジェイソン・マクレランが率いる研究チームは2020年1月、週末の休みを1回だけ返上して、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のワクチンを設計した。』(p.28)だ。勿論Cov-19ではないのだが、この文章が意味することは大きい。なにせ、「1回の週末で設計が完了する」のである。そして、それが可能な「常設の研究チーム」の存在もある、筆者は、これを基にファイザー他の各社で開発されたワクチンを「前代未聞のワープスピード」と評している。
昨年1月に中国から新型コロナウイルスのゲノム情報が発表されると、彼らは、それに対応するワクチンを設計し、モデルナ社に送った。つまり、米国内で患者が発生する前に、ワクチンの製造が始まっていた。
何故、そのようなことが起こったのか。それはSARS(重症急性呼吸器症候群)に遡る。
国立感染症研究所のHPには、次の記載がある.
『中国南部の広東省を起源とした重症な非定型性肺炎の世界的規模の集団発生が、2003年に重症急性呼吸器症候群(SARS: severe acute respiratory syndrome)の呼称で報告され、これが新型のコロナウイルスが原因であることが突き止められた。わが国においては、同年4月に新感染症に、ウイルス が特定された6月に指定感染症に指定され、2003年11月5日より感染症法の改正に伴い、第一類感染症としての報告が義務づけられるようになった。前回の集団発生は2002年11月16日の中国の症例に始まり、台湾の症例を最後に、2003年7月5日にWHOによって終息宣言が出されたが、32の地域と 国にわたり8,000人を超える症例が報告された。』
続いて、MERSが発生した。『中東呼吸器症候群(MERS)は、平成24年9月以降、サウジアラビアやアラブ首長国連邦など中東地域で広く発生している重症呼吸器感染症です。また、その地域を旅行などで訪問した人が、帰国してから発症するケースも多数報告されています。元々基礎疾患のある人や高齢者で重症化しやすい傾向があります。』(厚生省のHPより)
この二人は、この時にワクチンの設計を終えて臨床試験に臨んだが、その間にMERSは終息してしまった。つまり、このシステムではパンデミックには間に合わないことを知った。これらは全てコロナウイルスの仕業であり、今回は3度目になっている。
『ヒトに感染することが分かっている病原性のウイルスは分類学上の「科」のレベルで26を数え、コロナウイルス科はその一つにすぎない。』(p.29)とある。これを霊長類の「ヒト科」と比べると、ヒト科の筆頭はオランウータンで、ホモサピエンスなどの所謂ヒトは、その下の分類の「ヒト属」になる。つまり、様々なコロナウイルスは、何々サピエンスと同等の生物の種類になる。これらに共通する薬は想像に難くない。
そこで彼らは、「新たに出現したコロナウイルスにも使える万能ワクチン」を目指して研究を始めた。
しかし、その開発は容易ではない。そこで取り掛かった具体策は『病原性のウイルスを26の科からそれぞれ代表的なものを少なくとも1つ選び、ワクチンのプロトタイプ(原型)を作っておくとともに、ワクチン製造に必要な原料を備蓄する』(p.30)ことだった。
このような具体策と並行して、この月刊誌が出た時点で、米国立衛生研究所はユニバーサルワクチンの研究を重点研究として、10億ドルの資金を用意して、さらに民間の財団も支援に乗り出したとある。
果たして、日本の政府と感染症学会は、このような過去の動きを、どのよう人捉えているのであろうか。
日本人は、一般的に戦術には長けているが、戦略にはめっぽう弱い。その代表事例ではないだろうか。
2003年のSAAS,2012年のMERSからコロナの系譜があったのですね。
MERSは、早く終息したので役にたたなかったが、19年の研究成果が活かされたというのは、不思議では無い。
WHOは、一連の関係を明確化すべきであるのと、日本国の医療機関は世界の状況をWATCHし、対策を備えるべきと考える。政府は、諸外国の動きを調査して欲しい。