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その場考学研究所:ボーイング777のエンジンの国際開発のチーフエンジニアの眼をとおして技術のあり方の疑問を解きます

メタエンジニアの眼シリーズ(48)「螺旋の神秘」

2017年10月04日 07時36分09秒 | メタエンジニアの眼
その場考学研究所 メタエンジニアの眼シリーズ(48)  「螺旋の神秘」 KMB3378

このシリーズはメタエンジニアリングで「文化の文明化」を考える際に参考にした著作の紹介です。『 』内は引用部分です。
       
書籍名;「螺旋の神秘」[1978] 
著者;ジル・パース 発行所;平凡社   
発行日;1978.3.10
初回作成年月日;H29.8.31 最終改定日;H29.9.20 
引用先;文化の文明化のプロセス  



 当時 (1980年前後) 流行していた全集物の一つとして、平凡社から「イメージの博物館」シリーズ(全16巻)が発行された。本書はその第7巻で、副題は「人類の夢と怖れ」となっている。
 著者は、1947年イギリス生まれ、画家、美術史学者、自然科学、宗教、美術を専門。
古代日本の縄文は、螺旋を幾何学的に解釈したとの説を、根本的により深く理解するために本書を参照した。

表紙には、次の説明文がある。
 『螺旋は無限の象徴である。螺旋状の一回転は一つの完結であり、同時にまた新しい局面への出発点である。一つの死であるとともにまた再生でもある。人はこの永遠の中で、何度生き、何度死ぬのだろうか。あらゆる宗教、神話、伝説が螺旋を物語る。この螺旋の旅の途上にあるわれわれは、常に螺旋と目標という両極の間に位置し、そして常にこの両方向に引かれている。なぜなら、心理学者が述べているように、子宮回帰の願望は、「神との合一」への願望と双子の兄弟だからである。』(表表紙)
 
 本文は図版も多いのだが、まるごと一冊螺旋の説明なので、その専門分野の広さも加えてかなり難解(云いかえれば、かなり無理な論理)になっている。そこで、縄文と関係がありそうなところだけを拾うことにする。

・霊魂の旅
・流転、その形式と象徴

 『一般にマクロコスモスとミクロコスモス、大自然と人間意識とは、一方では無限の持続を、他方では力動的統一性をその本質としている。もしわれわれが螺旋の発端と末端とを、球体またはドーナツ型の環となるように結びつけるなら、むしろ統一を保った渦巻のこの運動は、自分の中心をめぐって、拡張と収縮を続けながら、発端も終末もなしに永久に前進し続ける姿を通して、この本質をもっと的確に表現しているといえるであろう。』(pp.4)

『渦輪は「宇宙的持続の統一性」を表現する原形態であるともいえる。それは個々の生命現象にも、例えば茸(きのこ)や胎児や脳の成長過程にも現れている。いずれの場合にも、渦輪の形成は、前進衝動と自己回帰との統一を正確に現わしていると云える。』(pp.5)
 まさに、著者が専門とする「自然科学、宗教、美術」をミックスした表現となっている。
また、螺旋は「その場考学」が主張するサイクル論とも基本的な考え方が一致している。

・進化する螺旋
『認識には三つの段階がある。個々の人間のみならず、宇宙そのものも、われわれがこの段階の螺旋的経過を辿って進めば進むほど、より一層理解されるようになる。したがってこの認識の螺旋は意識の進化の過程であるともいえる。人類太古の時代にも、個人の幼児期にも、人間を外界から隔てる境界は存在しなかった。』(pp.6)

この考え方は、「メタエンジニアリング」の「MECIメソッド」のプロセスに一致する。

これに続けて、「自己意識」、「個的自我」、「集合的自我」、「世界を認識の対象」、「意識の分化」、「存在のヒエラルキー」などの段階を経て、『けれども認識が直観と悟りの段階である第3段階に達すると、主観と客観はふたたびひとつになる。分化から再統合へのこの回帰は、物理の世界にも現れる。限りなく多様化された「量的」分析の対象が、新たな言語(方程式)によって、新たな単純化を蒙る。全宇宙にわたるこの単純化への回帰は長くてゆっくりした過程を辿るが、この集合的な「悟り」が収縮する渦の中で、真の統合を達成した場合、われわれひとりひとりが、宇宙そのものになる。』(pp.6)

 言語を方程式としているところがメタエンジニアリング的な発想になっている。「言語は記号」の考えからも、一歩進んでいると思う。まさにメタエンジニアリングの世界を彷彿させる記述なのだが、最終的には「悟り」まで必要ということなのだろう。

・生命の螺旋
『全体性への願望と全体性への進化がわれわれ自身の内なる螺旋傾向を決定づけている。全体は常に円的であり、発端と中間と末端から成っている。それは一点から発して、拡張し、分化し、収縮し、そしてもう一度点となって消滅する。われわれの人生はこのようなパターンをもっている。宇宙のパターンも同様であろう。異なるのは時間の尺度だけである。』(pp.9)
 
 ミクロ生物から、人間、地球、宇宙と確かに「異なるのは時間の尺度だけ」となる。

・体内螺旋の拡張と収縮
 『ヒンドウー教の天地創造の神話では、超越神シヴァは継起する宇宙的振動の中を存在の層を下降しつつ、女性神シャクティの螺旋となって、外界の中に自己を流出させる。一方ヨガ行者はこの過程を逆にして、上昇する螺旋の上でより高次の意識を獲得してゆく。彼はその過程で自己の内部に現れるすべての層、要素、ひびきを意識化しつつ、地上に顕現する天を理解し、天への回帰を完成しようとする。』
『創造的な螺旋運動を完了した女性神シャクティは、物質化の果てに、下降する渦巻きの先端に集中することをもって、各人の体内に姿をひそめる。この「体内のシャクティ」は口で尾をくわえ、頭で中心経路への入り口をふさぐ蛇によって象徴される。』(pp.53)

 やはり、ストーリーの起源は古代インドに求めるのが良いようだ。

 『医療のシンボルである「カドウケルス」は、メルクリウス(または医師アスクレビウス)が手に持つ杖であるが、左右に向かい合う二匹の蛇を、積極的ならびに消極的なエネルギーの流れとして持っている。(中略)
 二匹の蛇は、日と月の対立する力を表している。同時にそれらは繰り返される拡張と収縮のエネルギーであり、陰陽二つの巴の両半分であり、宇宙の卵の連続渦巻きであり、そして宇宙の星間渦巻きでもある。まさにそれらは脳の両半分、すなわちその右側の遠心的・意識的な活動と左側の求心的・無意識的な生命力でもある。そしてこの両者の結合だけが高次の意識の光を生み出すことができる。』(pp.54)

 絵図を示さないと分かりづらい記述が多い。しかも、かなり独断的な表現が多いのだが、螺旋と永遠、螺旋と生命の誕生と死などの関係は、明瞭に語られていると思う。





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