ささやかな幸せ

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『化け物心中』

2022-02-07 16:53:08 | 
『化け物心中』 蟬谷めぐ実 角川書店
 江戸は文政年間。座元と狂言作者、6人の役者が芝居の前読みに集まる。そのさなか、生首が転がり出る。あっと思ったときに蝋燭が消え。灯りをつけると生首はなく、血だまりがあった。誰かが鬼に食べられたのだ。しかし、全員頭はついており、どうやら鬼は、食べた人に成りすましたらしい。鬼の正体暴きを頼まれたのは、足を失い絶望の底にありながらも毒舌を吐く元役者・魚之助と、彼の足がわりとなる心優しき鳥屋・藤九郎。さて、鬼は見つかるのか?
 作者は、92年生まれだと。すごい才能だ。この若さで人の心に巣くう鬼の一面を描き出すとは。江戸と上方の言葉が、飛び交い、目の前に場面が浮かんだ。
 魚之助と藤九郎は、いいコンビだ。魚之助の食えない感じが陰影を出していい。藤九郎の普通の感覚や優しさも味が出ていい。
 物語が進むにつれ、役者たちの抱える悩みや葛藤が暴かれていく。それとともに、魚之助が足を失った理由も描かれる。魚之助が手入れのしていない足を見せ、罵倒される場面は胸にせまった。最後、自分は男なのか女なのか、町人なのか役者なのか、鬼なのか人なのかと問う魚之助に対する藤九郎の答えが胸に響いた。
 私は、役者の名前が覚えられず、役者の名前がこんがらがった。しかし、それを差し引いても、よかった。
コメント
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