『某』『ザ・クイーン』

『某』　川上弘美　幻冬舎
　「あたしは、突然この世にあらわれた。そこは病院だった」。限りなく人間に近いが、性的に未分化で染色体が不安定な某。名前も記憶もお金もないため、医師の協力のもと、絵に親しむ女子高生、性欲旺盛な男子高生、生真面目な教職員と変化し、演じ分けていく。自信を得た某は病院を脱走、そして仲間に出会う――
　何ものでもなく、いろいろなものに転生していく、不思議な存在の話。狐につままれたような感じ。
　ラストで『100万回生きたねこ』を思い出した。

『ザ・クイーン　エリザベス女王とイギリスが歩んだ100年』　マシュー・デニソン　実川元子訳　カンゼン
　チャーチルからジョンソンまで報告を受けた首相は14人。女王在位70周年(プラチナ・ジュビリー)を迎えた英国史上最高齢、最長在位の君主の伝記。
　本のボリュームにたじろぐ。なんとか読んだが、カタカナの名前に苦戦した。
　写真もある。戴冠式の美しい女王。初恋相手と結婚して輝くばかりの女王。年をとっても凛とした女王。きれいである。
　女王という仕事に人生を捧げたエリザベス女王。家庭も犠牲にしなければならなかっただろうし、いろいろ気苦労があったと思う。
　個人的にチャールズ国王が学校でいじめにあい、転校したかったがかなわなかったのが、後の人生に関係があったのではないかと思った。