ささやかな幸せ

SUPER EIGHT、本、美術鑑賞、俳句、お茶が好き!
毎日小さな幸せを見つけて暮らしたい。

『帰還』『家の歴史を書く』

2019-06-30 20:58:42 | 
『帰還 父と子を分かつ国』 ヒシャーム・マタール作 金原瑞人・野沢佳織訳 人文書院
 1979年、リビア。反体制運動のリーダーだった父がエジプトに亡命。だが11年後に拉致され、消息を絶った。2011年、カダフィ政権が崩壊。息子のヒシャームは、ついに故郷の地に降り立つ―。
 家族の消息がわからないというのは、納得できないというか、いつまでも引きずってしまう。もしかして、もしかしてと期待して。そして、のらりくらりとはぐらかされて。北朝鮮の拉致被害者の家族も同じ思いをしているのだろうと思った。しかし、21世紀の時代に20年近くも牢獄に入ってた人がいるなんて。信じられない。

『家の歴史を書く』 朴沙羅 筑摩書房 
 「私の家族は、いつどうやって、なぜ日本に来たのだろう」「個人の人生を、どうしたら歴史として残せるのだろう」家族への親愛と歴史への洞察に満ちた、ある家の記録。
 パワフルで面白い家族の人々。しかし、語りの中から作者はさまざまなことを掬い取っていく。そこが、すごいところ。例えば・・・
 密航者として収容された収容所。収容者の待遇改善を求めてストライキが行われた収容所をおばさんは「めっちゃええ」と言う。それは、理由もなく殺されるかもしれない故郷と比較して、何をしなくても食事が出てきて、部屋でおしゃべりができるからいいのだ。
 「差別は『差別』として感じられる以前に、生活するうえで前提となっていた」の一文。こうなるのはしょうがないと思うのではなく、違和感を感じて差別だと思うことは大切なのだと思った。
 悲惨な済州四・三事件を語らなかったからと言って、見なかったとは一概に言えないという文。経験しても語りなく場合もあるだろうし、それよりも身近な家族のDVの方が怖かった場合もある。
 おばさんが、字がわからない辛さを述べ、字がわかるようになった喜びを述べる場面。また、語りが理路整然としておらず、行ったり来たりしているのは、筋の通った話を知らないからだという。筋の通った話を知らなければ、筋の通った話をしたり書いたりできないからだと学校教育の効果をうたう作者。当たり前と思っている教育の大切さを感じた。
 知ることで世界が広がっていくのだ。
 
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« クロアチア・スロベニアのお... | トップ | これで夏を乗り切るぞ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

」カテゴリの最新記事