ささやかな幸せ

SUPER EIGHT、本、美術鑑賞、俳句、お茶が好き!
毎日小さな幸せを見つけて暮らしたい。

『陸王』『砂の王国』

2016-08-16 13:40:18 | 
『陸王』 池井戸潤 集英社
 埼玉県行田市にある「こはぜ屋」は、百年の歴史を有する老舗足袋業者。といっても、その実態は従業員二十名の零細企業で、業績はジリ貧。社長の宮沢は、銀行から融資を引き出すのにも苦労する日々を送っていた。そんなある日、宮沢はふとしたことから、長年培ってきた足袋業者のノウハウを生かしてランニングシューズを作ることを思いつく。社内にプロジェクトチームを立ち上げ、開発に着手する宮沢。しかし、その前には様々な障壁が立ちはだかる。資金難、素材探し、困難を極めるソール(靴底)開発、大手シューズメーカーの妨害。こはぜ屋は、チームワーク、ものづくりへの情熱、そして仲間との熱い結びつきで難局に立ち向かっていく。
 時代劇ですな。悪はわかりやすく、どこまでも悪。人情話をからめつつ、さまざまな困難に立ち向かう。そして、最後は、零細企業が大手に勝って、スカッと溜飲が下がる。真面目にコツコツとやっている人が報われることが、現実には少ないだけに、希望が持てていい。人とのつながりや情熱、不退転の決意が、胸を熱くする。日本人の好きな要素がてんこ盛り。
 先が気になって、一気読み。おかげで寝不足だが、気分は爽快。おもしろかった。

『砂の王国』 荻原浩 講談社
 全財産は、3円。私はささいなきっかけで大手証券会社勤務からホームレスに転落した。寒さと飢えと人々からの侮蔑。段ボールハウスの設置場所を求め、辿りついた公園で出会った占い師と美形のホームレスが、私に「新興宗教創設計画」を閃かせた。三人で立ち上げた新興宗教団体「大地の会」は私が描いた設計図どおりに発展。それどころか会員たちの熱狂は、思惑を超えて見る見る膨れ上がっていく。やがて、巨大化した組織から私は、裏切り者として追われることになる。
 なるほど、こうやって宗教ビジネスは成り立つのかとおもしろく読んだ。教祖となった仲村の「(自分がいつも何かに追い立てられている。それは、)自分自身に追い立てられていたのです。こうあるべき自分に。こうなりたい自分に」という言葉にドキリとした。最後は、疾走感のある展開。主人公は、再びホームレスになるが、それはそれでよかったのではと思ってしまう。
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