ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『海辺の映画館/キネマの玉手箱』

2021-05-24 16:55:11 | 日本映画









 
2020年7月のコロナ禍に公開された、大林宣彦監督のオリジナル企画による遺作です。亡くなられたのは同年4月なので没後の公開となりました。

大林監督は前作『花筐/HANAGATAMI』('17) のクランクイン直前に肺ガンで「余命3ヶ月」の宣告を受けており、そこから3時間に及ぶ大作を2本(!)完成させられたという、その事実だけで涙なくしては語れません。

そして2本とも明確にして切実な反戦映画であり、この遺作は前作に比べると難解さが緩和され、よりストレートな大林さんのメッセージ、というか「願い」がダイレクトに伝わって来ます。

だから、これは是非とも皆さんにも観て頂きたいです。「映画で歴史は変えられないけど、未来は変えられるかも知れない」っていう大林さんの想いを、1人でも多くの方に受け止めて頂きたいです。

大林さんが脚本に着手された'17年の時点ですでに、世の中はかなりヤバい方向に向かっており、コロナ禍になってより一層、私ら人間はヤバい本性をむき出しにしちゃってます。このまま行けば本当に大戦争になりかねない……っていうか、多分なるでしょう。

そうなる前に今一度、これまで私らが犯して来たことのムゴさと愚かさを振り返ってみようじゃないかと、そういうコンセプトで創られた作品なのは間違いないと思います。

ながら見のテレビやインターネットだと「他人事」で済まされかねないけど、暗闇で集中しながら観る映画、皆がより感情移入しやすい映画ならば、若い世代にも願いが届くかも知れない。そういう事だろうと思います。

私は受け止めました。もう若くはないけど戦争は知らず、どこか対岸の火事みたいに思ってたけど、天災や疫病と同じように戦争も今そこにある危機と恐怖と理不尽であり、人間というモンスターがこの世に存在する限り、いつ我が身に降りかかってもおかしくないことを痛感しました。

もちろん、そこは大林さんですから重くならず、作品は遊び心満載のエンターテイメント大作に仕上がってます。だからこそ伝わるんですよね!

私のフェイバリット日本映画は大林さんの『さびしんぼう』('85) だけど、生前の黒澤明監督も同作を大変気に入られ、若い世代へのバトン役を大林さんに直接託されたんだとか。大林さんはそれをずっと意識されてたそうで、この映画には黒澤監督の想いも込められてるワケです。

敬愛申し上げる大林監督が文字通り命懸けで、最期の力を振り絞って撮られた渾身の大作を、劇場で観られなかったことが残念でなりません。この状況はほんと戦時下に近いのかも知れません。



さっき大林監督が最期の力を振り絞って……なんて書きましたけど、実際は構想しておられた更なる「次回作」への繋ぎとして、久々(本格的にロケするのは20年ぶり)に故郷の尾道で「気軽に楽しめるエンターテイメント」でも撮ってみるかって、そんなノリだったんだそうです。ホントにまったく、なんて人だ!w

今夜限りで閉館する、尾道で唯一残る映画館「瀬戸内キネマ」を訪れた青年3人(厚木拓郎、細山田隆人、細田善彦)が「日本の戦争映画大特集」の最終オールナイト上映で映画の世界にタイムスリップするという、確かにパッと見はありがちな娯楽ファンタジー。

だけど実際は、若者3人が戊辰戦争、日中戦争、太平洋戦争下の沖縄などを巡り、そこで出逢って恋に落ちた女性たちを救おうとするんだけど、結局1人も救えないまま広島であの夏の日を迎えてしまうという、悲惨と言えばあまりに悲惨なストーリー。当たり前です、それが戦争なんです。

そこで描かれるのは敵国との戦いよりも、むしろ「お国のため」という大義名分の下、日本人が日本人に対して現実に犯して来た残虐非道な行いの数々。状況によって人間が如何に冷酷になれるか、そして如何に同じ過ちを何度も繰り返して来たか、それが全て「映画」であるからこそ痛烈に思い知らされます。

ヒロインたちを新人の吉田玲、成海璃子、山崎紘菜、そして常盤貴子が演じ、歴史上の人物たちを高橋幸宏、小林稔侍、白石加代子、入江若葉、尾美としのり、蛭子能収、片岡鶴太郎、南原清隆、武田鉄矢、村田雄浩、稲垣吾郎、柄本時生、浅野忠信、渡辺裕之、笹野高史、川上麻衣子、伊藤歩、根岸季衣、渡辺えり、窪塚俊介、満島真之介、長塚圭史、寺島咲、有坂来瞳、中江有里etc…と、大林映画の常連やゆかりの俳優さんたちが演じておられます。隅から隅まで凄い顔ぶれで、まさに最終作に相応しい豪華キャスト!

ちなみにヒロインたちの役名が、成海さん=斉藤一美、山崎さん=芳山和子、常磐さん=橘百合子。私と同じく'80年代に青春を過ごされた映画ファンなら、それらの名前を聞いただけでキュンと来てジンと泣けるのでは?

そう、我らが金字塔=尾道三部作『転校生』『時をかける少女』『さびしんぼう』のヒロインたちと同じ名前です。これは脚本執筆に参加された内藤忠司さんの提案だったそうだけど、やっぱり大林映画の集大成、有終の美を意識せずにいられません。



もちろん、大林監督と言えば映像の魔術師であると同時に、脱がせの魔術師。今回も山崎紘菜さんと成海璃子さんが当たり前のように脱ぎ、それぞれ濡れ場も演じておられます。特に成海さんは私のストライクど真ん中な女性なもんで、相手役の細田善彦くんがチョー羨ましいです。

とはいえ、前作『花筐』もそうだったけど、オールヌードでありながら乳首やアンダーヘアはCGで見えないよう加工されており、さながら昔のアニメみたいになってますw

観客をストーリーに集中させる為の配慮なのか、あるいは今時そうでもしないとタレント事務所の許可が下りないのか?

映画の中じゃ意味のあるヌードでも、そこだけ切り取られてネットに上げられたら単なるエロ画像になっちゃう。それをブログに載せて何度も公開停止処分を食らってるバカも巷にいますからねw(私のことです、念のため)

そんな風に映画を取り巻く環境も時代と共に変わって来たけど、CGよりも手作り特撮に凝りまくる我らが大林映画の温かみは、最後の最後まで健在すぎるほど健在で、今回もやっぱり面白かった! いやホント、3時間の長尺がちっとも苦になりません。ほんとにオススメです!

私は正直なところ、数ある大林映画の半分も実は観てないんだけど、観た作品はどれも例外なく、いろんな意味で楽しませて頂きました。クリエイターの端くれとして少なからず影響も受けて来ました。間違いなくマイ・フェイバリット映画監督です。

さようなら、そして本当にありがとう! 大林宣彦監督!

 

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『花筐/HANAGATAMI』

2021-05-17 20:00:09 | 日本映画






 
2017年に公開された大林宣彦監督による日本映画です。原作は檀一雄さんの純文学『花筐』。

この次に大林さんが撮られる遺作『海辺の映画館/キネマの玉手箱』('20) とセットで予約したレンタルDVDが届いてから、1ヶ月近く経ってようやく観るに至りました。

自分が体調を崩してしまったこと、それをキッカケに部屋を大整理したこと、レビューしたい作品が他にあったこと等、鑑賞が遅くなっちゃった理由は色々あるんだけど、かねてから敬愛申し上げて来た大林宣彦さん最期の2作品(しかも両方3時間近い長尺!)とあって、じっくり腰を据えて見る覚悟が必要だった、っていうのが何より大きいです。

なにせ、この『花筐』は大林さんが「余命3ヶ月」の宣告を受けてから撮られた作品。不謹慎ながら、私は完成にこぎ着けることすら危ういと思ってたのに、こんなにパワフルな大作に仕上がったばかりか、更にもう1本撮られることになろうとは!

だから、これまで以上に魂のこもった2作品なのは間違いなく、そりゃ相当な覚悟を決めなきゃ向き合えません。

……いや、それは綺麗事かな? もっと自分の本音を探っていけば、詰まるところ「小難しそうだから」っていう理由が一番かも? 反戦映画であることは知ってたし、そもそも大林監督の作品は面白いけど難解なんですw

案の定、この『花筐』もよく解らんまま観終えちゃいました。やっぱり凄い! 面白い! けど、解らない!w けど、だからこそ凄くて面白い!っていうのが私にとっての大林映画です。



舞台は1941年、太平洋戦争勃発前夜の佐賀県唐津市で、これから徴兵されるであろう若者たち(窪塚俊介、満島真之介、長塚圭史、柄本時生)と、彼らと深く関わる女の子たち(矢作穂香、山崎紘菜、門脇麦)の儚い青春と、それを見守る女性(常盤貴子)の哀しみが描かれてます。……っていう要約すら正確なのかどうか分かりませんw

なにしろ「今回、大林さんは誰を脱がせたんだろう?」っていうのが一番の興味で観てるような私ですw

案の定、矢作穂香(旧芸名=未来穂香)さんと常盤貴子さんが当たり前のように脱いでくれました。いや、それ以上に満島真之介くんが脱ぎまくってますw 満島くんと窪塚俊介くんが全裸で馬を二人乗りし、激走するシーンは色んな意味でクラクラしましたw(キンタマ痛い! ぜったい痛い!)

だけどそのシーンも含め、当たり前ながら全てのシーンにちゃんと意味があるんですよね。私が解らないって書いてるのはストーリーの事じゃなくて、その1つ1つの意味です。

満島くんと窪塚くんだけじゃなく、窪塚くんと長塚くん、矢作さんと常盤さん、山崎さんと門脇さん等、同性愛の匂いもプンプンしてて実に楽しいんだけど、なぜそれを匂わせるのかっていう意味が解らないw



だから鑑賞するには覚悟が必要なワケです。私が昭和の刑事ドラマやハリウッドのアクション映画を好んで観るのは、創り手の意図がある程度まで読めるから、っていうのも大きい。元から好きで、そういうのばっか観て来たから読めるんだろうけど。

かつて自分で映画を創ってた頃は、難解だったり苦手なジャンルだったりする作品もいっぱい観なければ!っていう使命感で色々観たし、確かにそれで視野は広がったと思うけど、正直しんどかった。そのままムリして観続けてたら映画が嫌いになっちゃったかも知れません。

同じ「解らない」でも、作者が最初から説明を放棄してるとか、実は大した意味も無いのにわざと難解にしてるとか、そういうのはやっぱつまんない。

大林さんの場合は全ての描写にちゃんと意味があるし、むしろそれを観客に伝える為に色々やり過ぎるからかえって難解になってるw、ような気がします。

とにかく情報量がハンパなく多い! 映像のあちこちにヒントが隠されてるし、セリフ量も多くて登場人物は『シン・ゴジラ』並みにずっと喋ってるし、BGMも鳴りっぱなし。だからいつも圧倒されちゃう。で、解らないw

けど、決して我々観客が「置いてけぼり」にされるような難解さじゃないんですよね。凄い熱量でずっと語りかけてくれるから、1つ1つの意味は解らなくても言いたいことは何となく伝わってくる。

今回の『花筐』では、学校の授業をサボりがちだった満島くんと長塚くんが、徴兵を前に自ら命を絶っちゃいます。大きな権力と、その理不尽に対する怒りが込められてるんだと思います。解んないけどw

よく解らなくても、一方通行だったりマスターベーションだったりする映画とは全然違う。だから面白いって事なんだけど、この文章もよく解んないものになって来ましたw

とにかく凄い情報量だけど、何でもかんでも台詞やナレーションで説明し、我々から読解力や感性を奪っちゃう昨今のテレビドラマともまた全然違う。大林監督が提示されてるのは全てヒントであって解答じゃないんです。だからこそ面白い。

すでにオッサンの窪塚くんや長塚さんが10代の若者を演じる違和感にすら、ちゃんと意味があるんですよね。監督のインタビュー記事によると、戦争を知らない世代が戦中を生きる人物を演じるぎこちなさを、あえて強調するためのキャスティングなんだそうです。なんでそうしたいのかはやっぱ解んないけどw

背景が合成丸出しなのも勿論わざとだし、唐突に画面が反転したりするのも全て計算ずく。だけどあざとく感じない。それが大林さんなんだってことを我々はよく知ってるから。

意味があるからこそ、今まで脱がなかった女優さんも潔く脱げちゃう。意味が解らなくても、ちゃんと意味がある事だけは判るから。

だから、理屈で理解できないものに抵抗がある役者は、たぶん大林映画には出たがらない。大林組と呼ばれる常連の役者さんは、きっと感性の人たちなんだと思います。



とにかく、ほかの誰にも真似できない、唯一無二の世界観。そんな映画を創れる、創らせてもらえる監督がこの世知辛い国に存在した奇跡。大林映画の魅力はそこに尽きると私は思います。

しかし、それにしてもまったく、なんというパワフルな映画! 当時80歳のご老人、それも余命3ヶ月を宣告されたお人が創った作品とは、とても信じられない! 凡庸な感想しか書けなくてすみませんm(__)m

セクシーショットは矢作穂香さんと山崎紘菜さんです。


 

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『ちょっとかわいいアイアンメイデン』

2021-04-27 08:30:15 | 日本映画






 
吉田浩太 監督・脚本による2014年公開の日本映画。アイアンメイデンとは中世の拷問具「鉄の処女」のことです。

カトリック系(?)の厳格な女子校を舞台に、学校公認で拷問を研究&実践する「拷問部」の活動、そして恋愛が描かれてます。

恋愛と言っても女子校ですから、女の子どうし。つまり「百合」の世界で、私はそこに惹かれて観る気になりましたw

もちろん「拷問部」というぶっ飛んだ設定にも興味を引かれたけど、痛いのは苦手なもんでSM的な趣味は無く、あのボンテージルックってヤツにも私は萌えません。全裸が一番ですw

主演はグラビアアイドルの木嶋のりこさんで、オールヌードの初披露に加えて拷問シーン、レズシーン、オナニーシーン等を全身全霊で熱演してくれてます。

このテの映画はそこんとこが肝心で、何だかんだ言ってもそれが観たくて観客は映画館に行ったり、DVDを買ったり借りたりするんだと私は思います。

そういう観点で評価すれば、この作品はほとんどパーフェクトじゃないでしょうか? 木嶋のりこさんの本作に賭ける意気込みと覚悟が十二分に伝わって来て、私は感動しちゃいました。素晴らしい!

ただ1つ残念だったのが、相手役の吉住はるなさんが「そ、そこまでして……」って言いたくなるくらい、頑なに乳首を隠してた事です。それ以外は木嶋さんと同じこと(SM、レズ、オナニー)してるのに、乳首だけNGってw

観客の視線を木嶋さんに集中させる為の配慮なんでしょうか? でも、他の映画じゃ全部見せてる間宮夕貴さん(部長役、メガネの子)も今回は乳首死守ですから、乳首次第でギャラの額が違うのかも知れません。

いやしかし、もう1人の部員を演じる矢野未夏さん(太めの子)は豪快に見せてますからw、なんだかよく解りません。見せる子と見せない子が混在するのは不自然ですから、そこは大きなマイナスポイントです。

原作は4コマ漫画なんだそうで、たぶん拷問を笑いのネタにしてるんだろうと思いますが、映画版は百合の要素をメインに結構シリアスなドラマになってます。

だから「拷問」に惹かれて観る人には物足りないかも知れません。痛いのが苦手な私でも眼を背けずに観てられましたから。

逆に、私みたいに「百合」が目当てな人には強くオススメしたいです。儚いラブストーリーとして楽しめるし、本気で感じてるんじゃないか?って思うくらい気持ちの入ったレズシーンが素晴らしくて、私は非常に満足しましたw



憧れの女子校に入学が叶ったヒロイン(木嶋のりこ)ですが、なぜか無理やり「拷問部」に入部させられる羽目になります。実は入学試験に拷問士の適性を測る問題が盛り込まれてたのですw

まずは拷問に耐える訓練を受けるヒロインですが、Mでもない彼女にとっては苦痛でしかない。けど、以前から憧れてた先輩(吉住はるな)と一緒にいる為に、彼女は拷問に耐える訓練に耐え続けるのでした。

やがてヒロインは、先輩が真性のMであることに気づくと同時に、自分自身の中にあるSの血が目覚めて行きます。そして2人は互いを求め合い、ついに結ばれるのですが……

拷問部には、部員どうしの恋愛を禁じる鉄の掟があり、2人の関係に気づいた部長(間宮夕貴)は、ヒロインを究極の拷問具=アイアンメイデンで折檻しようとする。たけど全ての罪を被った先輩が身代わりになり、重傷を負う羽目に……

なぜ、拷問部は部員どうしの恋愛を禁じるのか? たぶん、そこがSMと拷問の違いなんだろうと思います。愛情や快楽を伴うのがSMであり、情報を聞き出す為にひたすら相手を痛めつけるのが拷問。

でも相手に愛情を持ってしまうと、その行為はSMという「プレイ」になっちゃう。それでは訓練にならず、一流の拷問士にはなれないってワケです。

なんで女子高生が一流の拷問士にならなきゃいけないのか?ってのは愚問ですw この作品の世界にはそういう使命と掟があるんだから仕方がない、大霊界はあるんだから仕方がない。

で、部員に重傷を負わせたことで拷問部は廃部の危機に瀕するも、先輩が自分の退学と引き換えに部を守り、遠い地へと引っ越す=愛する後輩と別れなければならない、という切ない結末を迎えます。

けど、先輩のお陰で、自分の中に眠ってたSの血が目覚めたヒロインは、部長をも超える一流の拷問士に成長し、拷問部の未来を支える存在となるのでした。

こういった思春期における「百合」の世界に私が惹かれるのは、勿論スケベ心が第一にありつつも、そこに「儚さ」をすごく感じるからなんですね。

結ばれたとしても、その関係は決して長くは続かない。恐らくほとんどは卒業と同時に終わっちゃう。実際はどうだか知らないけど、私の中じゃそんな切ないイメージがある。だからこそ、愛し合う場面が輝いて見えるワケです。

しかもこの映画の場合、2人がやっと結ばれ至福を味わった直後に、残酷な拷問シーンが待ってる。その痛みがあるからこそ2人の愛は余計に燃え上がり、引き裂かれた後に互いを想ってオナニーする場面や、最後の抱擁シーンがより切なく、感動的なものになるんですよね。

しかも、ちゃんとヒロインの成長ストーリーにもなってるワケで、これは決してただのエロ映画じゃない。なにげに良く出来た青春映画です。

ところが、映画紹介サイトに投稿された観客レビューを見てみると、酷評してる人が結構おられる事に驚きました。

曰わく「何を描きたいのかサッパリ解らない」「監督の演出が下手くそ」「女子のヌードに頼り過ぎ」「SMと拷問の違いが判らない」「恋愛の過程がちゃんと描かれてない」etc……

劇場に足を運び、高い料金を払って観た観客の意見ですから、ハードルが高くなるのはまあ理解出来るんだけど、それにしたって創り手に対する敬意と思いやりが全く感じられない言い草に、私はカチンと来ちゃいました。

作品に対してどんな感想を述べようが自由なのは承知してますが、だったらその感想に対する感想を述べるのも自由ってことで、ちょっと反論させてもらいます。

まず言いたいのは、この種の映画に対してあなた達、そんなハイレベルな内容を本気で求めてらしたの?ってことです。

こんなのは女子のハダカとセックスを見たい人が観る映画であって、演出が上手いとか下手とか論じるもんじゃないでしょう? ヌードに頼り過ぎてるって、その為に創った映画でしょうが!w

そういう意味じゃ木嶋のりこさんの脱ぎっぷりとエロ芝居はパーフェクトです。充分に料金分のサービスは行き届いてます。なぜか乳首NGな人はいるけどw、木嶋さんの頑張りはそれを補って余りあります。

監督の演出が下手くそって、何様ですか? だったらどの場面がどうダメで、どうすれば良かったのか具体的に書きなさいよって話です。小学生の読書感想文じゃないんだから。

低予算=少ない人員と超タイトなスケジュールで、しかも演技に関してはほとんど素人のグラビアアイドル達を主役に、吉田浩太監督は精一杯の仕事をされたと私は思ってます。

何を描きたいのか解らない? SMと拷問の違いが判らない? その答えは上に書いた通りで、しっかり明快に描かれてますよ。自分の理解力の無さを棚に上げて、何でもかんでも創る側のせいにする……そんなの単なるタチの悪いクレーマーですやん。

まずは予告編やチラシ&ポスター、上映館の作品傾向などをよく見て、その映画が何を目的にして、どれくらいの予算規模で創られたのか、事前に予測する想像力と感性を磨きなはれ。

どんな低予算で創られてようが、高い料金を払う以上はハリウッド大作と同じレベルでなきゃ納得出来ないなんて、よもや思ってないでしょうね?

そんなにハードルを上げて、損するのはアナタ自身ですよ。素直に「のりこちゃんのヌード最高!」「本気のレズシーンにボクの身体の一部がHOT! HOT!!」って、喜んだ方が絶対トクなんだから。

というワケでセクシーショットは間宮夕貴さん、吉住はるなさん、そして木嶋のりこさんです。


 

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『過激派オペラ』

2021-04-26 08:00:08 | 日本映画










 
※前回の『カケラ』は、ちょっと前にレビューした『スクールガール・コンプレックス/放送部篇』から続いてる「百合映画」の流れに合わせ、かつて閉鎖した旧ブログから引っ張りだして来た過去記事の再掲載であり、今回の『過激派オペラ』もその1本。

文中でコメディ映画『探検隊の栄光』が何度も引き合いに出されてますが、それは旧ブログでその作品の次にレビューしたのが『過激派オペラ』だからであり、悪意は全くありませんw(どちらも同じくらい私は大好きな映画です)

☆☆☆☆☆☆☆

『過激派オペラ』は2016年に公開された、江本純子監督による日本映画。江本監督は劇団「毛皮族」主宰者で、映画はこれが処女作。ご自身の書かれた小説『股間』が原作になってます。

女性ばかりの小劇団「毛布教」の主宰者=ナオコ(早織)が、新作舞台『過激派オペラ』のオーディションで出逢った女優=春(中村有沙)に一目惚れし、彼女を主演に抜擢しつつ口説き倒して恋仲になるも、痴話喧嘩による破局で劇団もガタガタになっちゃう、そりゃそうなるやろ!っていう納得のお話ですw

一見シリアスタッチだけど本質はむしろコメディで、『探検隊の栄光』や『HK/変態仮面』と同じカテゴリーに入るおバカ映画かも知れませんw

とにかくナオコという女がチョー肉食系のレズビアンで、ひたすら「やらせて!」「お願い!」「1回でいいから!」と土下座しながら女の子を押し倒す姿は中学生男子にしか見えませんw

だから、ヌードも濡れ場も頻繁に登場するんだけど、エロいというよりは滑稽でw、我々のオカズには多分なりません。

彼女らが演じる舞台もまた、半裸で踊ったり絡み合ったりする卑猥なものだけど、シュール過ぎて全然意味が解んなくてオカズになりませんw

じゃあどう楽しめばいいのかと言えば、やっぱりこれは笑って楽しむべき映画。大衆ウケを狙ったがゆえにスベっちゃった『変態仮面』のパート2より、よっぽど正しいバカ映画の在り方です。

そして男性観客にとっては、女性という生きものの本質を学ぶ絶好のテキストになるやも知れません。やっぱり女性監督の作品だけあって、我々があまり見たくない女性の姿も容赦なく描いてくれます。

監督ご自身も恐らく内面はかなり男性的で、だけど性別は女だから、周りにいる女性たちは彼女の前で(男にはなかなか見せない)本性をさらけ出しちゃう。それを男性的な目線で見て来られたであろう、江本監督ならではの女性描写が楽しめるって寸法です。

世間の眼から見れば無意味でバカバカしいことに、当人たちはすこぶる真剣に、半ば命懸けで取り組んでる。その愚直で滑稽な姿に感動しちゃう構図は、同じ演劇の世界を描いたももクロの『幕が上がる』よりも、やっぱ『探検隊の栄光』に近いw

ただし、映画としての完成度は『探検隊~』よりこちらの方がずっと高いと思います。主役の早織さんと中村有沙さんも魅力的だし、こちらは安心して皆さんにオススメ出来ますw

共演は趣里、桜井ユキ、森田涼花、範田紗々、増田有華、高田聖子、安藤玉恵etc…と、けっこうメジャーな女優さんも参加されてます。

一見の価値あり。男性でも女性でも楽しめると思います。

ところで『過激派オペラ』に後半から登場し、途端に観客の眼を奪い、役の上でも台風の目となって劇団「毛布教」を引っ掻き回す女優=ユリエを演じたのが、最近よくテレビでお見かけする趣里さん。

設定上でも既に売れてる女優の役で、その圧倒的な存在感と才能で、主役だった筈の春(中村有沙)から居場所を奪ってしまう。それが春とナオコ(早織)の破局に繋がり、劇団がガタガタになっちゃうワケです。

そんな別格の女優を連れて来て、あからさまにチヤホヤするナオコもナオコなんだけど、彼女はたぶん舞台の内容をより良くすることしか考えてない。

なのに主演女優の春を痴話喧嘩で失った挙げ句、ワガママが酷くなって来たユリエをセックスで黙らせようとして彼女にも逃げられちゃうw 劇団の経営も赤字で何百万もの借金を抱えてるのに、演劇も女たらしも一向にやめられない。

バカでしょう?w だけど憎めない。演劇へのほとばしる愛と情熱が、彼女から溢れてるからだろうと思います。

で、趣里さん。一度見たら忘れられないルックスをされてます。私は連ドラの『リバース』『この声をきみに』『トットちゃん!』等で続けてお見かけし、また新しい売れっ子さんが出て来たんやなあって、まぁその程度の認識しか無かったんだけど、今回の趣里さんを見て一気にファンになりました。

ももクロの映画『幕が上がる』では黒木華さんが登場した途端に空気が一変しちゃう女優オーラに驚いたけど、『過激派オペラ』における趣里さんもまさにそう。彼女をキャスティングした江本監督の選択眼は素晴らしい!と思いました。

今回の役ではコメディエンヌとしての才能も発揮されてて、この人はきっと大物になるに違いない!と思ってこの記事を書くことを決め、初めてプロフィールを調べてみたら驚いた!

なんと水谷豊&伊藤蘭 夫妻の娘さんだったのですね! 私は全然知りませんでした。やっぱり、才能も遺伝するんですね。15歳で足に大怪我を負うまではバレリーナを目指しておられたらしく、演技については特に英才教育を受けてないみたいだから、やっぱり持って生まれた才能なんでしょう。

デビューは2011年放映の『3年B組金八先生スペシャル』で、けっこうキャリアはおありだけど、私が好んで観る作品には最近まで出ておられなかった。

この『過激派オペラ』も、なぜかWikipediaのプロフィールからは除外されてますw 趣里さんご自身にはヌードも濡れ場も無いのに、これだけメジャーになると黒歴史扱いされちゃうんでしょうか。素晴らしい仕事をされたと私は思うので、ちょっと残念。

だけどお人柄も評判良くて、これからますますメジャーになられるのは間違いないでしょう。

そしてセクシーショットは主役の中村有沙さん。井口昇監督による究極のお下劣ホラー『ゾンビアス』('12) でうんちゾンビたちと屁をこきながら激闘した、あのハツラツ美少女もすっかりオトナ。現在はフッくんの息子こと俳優の布川隼汰さんと結婚され、人妻になられてます。


 

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『カケラ』

2021-04-23 23:50:03 | 日本映画










 
2010年春に公開された、安藤モモ子さんの監督・脚本による日本映画。桜沢エリカさんの漫画『LOVE VIBES』を実写化した作品です。

この映画に百合の要素があることは知ってましたが、予告編でコメディっぽい印象を受けたもんで、ちょっとしたネタ程度の描かれ方だろうと勝手に思い込んでました。

観たら違ってました。これは本格的な百合映画ですよ! ただし、我らヘンタイ男が妄想する甘美な百合世界とは全然違います。ヘロデ王こと奥田瑛二さんの長女=安藤モモ子さんの第1回監督作品ってことで、確かにこれは女性にしか撮れない映画です。

満島ひかりファンの方は、ちょっと覚悟して観なければなりません。下着姿や、お尻が見えるシャワーシーン、女性どうしのラブシーンは良い(むしろ大歓迎)として、アパートの和式トイレにお尻をつけて放尿したり、公園のトイレでタンポンを入れたり等、男としてはあまり見たくない生々しい描写が多々あります。

特に衝撃的だったのは、腋毛です。アンダーヘアを見せた女優さんはいっぱいいても、腋毛を大スクリーンに晒した売れっ子女優は数少ないでしょう。男が女性に対して抱く幻想を、ことごとく打ち崩してやろうっていうモモ子さんの狙いがハッキリ判ります。

だーがしかし! 世の中、女性の腋毛に顔をしかめる男ばかりだと思ったら、そりゃ大間違いですぜモモ子さんw

私が性に目覚め始めた中学時代、同級生女子の制服(夏服)の隙間から見えた腋毛に衝撃を受けて以来、女性の脇の下がチラッと見えるシチュエーションに、興奮するとまでは言わないけど、ちょっと萌える体質になってしまったのです。

いや、往年のセクシー女優・黒木香さんみたいにボーボーなのは平気なんです。ちょっと処理をサボってうっすら生えて来た位がちょうどいい。要するに、思春期に初めて見た女性の秘部、その時のドキドキが刷り込みになって今だに残ってるワケです。

例えば夏場、電車の座席に座ってて、目の前に女性が立ち、吊り革を持ったとしましょう。私はつい、彼女の脇の下をチラ見しちゃうのです。で、それが綺麗に処理されてた日にゃあガッカリするワケですよ。

だからモモ子さん。皮肉にもあなたは、私を喜ばせただけに過ぎないんですよ?……って、話が横道に逸れまくってますけど、皆さんどいつもこいつもホントど変態ですね!

満島さん扮するヒロインがつき合ってる彼氏ってのがまた、ロクでもない乳首チョメチョメ野郎で、ただ会って泊まってセックスするだけの、惰性かつ空疎な日々。

心の隙間を埋める何かが欲しい……そんな時に彼女が出逢うのが、中村映里子さん扮するメディカル・アーティスト。義手とかシリコンおっぱいを造ったりする、言わば人の欠けたパーツを補う仕事をしてる女性です。

男か女かなんて関係ない。自分は「人」を見て好きになるだけで、世間からどう思われようが知ったことじゃない。そんな中村さんは実にカッコいいです。レズだ変態だとバカにする乳首チョメチョメ野郎にキンテキを食らわし「キンタマ付いてりゃ偉いのか!? グローバルな世の中について来れないだけだろバーカ!」なんて啖呵を切る場面には拍手喝采です。

だから満島さんも彼女に惹かれ、男も女も関係ない心の繋がりに、隙間を埋めてくれる何かを見いだすんだけど……

いざ同棲生活を始めると、自由奔放に見えた中村さんが、満島さんを束縛するようになる。「男だの女だのと考えるから苦しくなるんだよ」って言ってた中村さんなのに、満島さんがちょっとでも男と関わると嫉妬する様になっちゃう。自分の方がよっぽど性別にこだわってるやん!っていう矛盾w カッコいい彼女にもやっぱり「欠けてる」パーツがあるんですよね。

幸せを感じたのは束の間だけで、2人の心はすれ違い、再び孤独で息苦しい毎日が始まる。で、2人はこれからどうなっていくの?っていう観客の気持ちを置き去りにしたまま、突き放すように映画は終わっちゃいます。

「満月は綺麗だけど、それは1日だけで後はずっと欠けてるんだよ。でも、欠けてる月だって綺麗かも」

「好きなものは、いっぱい食べちゃ駄目だよ、気持ち悪くなっちゃうから。少しずつ食べた方が幸せだよ」

↑うろ覚えですが、作者のメッセージはこれらの台詞にこめられてるかと思います。

心が満たされず、息苦しい毎日……それって誰でも同じで、普通のことなんだよと。たまにしか満たされないからこそ、その瞬間が幸せに感じられるんだよと。

人は不完全な生きもので、常に何かのパーツが抜け落ちてる。そのカケラを拾い集め、パズルを埋めていくのが人生ってこと……なのかも知れない。なかなか全部は埋まらないけど、1つ埋めるたびに歓びがあるんだから、また頑張って次のカケラを探そうよって、そういうことを言ってるんだと私は解釈しました。

それにしても満島さん、名作『悪人』や『川の底からこんにちは』でもそうだったけど、心が満たされずに苦しむ「中の下」の女を、実に自然に演じておられます。

特に『川の底から~』の前半と、本作の満島さんはよく似てます。優柔不断で流され易く、ダメ男に振り回されちゃうダメ女。これがまた妙にハマってるw

ところで、ずっと前にタベリスト仲間のgonbeさんが本作をレビューされた時の疑問点=棒アイスを妙にいやらしいしゃぶり方で食べる、中村映里子さんの場面ですが……

私は中村さんが男に全く興味が無いからこそ、ああいうしゃぶり方を(そういうしゃぶり方だとは知らずに)平気でしちゃうんだろう……と、数年前に本作を観た時は思いました。

けど、今回あらためて観直すと、むしろ彼女の隣にいる満島さんが、わざわざウインナー・ソーセージを食べてるのが気になるんですよね!w いわゆるジェンダーレスっぽい満島さんは、それを普通に噛って食べてるワケです。

だから、つまりセックスの問題に関して、満島さんはもう飽きるほど満たされてるのに対して、中村さんは著しく「欠けてる」からこそ、無意識に渇望してるっていう暗喩なのかも知れません。そう考えると、満島さんがいつもパンツルックなのに対して、中村さんはスカートを好んでることにも意味がありそうです。

まあ、アイスは普通しゃぶるもんだし、ウインナーは噛って食うもんだろと言われりゃその通りなんだけどw 

いずれにせよ、男なんて所詮ただの「肉棒」に過ぎないってことですよ! それが結論w


 

コメント (3)
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