ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『VRおじさんの初恋』#01~#11

2024-05-05 21:40:13 | TVドラマ全般

2024年の春シーズン……つまり今、密かにというか、思いがけず私がハマってる連続ドラマが、NHK総合テレビの深夜15分枠「夜ドラ」(月曜〜木曜) で絶賛放映中の『VRおじさんの初恋』。まさか、野間口徹さんの主演作にハマってしまうとは!(いや、好きな俳優さんのお一人ではあるけれど)

「夜ドラ」は『作りたい女と食べたい女』や『ミワさんなりすます』あたりも面白かったけど、予約録画までして欠かさず観てるのは、以前レビューした『事件は、その周りで起きている』と『超人間要塞 ヒロシ戦記』以来のこと。

原作は“暴力とも子”という素晴らしいペンネームの作家さんによるウェブコミックで、2018年から’19年にかけて漫画アプリ「マンガコネクト」で連載された作品。

主人公は小さなタイヤメーカー会社に勤める冴えない営業マン=遠藤直樹(野間口 徹)だけど、ストーリーの半分以上は彼が夜な夜な没頭するVR (仮想現実) ゲーム「トワイライト」で展開されますから、むさ苦しくありません。

なにせVR世界における直樹のアバター「ナオキ」は、セーラー服姿の美少女(倉沢杏菜)なんです。

「どこにいても居心地が悪い。誰といても落ち着かない」



第1話冒頭における彼女(彼)のモノローグ、その一言だけで私は心を鷲掴みされちゃいました。簡単なもんですw

いや、簡単なようで実は簡単じゃない。私がその一瞬で感情移入できたのは、現実世界の直樹を演じるのが野間口徹さんであればこそ。これが民放のドラマだと松下洸平とか神尾楓珠になっちゃう。嘘つけ!って話です。

そりゃあ美男美女にだって美男美女なりの悩みがあるのは解るけど、そうじゃない人間とは生きていく難易度がスタートの時点から違ってる。野間口さんでないと「あっ、そこにオレがいる!」とは思えないワケです。



直樹のアバター、つまり実質的な主演者となる「ナオキ」役に、まだ多部未華子さんや今田美桜さんほど顔も名前も知られてない(現時点ではウィキペディアに単独の記載もない)倉沢杏菜さんみたいにフレッシュな女優さんを抜擢するのも、たぶん現在の民放局じゃムリでしょう。

ナオキだけじゃありません。彼女(彼)をVR世界で見つけ、一目惚れし、猛アプローチをかけてくる天真爛漫な美少女「ホナミ」を演じる井桁弘恵さんもまた、すでに『仮面ライダーゼロワン』の女性ライダー役など多くの作品で活躍されてはいるけど、私は今まで認識できてませんでした。



『CRISIS』や『警視庁・捜査一課長』など刑事物にもゲスト出演されてるから何となく見覚えはあったけど、その愛らしさを余すことなく発揮した本作で間違いなくブレイクされる事でしょう。



で、当然、VRおじさんにも恋心が芽生えちゃう。


「なんだ、これ?」

そんな直樹の姿を見た時点で私は号泣です。タイトル通り、彼はこれまで恋をしたことがない。他者との深い関わりをずっと避けて来たから当然です。

私自身、もし多くの他者と関わらざるを得ない“自主映画”という趣味を持たなかったら、恋愛でしか味わえないあの至福感も喪失感も知らないまま、たぶん直樹よりずっと若い年齢でこの世を去ってたはず。

だから、恋をしないまま歳を重ねちゃった直樹の絶望も、そしてオジサンになってから(バーチャルとはいえ)自分を「大好き」と言ってくれる人に出逢って“救われた”気持ちも痛いほどよく解る。



ところで、現実世界の直樹が勤める職場ですが、人数が少ないお陰もあるだろうけど、VR世界に逃げ込みたくなるほど居心地悪い場所には見えないんですよね。



隣の席にいる佐々木さん(堀内敬子)はお喋りでお節介焼きだけど、他者のパーソナルエリアに土足で踏み込むようなアホじゃない。



向かいの席にいる若手の加藤さん(瀬戸芭月)は逆に無口で他者を寄せつけないオーラを放ってるけど、それはむしろ直樹にとっては有難いはず。



上からの命令で仕方なく、直樹に希望退職を勧めてくる歳下上司の澤田さん(細田善彦)も根は優しい人っぽいし。

で、なぜかみんな直樹のことを名字じゃなく「直樹さん」って呼ぶ。VR世界でもホナミが彼を「ナオキさん」って呼ぶから、もしかしてこの中にホナミの実体が?って我々に思わせる為のミスリードかも知れないし、あるいは視聴者の「家にいてまで不愉快な人間関係を見たくない」っていう昨今のニーズに応えてるだけかも知れないけど。

ともあれ、人間関係がニガテな人は周りの環境がどうあれやっぱニガテだし、それはVR世界でも同じだったりする。

そんなナオキにホナミが惹かれたのも、決して外見が可愛いからじゃない。お互い誰かのアバターだと分かってるんだから当然です。

古臭い表現かも知れないけど“フィーリングが合った”、あるいは“ビビッと来た”んでしょう。ホナミの実体も孤独な人であることが後に判ります。



会う約束をしてない日も、気がつけばいつもの喫茶店に来てしまうナオキ。


「来ないことを思いだすと、急に独りになったような気がしてくる。もとから独りだってことを忘れそうになる……こんな自分、初めてだ」



VR世界の描写が素晴らしくキラキラしてて、現実世界とのギャップがまた凄まじいw 当然CGも多用してるでしょうが、それよりロケやセット撮影の方が多そうに見えます。

で、ナオキがホナミと過ごす時間が輝けば輝くほど、私は泣けてくる。それは必ずいつか終わるし、そもそも現実じゃないんだから。

案の定、ナオキが生まれて初めて愛を告白しようとした時、ホナミが「もう会えない」と言いだすのでした。

「来週、手術します」

どうやらホナミの実体は病気を患ってるらしい。でも、だからって……



「オレは……オレは……ホナミのことが……好きなんだ……生きて来て、初めて好きになった人なんだ……初恋なんだ! バカバカしいことは分かってる……この世界が架空なことも分かってる……それでも……オレは……ホナミのことが……好きで好きでどうしょうもないんだ!」



「……嬉しいです。せめて、私とナオキが過ごした日々が、ナオキのこれからの人生の糧になればと……願っています」



失恋…… 胸にぽっかり穴が空いたようなあの喪失感は、きっと子孫繁栄のために組み込まれたDNAなんでしょうけど、すぐには立ち直れない点が他の生物とは違う“人間らしさ”なのかも知れません。



ましてや40代半ばまで恋をしたことがない、つまり免疫を持たない人があのツラさに耐えられよう筈がない!

そこで直樹は、VRプレイヤーが絶対やっちゃいけないタブーを犯しちゃう。不正アクセスによりホナミの住所を探り出し、直接会いに行ってしまう。

さて、そこで見たホナミの実体は……!?



70歳前後の男性だった!

(つづく)


現時点(5月5日)で第20話まで放映されており、明日には第21話が放映されるから一気に20話分レビューしたかったけど、タイムオーバーです。

ここ(第11話)までのストーリーさえ知っておけば途中参加でも充分に楽しめると思うので、皆さんにもオススメしておきます。

ポートレートは野間口徹さんではなく、ナオキ役の倉沢杏菜さんとホナミ役の井桁弘恵さんです。

コメント (8)
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