ハリソン君の素晴らしいブログZ

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『太陽にほえろ!PART2』1986~1987

2019-02-02 00:00:14 | 刑事ドラマ HISTORY









 
1986年11月から翌年2月まで、金曜夜8時に日本テレビ系列で放映されました。制作は日本テレビ&東宝です。

ご存知でしたか、この番組の存在を? 知ってても観た事がないって方が大半じゃないでしょうか? なにしろ全12話、つまり1クールしか放映されなかったドラマですから……

今でこそ1クール(3カ月)放映が標準になってますけど、当時の連ドラは短くても2クール以上が常識でしたから、12話で終わりとなると「視聴率の低迷による打ち切り」って思われちゃうんですよね。

でも、違うんです。前作『太陽にほえろ!』はボス=石原裕次郎さんが体力の限界で急遽終了が決まった為、裕次郎さん以外のレギュラーキャスト陣の出演契約が、まだ1クール分残ってたんですね。

日テレとしては新しいボスを迎えて番組を継続したかったんだけど、石原プロが終了を強く望んだ為、新しいドラマに切り替える事が決定、でも準備期間が要るしキャストの契約もあるから、新番組までの繋ぎとして『PART2』が創られる事になったワケです。

ファンはみんな、代理ボスを務める渡 哲也さんの続投を望んでたと思いますが、当時の渡さんはもう「団長」的な役柄を卒業したかったのかも知れません。

そんな様々な事情から、1クール限定を前提に製作された『太陽にほえろ!PART2』ですが、パート1が全718話あるのに、パート2が全12話って… どんなバランスやねんw 違うタイトルに出来なかったの?って思うけど、まぁ他にどうしょうも無かったのでしょう。

パート2最大の特徴は、メジャーな連続物の刑事ドラマでは恐らく(当時は)前例が無かったと思うのですが、ボスの役目を務めたのが女性であること。演じたのは、裕次郎さんが最も尊敬されてたと云われるベテラン女優・奈良岡朋子さんです。

これには賛否両論あろうかと思いますが、私は大正解だったと思ってます。もし、候補に挙がってたとされる加山雄三さんや後に『刑事貴族』でボスになる松方弘樹さんみたいな男性スターが起用されてたら、どうしても裕次郎さんと比べちゃいますからね。そして裕次郎さんに遠く及ばないのは目に見えてます。

ならば思い切って全く違った角度から人選した方が良いし、到来する女性の時代をいち早く先取りした点でも、実に鮮やかな舵取りだったと私は思います。ここまで大胆に改革されたら、ファンもかえって文句が言えなくなります。

そしてもう1つの目玉が、寺尾 聰さん扮する喜多 収 刑事でした。『太陽にほえろ!』の中だとスコッチ刑事(沖 雅也)からの流れを汲む「クールな一匹狼キャラ」のポジションだけど、同じクールでも肩肘張らない飄々とした軽さも兼ね備えた、全く新しい刑事像を築かれてたのがもう、さすがとしか言いようありません。

何があってもウェットにならない、とことん乾いた感じが実にハードボイルドで、犯人をサラリと射殺しちゃうような所も『太陽』じゃ異色のキャラでした。おまけにニックネームも無し!ですからね。たぶん、そうして『太陽』色に染まらない事こそが寺尾さんの希望というか、出演の条件だったんだろうと思います。

後のメンバーは前作から続投のドック(神田正輝)、マミー(長谷直美)、ブルース(又野誠治)、マイコン(石原良純)、DJ(西山浩司)、トシさん(地井武男)、さらに4年ぶりに現場復帰の長さん(下川辰平)と、総勢9名の大所帯。

そんな中でも寺尾さんは全く埋もれないどころか、ピカイチの存在感を示しておられました。これは私だけの感覚かも知れないですが、それまでチームの中心にいたリーダー格の神田正輝さんが、寺尾さんが加入した途端に影が薄くなっちゃったんですよね。

ベテランと若手の中間にいるポジションと、キャラ的にも少し被る部分があって、そうなると圧倒的に寺尾さんのカリスマ性とか男の色気が、神田さんを食っちゃったように私は感じました。

それだけ寺尾聰という俳優の持つパワーが凄いって事で、今でも主役級で活躍されてる所以ですよね。実際、粒揃いなパート2全話の中でも、寺尾さんが主役を務めた3本は特に面白かったです。武骨なブルース刑事とのコンビが、軽妙で凶悪で実に最高でした。

寺尾さんは『大都会 PART III』以降、数々の刑事ドラマに出演されてますが、その中でもこの『太陽2』で演じられた喜多刑事こそが最高に魅力的だったと、贔屓目を抜きにして私は思ってます。たった12話しか無いのが実に惜しい!


#01 悪魔のような女

OPタイトルの冒頭にテロップが入り、藤堂ボスが栄転して新体制となった近未来の七曲署、という設定がサラリと告げられます。

テーマ曲は「太陽にほえろ!メインテーマ’86」が引き続き使われますが、タイトルバックの映像にはパート2ならではの演出が施されてました。ボスの歩きは勿論、若手刑事の疾走もオミットされて「熱血」な感じが無くなったのと、ドック、マミー、ブルース、マイコン、DJの若手陣がなんと、ワンカットの長回しで一気に紹介されるんですよね。

遊園地で犯人が現れるのを待ち構えてるような設定で、ブルースがあの顔で眉間にシワを寄せながらメリーゴーランドに乗ってたりw、何ともシュールで笑っていいのやら戸惑いました。(ジーパン=松田優作さんが巨大コーヒーカップで煙草を吸ってたOPタイトルへのオマージュ?)

でも今思えば、何度もリハーサルを重ねないと撮れない非常に手の掛かったショットで、スタッフ&キャストの意気込みと遊び心が伝わる素晴らしいOPタイトルです。

第1話の内容ですが、ドックを主役に冷血な殺人犯のアリバイ崩しが描かれてて、これじゃパート1とそんなに変わり映えしないやんって、当時は拍子抜けした記憶があります。

でも、これも今にして思えば、新しい試みが色々とされてるんですよね。最初に犯人の犯行を視聴者に見せておいて、主役の刑事が如何にして犯人の正体に気づき、その尻尾をつかんで行くかを描く「倒叙法」のスタイルが取られてる。『太陽』では滅多に使われなかった手法です。

さらに、犯人が美女(金沢 碧)であった事。それまでは大抵、女性が殺人を犯す動機は「痴情のもつれ」だったり「家族や恋人の仇討ち」だったり、あるいは「正当防衛」が多かったのに対して、この犯人は私利私欲の為に男を利用し、用無しになれば殺すという、まさに悪魔のような蜘蛛女でした。

『太陽』じゃほとんど前例が無いもんだからドックたちは戸惑うんだけど、そこで新ボス=篁(たかむら)係長がこう言うんです。

「犯罪に男も女もありません。犯人という1人の人間がいるだけよ」

この台詞は、女性のボスでなければ説得力が無いと思います。新しい『太陽にほえろ!』の幕開けが宣言された瞬間ですよね。


#02 探偵物語

探偵事務所のオフィスを借りて、宝石店強盗の容疑者(森川正太)のカノジョ(甲斐智枝美)を張り込む喜多さん&ブルース。すると、その張り込み相手から「彼を警察より先に見つけて逃がして欲しい」って、仕事を依頼されてしまう2人。

探偵になりすました喜多さんはカノジョと行動を共にし、カレシが持ち逃げした宝石を狙う強盗一味と闘う羽目になるという、角川映画の『探偵物語』を彷彿させるお話。

寺尾さんの飄々とした軽いノリと、ハードボイルドな男の色気が同時に堪能出来る好編で、決して『あぶない刑事』にも引けを取らない格好良さ。助演のブルースとの組み合わせもバッチリで、このシリーズ最大の収穫だったと私は思ってます。

また、クライマックスの銃撃戦において、喜多さんが強盗一味の1人(片桐竜次)をアッサリ射殺しちゃう展開にも度肝を抜かれました。死ぬ所までは見せてないんだけど、片桐さんは腹を撃たれて、そのまま放置されてましたからw、絶対死んでると思います。

従来の『太陽にほえろ!』ならば犯人射殺は重大なトピックとして描かれるんだけど、喜多さんは顔色一つ変えないで、サッサと他の犯人を追いかけて行っちゃう。これもまた、パート2はひと味違うんだよっていう、宣言の意味を込めた演出だったんでしょうか?


#03 老犬ムク

これは名作です。迷い犬になつかれ、アパートで飼うワケにもいかず七曲署の裏に繋いで面倒を見るDJ。で、篁係長の許可を得て飼い主を探してみたら、河原で遺体となって発見されちゃう。

決して目新しいプロットでもないんだけど、ボスが女性になって家族的な雰囲気が一層強くなった七曲署と、まだまだ少年みたいに見えるDJのキャラクターに、しょぼくれた老犬「ムク」の佇まいが絶妙にマッチしてるんですよね。

いつもボーッと寝てばかりいるムクが、飼い主を殺した犯人を見つけた時だけ必死に全力疾走する姿に涙。それで体力を使い果たしたのか、行方不明になったムクは翌朝、飼い主の遺体が発見された河原で……

かつての警察犬シリーズみたいにイヌをやたら擬人化すること無く、あくまでイヌはイヌとして扱ってるのも良かったし、涙を強要しない淡々とした演出にかえって泣かされます。

刑事ドラマとイヌは相性バツグンで、定番中の定番なんだけど、これほど泣けるエピソードは他の番組を見渡しても無かったように思います。


#05 長さんの長い午後

マミーから職務質問を受けた男(村田雄浩)らが発砲し、喫茶店に立てこもります。被弾したマミーは重傷で、一刻の猶予もない。

身代わりで人質になった長さんは、いわゆるストックホルム症候群を利用して犯人達を自首させようとします。そんな長さんを信じて待つか強行突入するかで、ドックと喜多さんが激しく対立し、珍しく一係が真っ二つに分裂しちゃう。

こういう場合、本来なら中立の立場にいるのがドックのキャラで、長さんを信じるべきだ!って熱くなる姿にはちょっと違和感がありました。

もはやドックが一番の古株になっちゃった現状だと、そういう役割に回るしか無いんですよね。自由度の高い喜多さんに視聴者の眼は行っちゃうワケで、神田さんもツラい立場……だったのかも知れません。


#06 心満たされず…

大企業の重役が拉致され、リベートの金を奪われる事件が発生。犯人は「男装した女性」と思われ、喜多さんは1人の女子社員(相本久美子)に眼をつけます。

何不自由なく満たされた生活の中で、心だけが満たされない。そんな普通のOLがゲーム感覚で起こした犯罪なのか? スコッチの主演作『すれ違った女』を彷彿させるミステリーですが、本作は更にひと捻りが加えられ、不倫の恋が絡んでるのが時代を表してます。

今回、喜多さんとコンビを組むのはDJ刑事。この組み合わせも面白かったですね。喜多さん&ドック、喜多さん&マイコン(笑)のコンビ作も観てみたかったです。


#08 ビッグ・ショット

ところが、一番の名コンビと思われた喜多さん&ブルースの関係が悪化しますw

昔ながらの猪突猛進型で身体を張った捜査が信条のブルースから見ると、合理的でマイペースな喜多さんのエコノミー捜査は、まるで手を抜いて遊んでるみたいに見えちゃう。

実際、喜多さんも売り言葉に買い言葉で「人生なんて、死ぬまでの暇つぶしよ」なんて言うもんだから、ブルースは余計にカッカして、マイコンに八つ当たりw

だけど、いざ銃撃戦となれば生命を投げ出して市民を守る喜多さんの姿を見て、ブルースも考えを改めます。つくづく単純な男ですw 以前よりも絆を深めて、最強コンビここに復活!


#11 神戸・愛の暴走

ブルースの妻・泉(渡瀬ゆき)が撃たれて重傷を負います。ブルースに恨みを持つ男(阿藤 快)の犯行と判明し、理性を失ったブルースは犯人に復讐すべく暴走し、単身で神戸へと向かいます。

地方ロケ編としてはあまりにシリアスな内容ですが、久々に『太陽にほえろ!』らしい骨太なアクションが見られて嬉しかったです。

震災前の三宮やポートアイランドは、私も自主製作映画でロケした馴染み深い場所で、親友がアシックスの社員だった事もあり、非常にメモリアルな一編だったりします。(当時のアシックスは『太陽』のスポンサーで、ポートアイランドの本社でも撮影されてました)


#12 さらば!七曲署(終)

篁係長の息子(井上純一)に殺人容疑がかかります。夫(米倉斉加年)と離婚して以来、係長が数年ぶりに息子と対峙する場所は取調室だったという皮肉。

もちろん息子は無罪である事が判明し、事件は丸く収まるんだけど、この話の一体どこが「さらば!七曲署」だったのかは、未だ謎のままですw まぁ、これはあくまでパート2の最終回であって、1クールのドラマとしては順当な幕引きだったように私は思います。

このドラマ、パート1にも決して引けを取らないクオリティーだし、パート2ならではの魅力も多々あって、幻の作品にしておくにはあまりに勿体無い……と思ってたら、30年経ってようやくDVD化され、CS初放映も叶いました。当時の視聴率も評判も実は高かったそうだし、これは是非とも皆さんに再注目して頂きたい作品です。

なお『太陽にほえろ!PART2』終了時に催された「さよさらパーティー」には、ハワイで療養中の裕次郎ボスから声のメッセージが届いたり、松田優作さんが会場に駆けつけるというサプライズもありました。ショーケンさんと同じで『太陽』に関しては悪口しか言わなかった優作さんですが、ちゃんと愛しておられたんですよね。

その優作さんがファンへのメッセージを求められた際に放ったお言葉が「早く『太陽』を卒業して、映画館に来なさい」でした。いやぁーホント、耳が痛いですw
 

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