ハリソン君の素晴らしいブログZ

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『あぶない刑事』最終回

2019-02-01 12:00:05 | 刑事ドラマ'80年代









 
☆第52話『悪夢』(終)

(1987.9.27.OA/脚本=大川俊道/監督=原 隆仁)

港署捜査課に「殺されそうです、助けて下さい!」っていうSOSの電話が入るんだけど、折しもタカ(舘ひろし)&ユージ(柴田恭兵)は人質をとった銀行強盗犯を追跡中で、手が回らない。

他の刑事たちも多忙につき出動が遅れ、イタズラ電話だったことを祈りながら現場に駆けつけたところ、公衆電話ボックスのそばで男の他殺死体を発見しちゃうのでした。

で、後ろめたさを覚えながら男の身元を洗う捜査課の刑事たちを、何者かがライフルで襲撃して来ます。まずユージが狙撃されて負傷、交番の警官も射殺されます。

そして捜査課に「どうして助けに来てくれなかったんですか?」っていう恨み節の電話が掛かって来た直後、白いコート姿の男がライフルを持って署内に乱入し、さんざん撃ちまくった挙げ句に車で逃走。タカがバイクで追跡するんだけど、袋小路に追い詰めた筈なのに犯人は忽然と姿を消してしまいます。

電話の声は、最初に助けを求めて来た男の声と酷似しており、公衆電話ボックスで殺された男は、襲撃犯と同じ白いコートを着ていた……つまり、港署の刑事たちに見捨てられて死んだあの男が、幽霊になって復讐しに来た?

『あぶデカ』だから、それも最終回だからこそ許される奇抜なストーリーに、ド派手な銃撃戦、バイクチェイスなどアクションの見せ場、そしてユーモア、キザな台詞もてんこ盛りで、まさにこれはTVシリーズ第1期の集大成。文句なしに面白いです。

自殺を宣言した少女を必死に探し回る少年課刑事=カオル(浅野温子)のサイドストーリーもうまくリンクし、ちょっと不気味な本筋をなにげに緩和してくれます。この頃(第2シリーズで暴走を始める前)までのカオルは、ほんと可愛くて良かった。それがまさか後年、あんな事に……

それはともかく結局、犯人は本当に幽霊だったのか、あるいは全くの別人だったのか? その真相は謎に包まれたまま不気味に終わるんだけど、だからこそ「こんな楽しい遊びは無いね」なんて言っちゃうユージ。

あるいは、制服警官が犯人に撃たれたのを見て、タカがユージに言った台詞。「逮捕は諦めよう。退治するんだ」

こういう気取った台詞は、やっぱり舘ひろし&柴田恭兵でないと似合わない。『俺たちの勲章』でも『誇りの報酬』でもなく、やっぱり『あぶない刑事』でないとダメなんです。

気取った台詞って、言い換えればクサい台詞でもあります。'80年代以降のドラマでは「クサい」が完全否定されて、下手に言えなくなっちゃった。でも、ドラマを本当に面白くするには「クサさ」も必要なんですよね。それは「熱さ」に直結するものだから。'70年代のドラマは、まさにその「熱さ」こそが最大の魅力でした。

『あぶない刑事』の第1シリーズが抜群に面白かったのは、舘ひろし&柴田恭兵という「クサい」を格好良く見せられる俳優たちを得て、堂々と「クサい」ことをやれたからじゃないかと、今回あらためて思いました。

前作『誇りの報酬』は、時代に迎合して「クサい」を徹底排除した結果、特にシリーズ後半は全く「熱さ」を感じない無味乾燥なドラマになっちゃった、と私は思うワケです。

『あぶない刑事』は一見『誇りの報酬』をさらにオシャレにした作品なんだけど、実は『誇り~』には無かった浪花節の要素が根っこにあった。だから面白かったんだと私は気づきました。

熱い浪花節をスマートに表現することで、それを「クサい」と感じさせない。同じことを中村雅俊さんや根津甚八さんがやっても、多分うまくいかない。優作さんやショーケンさんにも似合わない。やっぱりこれは舘ひろし&柴田恭兵にしか出来ない芸当なんだと思います。

ところがTVシリーズ第2弾『もっとあぶない刑事』以降、その「クサさ(熱さ)」が排除されちゃった。『あぶない刑事』の何が大衆の心を掴んだのかを、創り手の人たち自身がちゃんと理解してなかった。だから「マグレの傑作」だって言うんです。

劇場版の最終作『さらばあぶない刑事』でようやく熱さを取り戻してくれたけど、ちょっと遅きに失した感があります。

やっぱり本当に面白い『あぶない刑事』は、映画『さらば~』を例外とすればテレビの第1シリーズだけ。その理由が、同時代に創られた『誇りの報酬』や、その原点『俺たちの勲章』と観比べることで、よりハッキリ解ったような気がします。

柳の下のドジョウを狙った『あきれた刑事』や『ゴリラ』がうまくいかなかったのも、多分その本質を見落としてたから。どんな時代であっても、やっぱり「熱さ」が無くちゃドラマは、特にアクション物は面白くならない。そういう事なんだと私は思います。
 

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