









2018年最大の話題作と言えばコレでしょう。(公開スタートは2017年11月)
映画専門学校「ENBUゼミナール」でワークショップの一環として製作された、製作費わずか200万円のインディーズ映画が、単館上映から口コミの評判により全国規模で公開され、200万人を超える観客動員を記録したという、前代未聞の「ジャパニーズ・ドリーム」映画。
監督・脚本・編集の上田慎一郎さんがテレビのバラエティーや報道番組で引っ張りだこの有名人となり、無名ミュージシャンによる主題歌がヒットし、ヒロインを演じた秋山ゆずきさんのセクシーグラビア(画像6~10枚目)が発掘され、登場キャラクターのフィギュアまで発売されちゃう異常事態。
もちろん私も「そんなに面白いの?」って大いに興味を引かれたけど、たぶん自分が求めてるものはそこに無いっていう予感はあったし、かつて同じようにインディーズ映画を創ってた立場として嫉妬の感情もありますから、劇場まで足を運ぶには至りませんでした。
でも、こうしてDVDがリリースされてすぐにレンタルし、新年1発目の日本映画レビュー作に選んだワケですから、やっぱどうしても気になる存在であったことは認めざるを得ません。
かくして、思いっきり冷めた目線で「そんな大した事ないやん」って書きたい気持ちを抑えつつ、出来るだけニュートラルな気持ちで受け入れようと自分に言い聞かせながら、自宅のテレビで観賞しました。
素直な感想を言えば、「なるほど!」「うまい!」の二言。良くも悪くも、それだけです。
「笑える」そして「泣ける」との評判もあったけど、別に泣けやしませんw でも笑えました。泣かされても私の評価には影響しないけど、笑わせてくれた作品はポイント高いです。そこはホント大事なところです。
もちろん、何より気になってたのは、映画の構造自体に大きな仕掛けがあるらしいっていう巷の評判で、上田監督もやたらネタバレを警戒されてましたから、よっぽど凄いどんでん返し、全く予測不可能な展開が待ってるんだろうなって、かなりハードルを上げて見ちゃいました。
(以下、ネタバレになります。先入観を持たずに観たい人は読まないで下さい)
これは「やっかみ」でも何でもなく、仕掛けそのものは大騒ぎするほどのもんじゃないと私は感じました。
要するに30分のゾンビ映画をワンカットで撮影するスタッフ&キャストたちの舞台裏を見せる二重構造で、やってる事は例えば黒柳徹子さんの『トットチャンネル』等で描かれた、撮り直しが出来ない生放送ドラマの舞台裏とよく似たドタバタ劇。
ただ、その見せ方がとにかく上手い。最初にその1カット映画を全編見せて、随所に「あれ?」「今のなに?」っていう布石を仕掛けといて、第2幕となる舞台裏描写の中でその謎を1つ1つ解いていく。
各キャラクターの言動が、30分映画の中と舞台裏描写の中とで全然意味が違ってくる面白さとか、キャラクターそれぞれの動かし方、性格設定の活かし方がとにかく上手い。それがいちいち笑いに繋がっていくところがまた憎い。
巷で「泣ける」って言われてたのはたぶん、ゾンビ映画の監督とその娘との確執と和解や、バラバラだった撮影チームが結束していく人情ドラマを指してると思うんだけど、その辺りの描写はありがちで「上田監督、置きに行ったな」と私は思いました。
けど、つくづく思わずにいられません。その「ありがち」で「あざとい」仕掛けこそが、現在(いや、昔から?)の大衆が一番求めてるものなんやなあって。
私が普段から忌み嫌う「謎解き」で観客の興味を引き、「仕掛け」で観客を酔わせ、「泣かせ」の人情劇で締めくくる「TOSHIBA日曜劇場」式商法は、やっぱ絶対的に強いんやなあって。
上田監督は、その「ベタ」を「ベタ」と感じさせない若い感性で、みごと不特定多数の老若男女を楽しませて見せた。たくさんの映画やドラマを観て研究し、吸収し、さらにアイデアを練りに練った努力の賜物でしょうから、それを皮肉ったりはすべきじゃないと思います。
でも、私はこの映画のリピーターには絶対ならないと断言できます。やっぱり予感した通り、私が求めてるもの=作者の魂の叫びみたいなものは、この映画に全く感じられないから。
大多数の観客が映画に求めるものって、やっぱアトラクションなんですよね。その世界でサクセスしたいなら、仕掛けをとことん練るのが一番の近道なんだって事が、この『カメラを止めるな!』大ヒットにより証明されたワケで、もはや魂の叫びなんか関係ない。私は映画監督への道を早々に諦めて大正解でした……なんて書いても負け惜しみにしかならないけど、ホントそう思います。
ただし、凡庸なアトラクションじゃ当然ダメだし、単に奇抜なアイデアで驚かせるだけでもダメ。本作を観る前は「あまりに注目されすぎて、上田監督は一発屋に終わるんじゃないか?」って思ってたけど、実際に観たら仕掛けそのものより、見せ方にこそ抜群のセンスとテクニックを感じたので、今後も彼はどんどん面白い作品を提供し、ヒットさせて行くんだろうなと思い直しました。
それはホントにドリームの実現で素晴らしい事なんだけど、いよいよ自分が本当に観たい映画やドラマは無くなって行くんやなあって、つくづく実感させられる2019年のお正月ではありました。
というより、
え、映像やってるのに見てないの?
あり得ない!
みたいな事を言われ続けて意地でも劇場に行かなかった作品です!笑
レンタルで出てから見ました。
良くできてるしすごく楽しめました!
しかし、なぜかみんなが言うほどの凄さを感じなかったのですが、なるほど、ハリソンさんの見解、かなり納得です。
ハリソンさんのを読んで、あらためて自分自身が感じたことの正体がわかりました。
日本はいま驚くほど落ちぶれているんですね。
この映画がただ面白い!
で注目されたのなら、面白いね!で終わったんですが、私がひっかかったのは、やたら2~300万円で作られたことがフォーカスされていること。
費用削減は確かに大切ですが、映画ってエンタメですよね?
低予算で作ったことばっかりがフォーカスされるとなんか貧乏くさくて冷めます。
一時期流行った海外の低予算ホラー映画の大ヒットの時とはノリが違う気がするのです。
あくまで今回の話題性としてはよいですが、これがスタンダードになってほしくない
もともとは興業映画ではないとはいえ、演者やスタッフにまともにギャラも支払われないのが当たり前とかに拍車かかかりそうで怖いです
日本の経営者さんたちがこの映画の成功を大喜びしてるみたいですが、映画の面白さより少ない予算で大儲けしたことばかりが注目されてるみたいに感じるので、悲しいです。
『カメラを止めるな!』が低予算臭をプンプンさせながらも大衆にウケたのは、もしかするとゾンビ映画=低予算っていうイメージがあらかじめ定着してたお陰かも知れず、例えば刑事物を同じ方法論で撮っても多分うまくいかないですよね。
会議室の連中は数字しか見ないから、そういう理屈が分からない。次のジャパニーズドリームは遥か未来まで待たなきゃ見られないかも知れません。
>先入観を持たずに観たい人は読まないで下さい
という言葉に従って、読まずにいました。
で、昨日観まして、この記事を読み直しました。
アトラクション。おっしゃるとおりだと思います。刹那的というか、その時おもしろければそれでオーケーみたいな。
確かに面白い。でも次また観ることはない。それでいいじゃないという人と、物足りなさを感じる人と。欲張りなのかもしれないけれど、私はやっぱり物足りない。
今さら『赤ひげ』とか『街の灯』とかと比べるのも野暮なのかもしれませんが。
人生いろいろ。映画もいろいろなのですね。
「謎解き」「泣かせ」「どんでん返し」等のカードをどう並べるか?っていう、ゲーム感覚の作品創り。そういうのもあって良いけど、そればっかりじゃ『街の灯』や『赤ひげ』で魂を揺さぶられた我々は到底満足できません。
すでに刑事ドラマはそんな作品ばかりになってます。本当にヤバイかも知れません。