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『グレートマジンガー』最終章―1

2018-11-13 00:11:04 | アニメーション









 
映画『マジンガーZ 対 暗黒大将軍』、そしてTVシリーズ『マジンガーZ』最終回で颯爽と登場し、無敵の強さを見せつけたグレートマジンガー。

それゆえに新番組『グレートマジンガー』の作劇にはかなりの苦労があったらしいこと&その理由は、以前の記事に書かせて頂きました。

要するにグレートマジンガーとそのパイロット・剣 鉄也(声=野田圭一)に弱点が無さ過ぎたって事ですね。

例えばマジンガーZの場合、ジェットスクランダーを開発して空を飛ぶだけで一大イベントが組めたのに、グレートは最初から飛べるワケです。

それで更に高速で飛べる「グレートブースター」なるメカが開発されたりするんだけど、観てる我々にとって大したカタルシスにはなりませんでした。

剣鉄也のキャラクターもあまりに「出来上がった人」過ぎて感情移入しづらいって事で、2クール目あたりから年齢設定が引き下げられ、髪型や眼つきがソフトな感じに描き変えられました。

更に、政治情勢など時代の変化により「都市を破壊する描写を控えるように」とのお達しもあったそうで、戦場が山間部中心になって緊迫感も出しづらくなっちゃった。

そんなこんなで、イケイケだった『マジンガーZ』の頃とは違った苦労を強いられた『グレートマジンガー』の製作現場。この最終章(4話構成)にしても、考えに考え抜かれたであろう痕跡が見て取れます。

まだガキンチョだった当時の私は、その内容をほとんど理解出来てなかったかも知れません。何しろマジンガーZ&兜 甲児(声=石丸博也)が再登場すること以外、全く記憶に残ってなかったんです。

大人になってからビデオソフトで観直して、私は衝撃を受けました。こんなにもシリアスかつ残酷な人間ドラマが描かれてたなんて!

それはマジンガーZが新たな強敵にズタボロにやられちゃうみたいな、言わば単純なお話とは全く違うんですよね。同じ挫折でも、グレートマジンガー&剣鉄也が最強のヒーローとして登場したからこその、かなり屈折した挫折なんです。

しかも、その引き金を引いたのが実は、帰って来た我らがマジンガーZ&兜甲児だった!という残酷さ。

果たして、グレートマジンガー&剣鉄也はどうなってしまうのか!? このレビューも4部構成でお届けします。


☆第53話『偉大な勇者!! ファイト鉄也・ダッシュ甲児!!』

(1975.9.7.OA/脚本=安藤豊弘/演出=大谷恒清/作画監督=中村一夫)

グレートマジンガーの初陣から1年の月日が流れ、宿敵=暗黒大将軍もグレートとの一騎打ちに敗れ、今やミケーネ帝国軍の陣頭指揮は新キャラ「地獄大元帥」に委ねられてます。

宿敵=グレートマジンガー&科学要塞研究所との長い戦争に終止符を打つべく、地獄大元帥は右腕=ユリシーザー将軍と共にとっておきの作戦を実行に移します。

それは、戦闘獣ドカイダーを東京に、戦闘獣ギランを大阪に送り込み、グレートマジンガーとビューナスAを個別に誘き出し、そのスキに戦闘要塞デモニカで科学要塞研究所を破壊するという陽動作戦。

そんな事が出来るんなら、もっと早くやりゃ良かったやんって思うんだけど、都市破壊の描写は控えるように言われてたから仕方ありませんw

どうせもう最後だから思いっきりやっちゃえ!って、番組スタッフが思ったのかどうか分かんないけど、グレートとビューナスが駆けつけた時には既に、東京と大阪は壊滅状態でした。

ただし、戦闘獣が街を破壊する過程や、逃げ惑う市民たちの姿はやはり描かれてないんですよね。だからイマイチ緊迫感が無い。(『マジンガーZ』の頃はちゃんと見せてました)

それはともかく、地獄大元帥も今回とっておきの戦闘獣を送り込んだらしく、東京のグレートマジンガーは苦戦します。

大阪に駆けつけたビューナスAを操るのは、炎ジュン(声=中谷ゆみ)。恐らくアニメ史上初と思われるアフリカ系アメリカ人と日本人とのハーフで、ボインぼよよ~ん!なヒロインです。

ビューナスAは戦闘スキルも高く、スクランダーと合体して空を飛んだり、光子力ビームを発射したり等、マジンガーZを彷彿させるスペックも備えてます。

もちろん光子力(おっぱい)ミサイルも備えており、今回はマシンガンの如く撃ちまくるんだけど(数百発撃ってる! あのか細い身体のどこから湧いて来るのか!?)戦闘獣ギランには通用せず、右腕と左脚を切断されてあえなく戦線離脱。

「待てギラン、もういい。直ちに東京のドカイダーの応援に行け」

ビューナスAにトドメを刺そうとする戦闘獣ギランを、ユリシーザー将軍はなぜか止めちゃうんですよね。

敵の戦力は1つでも排除するに越した事ないのに、この詰めの甘さ。意図不明ですw 昭和のヒーロー番組にはよくある事で、我々は子供ながらに「なんでやねん!」って、よくツッコんだもんです。

さて、ギランが東京に移動した為、グレートは2機の戦闘獣を相手にしなくちゃいけません。

初登場時に圧倒的な強さを見せつけられたもんで、たった2機を相手に苦戦するグレートマジンガーには違和感を覚えますが、1年の間に敵もグレートを研究し尽くしたって事でしょう。

マジンガーZがズタボロにやられるまで、すなわち息子=兜甲児がいよいよ殺されそうになるまで、兜 剣造博士(声=柴田秀勝)が人類の切り札=グレートマジンガーを出撃させなかったのは、こうして敵に研究されるのを防ぎたかったから。……って解釈するファンもおられたそうで、確かにそう考えると納得出来ます。

グレートが東京で足止めを食ってるスキに、地獄大元帥は戦闘要塞デモニカで科学要塞研究所を集中攻撃。バリアも破られ、爆撃の煽りを食らった所長=兜剣造が負傷(故障?)しちゃいます。

「いかん、このままでは科学要塞研究所が危ない!」

見かねてヘリコプターで駆けつけたのは、光子力研究所の所長である弓教授(声=八奈見乗児)。兜博士に代わって陣頭指揮を引き受けた弓教授は、アメリカ・ワトソン研究所に留学中の、あの人に電話をかけます。

「今、科学要塞研究所を救うには、君がマジンガーZで出動するしか無い!」

そう、あの大惨敗から丸1年、我らが兜甲児がいよいよ再登場です。とは言え場所はアメリカ。チャーター便ですぐに出発したとしても、日本に到着するまで何時間かかる事やら……

と思いきや推定・約5分後には、甲児を乗せたジェット機が富士山の上空に!w せめてもっとSF的なメカで、ワープ移動とかして欲しかった!

「やっと着いたぞ」

やっと?w

細かい事は置いといて、とにかく甲児はパラシュートで光子力研究所に緊急降下、すぐさまジェットパイルダーに乗り込みます。1年振りに見るマジンガーZの出動シーンに、当時の視聴者は全員、鳥肌を立てた事でしょう。

科学要塞研究所を守ろうとしたボスボロットとロボットジュニアはあっけなく敗退しますが、上空を見て歓喜の声を上げます。

「あっ、マジンガーZだ! 甲児お兄ちゃーん!!」

「ななな何っ? やっ、甲児だ!!」

ロボットジュニアとは、甲児の弟=シロー(声=沢田和子)に与えられた、言わば操縦訓練用のロボット。少年野球をモチーフにしたそのデザインは、一般公募により選ばれたもの。

だけどこれ、人気無かったですねw チビッコ視聴者が自己投影出来る(そしてオモチャが売れる)キャラクターにしたかったんでしょうけど、チビッコは(少なくとも当時の私は)そんなもんに自己投影したりしません。自己投影する対象は甲児や鉄也であり、乗りたいのはマジンガーなんだから!

それはともかく、ボス(声=大竹 宏)とシローの声援を受けて頷き、陥落寸前の科学要塞研究所前を通過するマジンガーZを、兜博士&弓教授の背中越しに捉えたショットの格好良さたるや!

「あなたが甲児を呼んだんですか……」

兜博士は1年前、切り札のグレートを出撃させて甲児の生命を救ったワケですが、彼がアメリカに旅立つまで姿を現しませんでした。サイボーグになった姿を晒して動揺させたくなかったのでしょう。

つまりこの父子は今回、甲児の幼少期以来の再会となり、それが剣鉄也の心を大きく揺らす事態へと繋がって行くのです。孤児だった鉄也にとって兜博士は、師弟関係を超えた「父親」そのものなんですよね。

「マジンガーZごときに何が出来る? よぅし、叩き落としてやれ!」

地獄大元帥はマジンガーZの姿を見ても動揺しません。そりゃそうでしょう、1年前のZはミケーネの戦闘獣に手も足も出なかったんだから。

でも、それにしたって地獄大元帥よ、あんたの正体はドクターヘルじゃなかったの? マジンガーZは誰よりも憎い仇であるからして、恨み言の1つ位こぼしても良さそうなもんです。

とにかくマジンガーZをナメてかかる地獄ジジイだけど、実はこのZ、1年前のZとは違うんです。

なぜか劇中では説明されず終いなんだけど、あれからZは装甲をグレートと同じ「超合金ニューZ」に変更、同時に大幅なパワーアップ改造が施されたっていう裏設定が、当時のテレビ雑誌に掲載されてました。

つまり今のマジンガーZは、グレートマジンガーと同等のポテンシャルを秘めてるワケです。そんな事も予想せずにZをほったらかしにしてたミケーネ帝国は、なかなかのオマヌケちゃんですw

一方、東京都心のグレートは、飛行ニユットであるグレートブースターを切り離し、戦闘獣に体当たりさせるというヤケクソな戦法で何とか勝利を収め、急いで科学要塞研究所へと駆けつけます。

「甲児くん!?」

「鉄也くん!!」

「来てくれたのか!? よぅし甲児くん、行くぜ!」

「おうっ!」

ファン待望の、ダブルマジンガー揃い踏みが遂に実現した瞬間です。

映画『マジンガーZ 対 暗黒大将軍』でも共闘はしてるけど、あくまでもグレートがZを助ける形だったし、テレビ版のグレートはZが完全に動けなくなった後の初登場でした。

「マジンガーZさえ現れなければ勝てたものを! だが今に見てろ~」

予想外のダブルマジンガー連携攻撃に、慌てた地獄ジジイ達はなすすべ無く退散して行きます。「マジンガーZさえ現れなければ」っていう台詞に、1年前に悔しい想いをしたZ&甲児のファンは溜飲を下げた事でしょう。

「今日の勝利は、キミのお陰だ」

「いや違う。みんなで力を合わせたからだ」

「ホントによく来てくれた。ありがとう」

この時の鉄也は、本当に心から甲児に感謝してただろうと思います。だけど1年前は完全に逆の立場だったワケで、心のどこかにわだかまりが芽生えたとしてもおかしくない。

そう、1年前のあの時こそが、グレートマジンガー=剣鉄也にとって最高の晴れ舞台だった。最も存在意義が認められた瞬間なんですよね。

「よっ、ご両人!」

ジュンの掛け声にみんなが笑い声を上げ、今回のところは大団円。だけど、やがて我らがヒーロー=剣鉄也がアイデンティティを見失い、それがとんでもない悲劇を招く事になるのです。

(つづく)
 

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