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前回、科学要塞研究所の危機を救うべく駆けつけた兜 甲児&マジンガーZの姿を見ても、地獄大元帥が大したリアクションをしなかったのが不満だと書きました。
地獄大元帥とは、マジンガーZによって地獄に送られたドクターヘルが、ミケーネ帝国の支配者=闇の帝王によって戦闘獣に改造され蘇った、暗黒大将軍に代わる大幹部です。
だからマジンガーZに対しては特別な畏怖、あるいは憎しみがあって然るべきなのに……って思ったワケですが、この第54話じゃ一転、冒頭からZの等身大人形(わざわざ造ったの?w)に激しく八つ当たりする、実に大人げない地獄大元帥の姿が描かれてます。
その様子を見ていた、ミケーネ諜報部を束ねるアルゴス長官が、大元帥に戦闘獣のレンタルを依頼して来ます。
「貴様がその様に興奮していては、返り討ちに遭うのは目に見えている」
だからアルゴス長官が代わりに指揮を執るよう、闇の帝王から命令が下った次第です。
「俺が行くのはあくまで貴様の身代わりだ。だから戦闘獣も貴様の物を連れて行くのだ。俺が必ずドクターヘルの恨みを晴らして来てやる!」
帝王からの命令とは言え、何となく男気も感じさせるアルゴス長官の申し出に、地獄大元帥も渋々ながら戦闘獣ゴーグラーの貸出を承諾します。
前番組『マジンガーZ』における、あしゅら男爵やブロッケン伯爵といった敵幹部たちのいがみ合い、罵り合いは実に無邪気で子供じみたもんでしたが、『グレートマジンガー』は敵組織もやや大人っぽい感じに演出されてます。
そんなワケで、敵が今回狙うのはマジンガーZ&兜甲児。主役であるグレートマジンガーの影がだんだん薄くなりつつあるのは、決して偶然ではありません。
☆第54話『打倒デモニカ!! 無敵のダブルアタック!!』
(1975.9.14.OA/脚本=藤川桂介/演出=大貫信夫/作画監督=上村栄司)
さて、甲児は死んだものと思ってた父=兜 剣造博士と、十数年振りに涙の再会を果たします。
「甲児……」
「お父さん……」
「……立派になったな、甲児」
剣造だけじゃなく、弟のシローや悪友のボス、ヌケ、ムチャらも甲児の帰還を手放しで喜びます。
科学要塞研究所で祝賀パーティーも開かれ、すっかりお祭りムードの中、我らが主人公=剣 鉄也だけは表情が冴えません。
「鉄也?」
パーティー会場からそっと出て行く鉄也を、パートナーの炎ジュンが追って行きます。兜、剣、弓といった苗字は実在しそうな気がしなくも無いけど、さすがに炎さんはおらんやろ!って思いますよねw
「おう、甲児。この際言っとくけどよ、あの剣鉄也にだけは負けねーでくれよ」
遂に最後まで本名が明かされなかったボスは、いつも鉄也にバカにされ、見返してやる機会を待ってたみたいです。
「いやぁ、彼には適わないよ。何て言ったって僕には1年のブランクがあるからな」
「なぁに、その分はボスボロットが応援するって!」
ボスに悪気は全く無いんだけど、鉄也が孤立しちゃう図式がこうして出来上がって行くワケです。
「やっぱり此処だったのね」
研究所の管制塔で独り佇む鉄也に、ジュンが声を掛けます。2人とも幼少期に兜博士に拾われ、プロの戦闘パイロットとして育てられた孤児なんです。
「私達には、此処が似合いの場所なのね」
「ふっ……俺達には何年経っても、巡り会う肉親なんて無いんだもんな」
親の顔も知らない2人にとって、兜博士は父親そのもの。実の息子である甲児やシローよりも、一緒に過ごした月日はずっと長いんですよね。
と、その時、管制塔のレーダーが未確認飛行物体の移動を捉えます。
「光子力研究所に向かってるわ!」
「まだ誰にも知らせるな。俺が調べて来る!」
祝賀パーティーを台無しにさせまいとする気遣いと、自分自身の存在意義を確認したい気持ちが、鉄也の中にあったのかも知れません。彼のアイデンティティは戦うことでのみ保たれる。
ところが、そんな鉄也のコンプレックスに追い討ちをかける事件が起こってしまいます。グレートマジンガーと合体すべく発進したブレーンコンドルが、途中でいきなり制御不能に陥り海中へと墜落、そのまま鉄也は気を失っちゃうのでした。
実はアルゴス長官の片腕=ヤヌス侯爵がパーティーの招待客を装い、研究所に潜入してブレーンコンドルに細工を施したワケです。
「ふふふ……アルゴス長官、我々はもう勝ったも同然です!」
そんなセコい細工しなくても、時限爆弾でも仕掛けて研究所ごと吹っ飛ばした方が早いと思うんだけどw、今回の目的はあくまでマジンガーZへの復讐なんですよね。
つまりグレートマジンガーさえいなければ、マジンガーZなど簡単に捻り潰せると敵は思ってる。ところがどっこい、前回も書いたように今のZは1年前のZとは違うんです。
素早い動きが特徴の戦闘獣ゴーグラーは、緊急発進したジェットパイルダーとマジンガーZがドッキングする瞬間を狙って攻撃を仕掛けて来ます。
パワーアップはしたものの、出撃プロセスにかかる時間だけはグレートに大きく劣るZ。敵はその弱点を突いて来るワケです。
ドッキングを妨害され、棒立ち状態のマジンガーZに戦闘要塞デモニカのミサイルが降り注ぎ、爆撃の衝撃でZは倒れちゃうんだけど、甲児はその瞬間こそチャンスと判断し、アクロバット飛行で見事ドッキングを成功させます。
英才教育を受けたプロのパイロット=鉄也が出撃に失敗した一方で、本来アマチュアの甲児がこうして天才的な操縦テクニックを発揮する。ますます鉄也のアイデンティティを揺るがせる、創り手の意図が感じられます。
とは言え、甲児にも1年間のブランクがあり、スピードが自慢のゴーグラーを簡単には仕留められません。逃げ回るゴーグラーを追うのに必死なマジンガーZを見て、アルゴス長官は一計を案じます。
「今だ! 光子力研究所を破壊し、科学要塞研究所を襲うのだ!」
ドクターヘルの仇討ち代行という本来の目的から逸脱し、アルゴス長官は二兎を追い始めちゃう。グレートマジンガーが出撃不可能という大チャンスですから、そんな色気が出ちゃうのも無理からぬ事です。
まだ実力を出し切れてないマジンガーZを見て、油断した側面もあるかも知れません。だけどZ=甲児には、捨て身で戦ってくれる仲間がいる事を忘れちゃいけません。
「ジャンジャジャ~ン!」
自分の口でファンファーレを奏でるのは、ボスを演じる声優=大竹 宏さんのアドリブなんだそうですw
「兜のヤツと力を合わせてヤツらをやっつけ、鉄也のヤツをギャフンと言わせてやるわよ!」
この、今で言う「オネエ言葉」も元はと言えば大竹さんのアドリブで、アニメキャラクターも演じる人によって創り上げられる側面があるんですね。
ボスボロットの参戦により、少なくとも戦闘獣の眼を撹乱させることは出来ます。やっぱ、持つべきものは友です。
一方、光子力研究所にある程度ダメージを与えた要塞デモニカは、続いて科学要塞研究所への攻撃を開始します。
「甲児! 早く戦闘獣を片付けてこっちに来てくれ。鉄也くんの出撃が遅れているんだ!」
「分かりました、お父さん。ようし、こうなったら空中戦だ!」
剣造からの無線連絡を受け、がぜん甲児は張り切ります。鉄也がアテにならず、甲児に運命が託される状況が前回から続くワケです。
急襲を受けた科学要塞研究所はバリアを破られ、ジュンは鉄也の救出に向かってるんでビューナスAも使えず、抗う術がありません。
「兜剣造、無駄な抵抗をやめて研究所を放棄せよ。もはや貴様たちがこのデモニカを防ぐことは不可能になったのだ!」
復讐代行にかこつけて奇襲作戦をモノにしたアルゴス長官ですが、天下を取った気分もこれまで。ジュンの活躍により鉄也&ブレーンコンドルが復活し、グレートマジンガーがいよいよ登場したのです。
「ドリルプレッシャーパンチ!」
らせん状のカッターを複数備えた必殺ロケットパンチに、アルゴス長官はあっけなく首チョンパされちゃいます。
「あっ、アルゴス長官!?」
「む……無念じゃ……」
片腕で愛人の(?)ヤヌス侯爵に看取られ、アルゴス長官は絶命します。二兎を追う者、一兎も得ず!
「うぬぬぅ~! 引き上げだぁ!!」
目の前で上官を殺されたヤヌス侯爵は逆襲に燃えるかと思いきや、迷わず撤収の道を選びますw そこはやっぱ女性らしく(?)現実的です。
「逃げる気だな? そうはさせねえぞ! ブレストバーン!!」
ようやく鉄也らしさが戻った所で、ゴーグラーを片付けたマジンガーZも駆けつけます。
「鉄也くん!」
「甲児くん、すまない。迷惑を掛けたな」
「ようし、2人揃ったところで同時攻撃だ!」
「オーケー!」
「ミサイル発射!」
「ネーブルミサイル!」
せっかくダブルマジンガーが揃ったのに、意外と地味な攻撃でw、逃げて行くデモニカに塩をまいた程度で今回はゲームオーバー。油断した幹部を1人やっつけたものの、グレートマジンガーが戦闘獣と戦わない珍しい回となりました。
そして前回に引き続き、マジンガーZがいなければ両研究所はどうなってたか分かりません。戦って勝利する事でしか自分の存在意義を見いだせない鉄也にとって、これは決して喜ばしい状況とは言えないでしょう。
そう、既に鉄也のアイデンティティは崩れ始め、心には闇が蠢いてる。
次回、我らがヒーロー=剣鉄也が豹変しますw
(つづく)
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