『幻星神ジャスティライザー』は2004年の10月から翌年9月までテレビ東京系列で全51話が放映された、東宝&ゼネラル・エンタテイメントの制作による特撮ヒーロー番組で、グランセイザーに続く「超星神シリーズ」の第2弾。
前作で12人もいたヒーローが3人に絞られ、戦国武士をモチーフにしてることから東映の『忍風戦隊ハリケンジャー』にちょっと似てたりします。
敵は今回も侵略宇宙人で、地球を護るライザー星人の「ステラプレート」により封印された魔神「カイザー・ハデス」を450年ぶりに復活させるべく、プレートの破壊を目論みます。そんな侵略者たちに立ち向かうのが、ライザー星人の魂が宿る「ジャスティ・クリスタル」の意思により選ばれた3人の若者たち。それがジャスティライザー。
そんな設定やキャラクター、メカ等の紹介をひと通り終え、ゲストキャラを迎えた通常運転のスタートを切るこの第9話&第10話(前後編)の脚本を書いたのが、先日『超星神グランセイザー』の記事でご紹介した#36『さらば相棒!』と同じ脚本家だったりします。この人のホンはなぜか私の感性とバッチリ合うんですよね。
前回までの物語で、ジャスティライザーとして侵略者たちと戦う運命を受け入れた主人公たちは、敵の目的が何枚かあるステラプレートの破壊であること、そしてそのプレートにオリオン座の模様が刻まれてることに気づきます。
敵がなぜプレートを破壊したがるのか、オリオン座と一体どういう関係があるのか、この時点ではまだ不明のまま。それを突き止めない限り先手の打ちようがなく、困り果てたライザーグレンこと伊達翔太(井阪達也)は、すぐ近所に「オリオン座博士」と呼ばれる老人が住んでることを知り、ライザーカゲリこと真田ユカ(神崎詩織)と一緒にワラをもつかむ思いで、博士の話を聞きに行きます。
アパートで独り暮らしのオリオン座博士こと二宮省蔵(田口主将)は、12年前に孫の健太と散歩に出かけた裏山で、オリオン座から来たUFOに健太をさらわれた、だから愛する孫を取り戻す為にオリオン座とUFOをずっと研究してるんだと語ります。
「行ってみるかね? 宇宙人が来たという証拠も、そこにある」
とうてい信じられない翔太たちを、二宮老人は健太がさらわれた現場である裏山へと案内します。そして二宮が秘密の隠し場所から取り出したのは、まさに翔太たちが早急に見つけなきゃならないステラプレートそのものだった!
それを狙って襲撃して来た敵の戦闘員「ザコール」たちを蹴散らした翔太とユカは、ライザーガントこと平賀真也(井坂俊哉)、そしてジャスティ・クリスタルの守り人である天堂澪(江口ヒロミ)とそのボディーガード=本宮麗香(小澤栄里)らと合流します。
まさにヒョウタンからコマ、敵に壊されるよりも先に翔太たちがステラプレートを手にしたのは、今回が初めてのこと。
合理主義のクールガイである真也は、すぐにプレートを二宮から回収すべきだと言いますが、熱血純情派の翔太は反対します。二宮はステラプレートをオリオン座星人の道標、つまり孫の健太を連れ戻しに来る為の目印だと信じてるのでした。
「どうであれ、プレートを持ってると危険だ」
「だからって俺たちが取り上げていいのか? お爺ちゃんにとってあのプレートは、健太くんが……」
「それはあの人の憶測に過ぎない」
「俺たちが言ってることだって全部憶測だろ!?」
「敵が狙ってる以上、強制的に回収もやむを得ない!」
「俺がお爺ちゃんを守るよ! だったら文句ないだろ!?」
ところが2人が口論してるスキに、二宮はプレートを持ったまま勝手に麗香の車を借りて、姿を消しちゃう。ヒーローたちに護られる一般市民ですら、どこか破天荒でファンキーな一面を持つキャラクターにしちゃうところが、私がこの回の脚本家に共感する一番の理由かも知れません。
そんな二宮老人が向かった先は、孫の健太が行方不明になった例の裏山。だけど当然ながら待ち構えてた敵の襲撃を受ける羽目になり、またもやジャスティライザーに救われるんだけど、プレートを渡したくない二宮は勝手に部屋へ戻って旅支度を始めます。
翔太がすぐに追いつきますが、二宮は決してプレートを手離しません。
「この国にもいくつかUFOの着陸基地があるんだ。そこへ持っていく」
「…………」
「どうせ疑ってるんだろ?」
「…………」
「力ずくで取り上げるかね?」
「そんなこと、しないよ」
「ほう……だったらどうする?」
そこで翔太が決意したのは、二宮老人をとことん信じてみるということ。健太が本当にオリオン座へ連れて行かれたのかどうかはともかく、二宮が本気でそう信じてることだけは確か。だったら彼の気が済むまで自分も付き合おうと決めたのでした。
で、ユカと真也の制止を振り切り、翔太は二宮と2人で旅に出ます。そこまでが第9話。
そして第10話では、二宮の娘夫婦(つまり健太の両親)が暮らす家を訪れたユカと真也によって、健太失踪事件の真相が明かされます。
12年前に二宮と健太が裏山へ出掛けた時、大きな地震が起きて、健太は崖崩れの下敷きになってしまった。そう、健太はもう、この世には存在しないのでした。
じゃあ、二宮はやはり嘘をついているのか?
「いや、嘘ではないんだ」
「どういうこと? 健太くんがその事故で亡くなった事実は知ってるんでしょ? それがどうして宇宙人のせいになっちゃうの?」
素朴な疑問をぶつけるユカ、澪、麗香の女子チームに、なぜか心理学にも詳しいらしい真也がクールに解説します。
「あの人は忘れたんだ。自分がプレートに夢中になったばっかりに、事故が起こってしまったことを」
12年前、二宮は裏山の神社に隠されたステラプレートを見つけ、それに刻まれたオリオン座の模様に気を取られて健太から目を離した時に、運悪く地震が起きてしまった。もし自分がそばにいたら、健太は死なずに済んだかも知れない。
「人は耐えられないショックや悲しみに直面した時、その記憶を別の記憶と置き換えてしまう事がある。無意識の内に……」
「宇宙人にさらわれたと思い込めば、健太くんはまだ生きてる事になる……そうしないと耐えられなかったのね」
そんな複雑な話を、メイン視聴者であるチビッコたちが理解出来たかどうか甚だ疑問ですがw、そんなことは気にせず突っ走っちゃうのが「超星神シリーズ」の素晴らしさ。理解出来ようが出来まいが、最終的に怪人や怪獣をカッコよくやっつけさえすりゃそれで良いのです。
真実を知らないまま二宮と行動を共にする、翔太の身をユカたちは心配するんだけど、そんなのどこ吹く風とばかりに2人は意気投合。翔太も早くに祖父を亡くしており、すっかり二宮を自分の「お爺ちゃん」みたいに思ってるのでした。
そしてクライマックス。都心に怪獣を出現させ、ユカと真也を誘きだした敵は、そのスキに翔太と二宮を襲撃。老人を護りながら独りで闘う羽目になった翔太=ライザーグレンは、さすがに苦戦して絶体絶命!
この時、二宮の脳裏に12年前の記憶が甦ります。健太に続いて、翔太まで死なせるワケにはいかない!
「おい、バケモノ! お前の目的はこれだろう!?」
「お爺ちゃん、何やってんだ!?」
「そんなに欲しけりゃ、取りに来い!」
「ダメだ、お爺ちゃん! 逃げるんだ!!」
二宮は翔太を助けるために、ステラプレートを敵に差し出したのでした。もちろん、それを待ってた敵はすぐさまプレートを破壊、その衝撃で二宮の体も数メートル飛ばされてしまいます。
「お爺ちゃんっ!? テメエェェェェーッ!!」
怒りに燃える翔太=ライザーグレンの活躍により、敵の怪人も怪獣も倒されたことは言うまでもなく、二宮老人も幸い軽傷だけで済みました。
けど、ステラプレートはまたしても破壊されてしまった。敵がどうこうより、二宮から心の支えを奪ってしまった事実に、翔太は凹みます。
「もういいんだ」
「よくないよ! あれが無いと、健太くんが……」
「わしは今、健太にサヨナラを言っておったんだ。あの子はもう、この世にいない。この12年、わしはその現実から逃げとった」
「そんな……」
「でも、もう逃げなくて良くなった。わしには、新しい孫が出来たんだ。そうだろ?」
「お爺ちゃん……」
「楽しかったよ、この二日間」
「俺だって」
「また遊びに来てくれるかね?」
「行くよ。またドライブしよう!」
これも『さらば、相棒!』と同じように、切ないけど温かく、爽やかな余韻が残るラストシーン。私はこういうストーリーが大好きなんです。
オリオン座博士こと二宮老人を演じた田口主将(たぐち かずまさ)さんは'01年~'02年の『仮面ライダーアギト』に警視庁捜査一課のベテラン刑事=河野役でレギュラー出演された名バイプレーヤーで、特撮ヒーロー物にも刑事物にも数多く出ておられ、現在も活躍されてます。
このオリオン座博士のキャラクターは好評で、シリーズ後半に再登場させる案もあったらしいけど、諸事情で流れたみたいです。彼にまつわるドラマはこの回で完結してますから、それで良かったんじゃないでしょうか。
ほか、翔太の父親で家電店を営む伊達源太郎役で中村有志さん、その店の店員=松平健一役で正名僕蔵さん、そして最初は敵でやがて仲間となるデモンナイトこと神野司郎役で波岡一喜さん等がレギュラー出演。正名さんと波岡さんは当時まだ無名の新人でした。
セクシーショットは天堂澪役の江口ヒロミさんです。
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