2014年公開の東宝配給による日本映画です。舞妓さんが1人しかいなくなった京都の小さな花街・下八軒の老舗お茶屋を舞台に、舞妓になる為に頑張る少女=春子(上白石萌音)の姿がミュージカル仕立てで描かれます。勿論ストーリーはハリウッドの名作『マイフェアレディ』がベースになってます。
世知辛い昨今、まだ無名の新人だった萌音ちゃんを主役に抜擢した懐の深さが、まず素晴らしいと思います。その分、長谷川博己、富司純子、田畑智子、渡辺えり、竹中直人、濱田 岳、高嶋政宏、岸部一徳etc…といった豪華キャストが脇を固め、チョイ役ゲストも小日向文世、妻夫木聡、大原櫻子、瀬戸朝香、加瀬 亮etc…と錚々たる面々です。
だけど私がこの映画のDVDをレンタルして観たのは、脚本も兼ねた周防正行監督の大ファンだからです。特に『シコふんじゃった。』『Shall we ダンス?』の2作は日本映画オールタイム・マイベスト10に入る大傑作です。
シンプルな成長ストーリーに、入念なリサーチによる業界(今回の場合は舞妓さんや言語学)のディティール描写を織り交ぜ、笑わせながらも最後に気持ち良く泣かせてくれる、ウェルメイドな純エンターテイメント路線が周防監督の真骨頂だと私は思ってます。
とにかく、シリアスとコミカルのバランスが私の好みにピッタリなんですね。いや、バランス感覚だけの問題じゃなくて、映画創りに取り組む姿勢が、そこによく表れてる気がするんです。
同じコメディーでも三谷幸喜さんはあまりにサービス過剰だし、宮藤官九郎さんはあまりに反則技が多過ぎる。このお二人に共通するのは、自分がウケたい!っていうエゴが強過ぎる点ですw 特に宮藤さんは、映画やドラマという媒体を軽く見てる(ようにしか見えない)姿勢が見え隠れします。
周防監督の笑いは、とにかく抑制が利いてます。絶対にやり過ぎないし、ストーリーや登場人物の心情を描くにあたって、その笑いが不必要と判断すればバッサリ切り捨てる潔さがある。
つまり、自分がウケることよりもキャラクターの心情をちゃんと優先してくれる。だから観客(少なくとも私)は素直に感動出来るワケです。「オレがオレが」の三谷さんや宮藤さんには不可能な事です。
今回の『舞妓はレディ』は、まるで’50~’60年代の日本映画みたいに落ち着いた雰囲気があって、今の若い人(特に『あまちゃん』にハマっちゃうような人)は退屈してリタイヤしちゃうかも知れません。たぶん周防監督はそれも承知の上で、とにかく「ちゃんとした日本映画を創るんだ!」っていう意志を、徹底して貫かれたんじゃないかと思います。
昨今のメジャーな日本映画(TVドラマも)のほとんどは国内でしかウケないし、10年~20年後には観るに耐えない代物になってるだろうと思うけど、『舞妓はレディ』はどこの国の人が何十年先に観ても変わらず楽しめる作品だと私は思います。
過剰なサービスや反則技で観客を笑わせるのは簡単です。(三谷さんや宮藤さんみたいなセンスがあればの話ですが) 周防監督みたいに徹底した正攻法で笑わせる方がずっと凄い。
と言っても『舞妓はレディ』はコメディ要素さえ抑え気味で、本当にストレートな成長物語です。竹中直人さんと渡辺えりさんが『Shall we ダンス?』の時と同じ扮装で踊ったりするお遊びはあるけどw、それも本筋が片づいた後のカーテンコールみたいなもんです。
そういう小ネタに頼らず、あくまでストーリーの内容で勝負する「ちゃんとした日本映画」です。 ヒロイン=上白石萌音ちゃんの初々しさも、ミュージカル部分(楽曲、歌声、踊り)も素晴らしかった。
まさに威風堂々! こんな日本映画が増えて行けば良いなあって、私は思いました。
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