まさか、この回のレビューが追悼記事になるなんて!
誰よりも明るく、とにかく役者バカで、役柄によって太ったり、太ったり、太ったりされてた渡辺徹さんw(ご本人の弁)
そんな徹さんが、いかに撮影現場のスタッフや共演者たちに愛されてたか、このデビュー作を観ただけでも伝わって来ます。
何ともやるせない気分にさせられた前回(スニーカー退場編)とは対照的に、観るたびに元気が貰えてホッコリさせられる、ラガー刑事=竹本淳二(渡辺 徹)の登場編。
とにかく若い! 細い! 可愛い! アイドル誕生の瞬間です。
☆第476話『ラガー刑事 登場!』
(1981.9.25.OA/脚本=長野 洋/監督=山本迪夫)
スニーカー(山下真司)の登場編が前任者=ボン(宮内 淳)の殉職編と繋がってたのと同じように、今回も冒頭に五代潤がゲスト出演。ゴリさん(竜 雷太)に新品のスニーカーを託します。
潤もかつて、ボンからスニーカーを貰ったのがキッカケで刑事を目指したのでした。
ストーリーは非常にシンプル。暴走族上がりのチンピラがイキがって煽り運転してたら、相手が暴力団組長のドラ息子(早坂直家)だったから驚いた!
ドラ息子は怒りに任せてそいつを射殺。そのとき、助手席に乗ってたガールフレンドの紀子(青木 純)が姿をくらませ、警察は目撃証言を取るため、暴力団は口封じで抹殺するために、それぞれ紀子の行方を追います。
スコッチ(沖 雅也)が一係の仲間たちと一緒に捜査する姿は、今回こそ本当に見納め。次回より再び欠場となり、かつて撃たれた古傷が悪化した設定で病床から何度かゲスト出演し、年明けの復帰作がイコール殉職編(病死だけど)になっちゃいます。つくづく残念!
さて、竹本淳二です。すでに七曲署入りが決まってはいるものの、出勤日はもうちょい先。
父親が殉職刑事で、母子家庭で育った設定はジーパン(松田優作)を彷彿させるけど、いまいち子離れ出来てないお母さん(石井富子)との関係は、ジーパンよりボンに近い感じ。
ボンの場合は大阪から付き添いで上京したお祖母ちゃん(演じたミヤコ蝶々さんのワガママで叔母ちゃんに変更)が相手だったけど。
で、TVニュースで事件を知った淳二は、その現場近くで犯人らしき男=ドラ息子を目撃したことを思い出し、勝手に1人で捜査を始めちゃう。
まずはドラ息子の取り巻き連中(つまりヤクザたち)に喧嘩を売り、片っ端からボコって全員を手下にするという、ちょっと前までの『太陽にほえろ!』じゃ有り得なかった荒唐無稽さ。
おまけに、保護するため紀子を追って来たロッキー(木之元 亮)を、熊……じゃなくてヤクザと勘違いし、タックルをかましたもんだから公務執行妨害罪で逮捕されちゃう。
これも登場編でテキサス(勝野 洋)を犯人と間違えて手錠を掛けた、ボンの逆バージョン。
『太陽〜』ファンはみんな生真面目だから、あまりに若い新入り(撮影当時19歳)とマンガチックな展開に引いちゃった人も多いようだけど、私は嬉しかったです。
そもそも、現実には有り得ない長髪刑事(’72年当時)の登場から始まった番組なんです。ショーケンさんもまだ20歳そこそこだったし、これが本来の『太陽にほえろ!』なんだと私は思う。
岡田プロデューサーも「原点回帰」だと仰ってたし、脚本を書かれたのは第1話と同じ長野洋さんだし。
ただ、マカロニやジーパンの時代と決定的に違うのが、生意気な新米刑事に対する先輩たちのリアクション。ほんと、全然違う!w
歴代の新人たちに洗礼パンチを浴びせてきた鬼軍曹=あのゴリさんが、ラガーだけは最後まで殴らなかった! もちろんムチャな潜入捜査を叱りはするんだけど、ちっとも本気で怒ってない。
スコッチも笑ってるしw
物怖じしない態度はマカロニやジーパンもそうだったけど、淳二はとにかく底抜けに明るいもんで、先輩たちも釣られて顔がユルくなっちゃう。
時は’80年代、もはやスパルタ教育の時代は終わったし、亡き父親とかつて同僚だった長さん(下川辰平)が淳二を幼い頃から知ってるお陰もあるんだけど、何より渡辺徹さんのキャラクターがそうさせたんでしょう。
徹夜明けで居眠りしても「寝かしといてやろうや」ですからね! どちらかと言えば新人を突き放すタイプだった山さん(露口 茂)まで「可愛い顔してまあ」とか言ってニコニコしてるし!
みんな、トシを食ったという事ですw 孫とまでは言わないにせよ親子ほどの年齢差ですから、こりゃもう仕方がない。
それともう1つ、女性視聴者を不快にさせない配慮もあったかも知れません。テレビがどんどん女性ファースト・オンリーになっていく、ちょうど過渡期にドック(神田正輝)やジプシー(三田村邦彦)がいたワケです。
さてさて、スニーカーから貰ったスニーカーを履いた淳二が、ドラ息子を追って疾走! ここで初披露される新BGM「復活のテーマ」が鳥肌立つほどカッコいい!
この’81年に新録されたテーマ曲の数々も、まさに「原点回帰」を宣言するような血湧き肉躍る楽曲ばかりで、後期『太陽にほえろ!』のイメージを決定づけるものになりました。
「ショーケンが全力で走る姿を撮るんだ」っていう最初期のコンセプトに立ち戻り、「とにかく走ってもらうから」ってプロデューサーから事前に言われてた渡辺徹さんは、クランクインまでの準備期間に一生懸命ランニングし過ぎて、こんなに痩せちゃったんだそうですw
実は太ってるのが本来の徹さんで、ぽっちゃりしたヤツが必死に走るのも面白いだろうって理由でキャスティングされたんですよね。(ご本人の弁)
クライマックスが陸上競技場なのも、たぶん第1話(後楽園球場)へのオマージュでしょう。
淳二の初手柄を遠くから見守る山さん、長さん、ゴリさんがもう、運動会に駆けつけた親戚のオジサンにしか見えませんw
歴代すべての新人刑事を見渡しても、ここまで温かく迎えられた人は空前絶後。翌年、大幅なメンバーチェンジでチームがぐっと若返りますから、これほど年齢差のある新人を迎えた例がほかに無いんですよね。
迷走期の泥沼からやっと抜け出たところでボス(石原裕次郎)が倒れて、空気が重くならざるを得ない時期にやって来た、めっぽう若くて明るいNEWフェイス。言わば「希望の光」がラガー刑事だった。……言い過ぎ?w
ラストシーンはこれまたボン登場編を彷彿させる、お母さんに付き添われての初出勤。
で、ロッキーに逮捕された際のタックルを褒められた淳二が、高校時代にラグビーをやってた経歴を明かし、スコッチに「お前、ラガーか」って言われた瞬間、竹本淳二=ラガー刑事になるワケです。
当人は不満そうだけど、ベテラン勢はホントに嬉しそうw やっぱり、希望の光です。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます