久々の「自分以外の人が好きな映画も観てみよう」シリーズです。例の「POPEYE」誌ではラッパーの宇多丸さんが推しておられるけど、それ以前にスタローン命の友人からも薦められてました。
すでに完結した筈の『ロッキー』シリーズ9年ぶりの続編で、ロッキー・バルボア(シルヴェスター・スタローン)永遠のライバルにして生涯の友だった、亡きアポロ・クリード(カール・ウェザース)の息子を主人公にした初のスピンオフ映画。ライアン・クーグラー監督による2015年公開の作品です。
友人に薦められ、世間で高い評価を受けてることも知りながら、しかも私自身が『ロッキー』シリーズのファンであるにも関わらず、観るのが今更になっちゃった理由は単純明快。主役がロッキー=スタローン先生じゃないから。
師匠としてロッキーも出て来るけど、闘うのはあくまでアポロの息子。あんな今どきの若者に感情移入できるとは思えないし、そもそもボクシングが好きなワケでもない。スタローン先生が口元を歪めながら闘ってナンボのシリーズじゃないの?ってどうしても思っちゃう。同じように先生が自分の息子にバトンを渡そうとした『ロッキー5』もイマイチだった事だし。
けど、実際に観たらすんなり感情移入しちゃいましたw 主人公のアドニス(マイケル・B・ジョーダン)はアポロが愛人とチョメチョメしてつくった隠し子で、父親とは一度も逢えないまま施設で育ち、アポロの正妻=メアリー・アン(フィリシア・ラシャド)に引き取られます。
やっぱりカエルの子はカエルで、アドニスもやがてボクシングの才能に目覚めるんだけど、夫を試合で殺されたメアリー・アンは猛反対。そのせいか地元では誰もボクシングを教えてくれず、彼は裕福な暮らしを捨ててロッキーのいるフィラデルフィアを目指します。
もうボクシングとは距離を置きたいロッキーは、アドニスに師事を請われても頑なに断るんだけど、彼の才能と情熱が本物であることが判ると放っておけず、覚悟を決めてコーチを引き受けます。
で、アドニスはアポロの息子であることを世間に隠してプロデビューするんだけど、世界チャンピオンのマネージャーに素性を知られてしまい、その引退試合の対戦相手に指名されちゃう。そう、かつてアポロの「かませ犬」に選ばれたロッキーのように。
コーチとしては反対しながら、やっぱり支援せずにはいられないロッキー。だけどその矢先に、医者から癌を宣告されてしまう。
愛妻=エイドリアンやその兄=ポーリー、そして師匠のミッキーもみんな癌を患い、化学治療でさんざん苦しみながら死んでく姿を見て来たロッキーは、怖じ気づいて治療を拒否。
そんなロッキーにアドニスが言うんですよね。「オレには死ぬ気で闘えって言ったくせに、あんたは逃げるのか?」って。「最後まで一緒に闘ってくれよ」って。
『ロッキー』シリーズをよくご存じの方なら、本作が原点の第1作を巧みに踏襲してるのにすぐ気づかれた事と思います。アドニスにもエイドリアン的な存在=歌手のビアンカ(テッサ・トンプソン)との出逢いとロマンスがあり、やっぱり彼女に救われ支えられるワケだけど、聴力を失っていく病を患ったビアンカもまた、無謀な闘いに挑むアドニスの姿に勇気をもらう。
もちろんロッキーも行き場を失ったアドニスを救ってるし、こうして人生最大の窮地で逆に救われてもいるという、独りでは成し得ないことをお互い支え合って達成していく姿がホントに感動的で、ヒーロー物じゃなく人間ドラマである『ロッキー』の本質をパーフェクトに捉えてる。
そこに昔のアポロ以上に憎々しい対戦相手がいて、猛反対してた筈のメアリー・アンから星条旗柄のトランクスが届いて、ロッキー対アポロ戦を凌ぐ大激戦が繰り広げられて、もうここしか無い!って場面であの「ロッキーのテーマ」が流れるんだから、そりゃ号泣するに決まってますw
特訓シーンでも流れなかったから、もうあえて使わないのかな?って思い込まされた上で、忘れた頃に満を持して、ホントここしか無い!って場面で来るんですよねw ライアン・クーグラー監督、タダモンじゃありません。
この映画、実はスタローン先生発の企画じゃないんだそうです。先生自身はもう続きをやる気が無かったのに、シリーズの大ファンだったクーグラー監督が話を持ち込み、熱心に口説いて重い腰を上げさせた。まるでアドニスがロッキーを動かしたみたいに。
『ロッキー』1作目がスタローン先生自身の物語だったのと同じように、この『クリード』もまたクーグラー監督自身の物語になってるワケです。……ってのは宇多丸さんの受け売りなんだけどw、ホントにそうですよね。いつも私がこのブログに書く、作品に「魂がこもってる」ってヤツです。
旧作を踏襲しつつ描写は遥かに洗練されてて、特にファイトシーンの迫力が凄いことになっており、格闘技映画としての進化も存分に味わえます。ヒロインのテッサ・トンプソン(『アベンジャーズ』シリーズでもご活躍!)も魅力的だし、高評価も納得の大傑作です。
すでに続編の『クリード/炎の宿敵』も'19年に公開されてますが、そちらは本作ほどの評価は得られなかった模様。アポロを死なせた張本人であるイワン・ドラゴ(ドルフ・ラングレン)の息子が次なる対戦相手ってことで、そりゃ燃えないワケにいかないストーリーがかえってベタ過ぎたんでしょうか?(その方が私好みかも知れませんw)
「時分の花」
このことについて、最近私自身もいろいろ思うことがあるのであります。悔しい気持ちはもちろんあるのですが、肩に乗ってる重しが以前に比べると軽くなってることにホッとしたりとか。
素直な気持ちで今の自分のありようを受け入れること。最近そういうことを考えます。
DISCASでこの映画、予約リストのてっぺんに入れさせていただきました。ハリソン君のレビューにはずれなしですもの!
ところが、何年か後に出版社への持ち込みで初めて上京し、そのとき時間潰しに名画座でロッキーを観直すと・・・
福田雄一監督の傑作連ドラ「アオイホノオ」ではこの逸話がマジメな顔でギャグをやり、その上で胸を打つ名場面に昇華されてました。
ハリソンさんの人生とロッキーシリーズの関わりにおいてこのようなエピソードはあるでしょうか?
例えばシリーズに出会ったのは「何歳ぐらい」で「何作目」で「そのときの感想」はどうだったのでしょうか?
また年齢を重ねるにつれ、「見方」が変わっていったりしたのでしょうか?
本格的に好きになったのは『3』を観てからで、『4』と『5』は劇場で観ました。人間ドラマよりアクションが好きなので、『3』『4』あたりが実は『1』『2』よりも好きだったりします。
スタローン命の友人は『1』で人生が変わるほどの衝撃を受けたらしいけど、私はそれほど『ロッキー』シリーズの影響は受けてないと思います。自分と重なる部分があまり無いんですよね。どちらかと言えば『ランボー』派かも?