私は元々『太陽にほえろ!』マニアでボンボン刑事(宮内 淳)推しだったもんで、『太陽~』卒業後に宮内さんが主役を張られた『あさひが丘の大統領』には大注目し、テレビ雑誌に載った『あさひが丘~』関連の記事を切り抜いて大学ノートに貼ったりしてました。
今回、レビューのオマケとして当時の番宣写真をいくつか載せようと思い、そのノートを何十年かぶりに掘り起こしたら、女の子向け雑誌『セブンティーン』に掲載された面白い記事が見つかりました。
当時『3年B組金八先生』第1シリーズに主演されてた、武田鉄矢さんと宮内さんの対談記事です。
『~金八先生』はその名の通り金曜夜8時にTBS系列で放映されてましたから、我らが日テレ『太陽にほえろ!』のまっこう裏番組であり、『あさひが丘~』と同じ学園物ジャンルでもあって正真正銘のライバルどうし。
だけど当時は『あさひが丘』こそが王道ど真ん中で『金八』はイロモノ的なイメージでしたから、この記事も二枚目スターとコメディアンの爆笑凸凹対談、みたいな趣向になってます。
お二方とも饒舌ですから普通に読むだけで面白いけど、結果的に『あさひが丘』は期待されたほどの人気を得られず日テレ「青春シリーズ」に終止符が打たれ、一方の『金八』は社会現象と言われるほど注目されて日本を代表する学園物シリーズとなる、いわば完全に立場が逆転しちゃう顛末を踏まえた上でこれを読むと、また違った面白さが味わえたりします。
レビュー記事にも書きましたが、あの頃=1980年あたりが、日本人の価値観とテレビ番組の内容が大きく変わっていくターニングポイントだったと私は思いますから、それを象徴する記事としても資料価値があるかも知れません。話の内容自体はチョー他愛ないんだけれどw
武田「宮内さん、先生の役って難しくないっスか?」
宮内「よく聞かれるんですけど、オレあんまり先生の役をやってるんだと意識してないんですよ。なんの役をやっててもそうだけど。だからどっちかっていうと、先生っぽくないんじゃないかなあ」
武田「でも、きょう宮内さんの大統領観たんですけど、ほら(OPタイトルバックで)校舎の上でスッと立って生徒をバーッと見下ろすでしょ。カッコいいんですよね。翼ひろげた火の鳥ですよ、あれは(笑)。あれをオレがやってごらんなさいよ、デパートの屋上の自殺男ですよ(笑)。なかなか飛び降りないで金網にしがみついてる自殺男ですよ」
宮内「そ、それほどでもないでしょ(笑)」
武田「いやあ、宮内先生見てると屈折せざるを得ないもんなあ。だいたいオレが先生の役やりたいと思ったのは、中・高生のころ。テレビでよく先生シリーズやってたでしょ」
宮内「『青春とはなんだ!』とか『でっかい青春』……」
武田「そう、それ。あれ観て学校の先生になってもいいなあと思ったのね。夏木陽介さんみたいに白い短パンはいて(笑)、颯爽と校庭のグラウンド走ってみたいと思いましたよ」
宮内「オレも憧れました。あの頃、ああいう先生必ずいると思ってた」
武田「同感。絶対いると思ってた。なしてか、不思議なことに必ず美人の先生がいてね(笑)。しかも下宿先には、とってもキレイなお嬢さんが下にいてねえ。そこのオバサンがまた、なんとか2人をくっつけようとする(笑)」
宮内「なんか、憶えてる場面が変なところばかりですね」
武田「ああいう先生、だいたい英語の教師なんですよね。宮内さんは?」
宮内「英語です」
武田「これだもんな(笑)。オレは国語。宮内さん英語。大統領と金八。屈折しちゃうなあ(笑)。宮内さん出身はどこですか?」
宮内「四国ですけど、実はオレ、大学、福岡の西南大学なんですよ」
武田「えー、じゃ海援隊の中牟田俊男と同じだ。学年で言うと1つ下かな。オレは福岡教育大なんスけど」
宮内「えー、じゃ、先生になる筈だったんだ」
武田「いや、4年で中退しちゃったんですよ」
宮内「オレ、2年で中退(笑)。じゃあ、中退どうしが先生役やってるワケだ」
武田「そういうことになりますねえ。しかし西南大学っていうと、ちょうど当時チューリップ有名だったでしょ。彼ら西南だから」
宮内「チューリップはもう当時大変な評判でしたよ」
武田「海援隊も大変な評判でした?」
宮内「海援隊、知らなかったなあ(笑)」
武田「おかしいなあ。あの頃は五分に張ってたんだけどなあ(笑)」
宮内「オレあんまり、そういう音楽興味なかったから分かんなかったけど、チューリップだけは凄かったですよ」
武田「チューリップだけは(笑)。どこに下宿してたんですか?」
宮内「博多駅のすぐ裏にウチの伯母さんの家があって、そこから通ってたんです。今の新幹線口の近くの都ホテルのそば。お菓子屋やってまして、そういえばタバコ屋もやってた(笑)」
武田「ムム。しかし、その辺よくうろついたなあ。空港行くとき、必ずまわる道の辺りですよね」
宮内「そう、あの広い道。しかし、こんなこと喋って読者の人わかるかなあ?」
武田「わからないでしょう(笑)。ほんと九州出身はバカだから、出どころ同じだとすぐ悪ノリしちゃうんですよ」
武田「ところで宮内さんは結婚してるんですか?」
宮内「いやオレは、自他共に認める独身主義だから」
武田「はー、そうですか」
宮内「独身の方がいいですよ」
武田「でも独身って、家に帰ってドアを開けると、プーンと灰皿の臭いが部屋に残ってるでしょ。あれがオレ、耐えられなくて結婚しちゃった」
宮内「オレはあの臭い大好きですよ(笑)」
武田「完璧なまでの独身主義者だ。でも宮内さん、いま29歳でしょ。もうすぐですよ。30になれば男は体力的にもガックリきて、嫁さん欲しくなりますよ」
宮内「いくつで結婚したんですか?」
武田「25」
宮内「早いですねえ」
武田「いやあ、オレは25になるまでさんざん女に捨てられたから(笑)。だから今のカカァに巡り会ったとき、これしかもういないと思ったもん(笑)。今後明るい展望なんて一切ないと思ったもん(笑)。とにかく強引でもいいから、この女つかまえておかないと、一発も出来ずに終わっちゃうかと思ったもんな(笑)」
宮内「まさか!?」
武田「まさかって問題じゃないですよ(笑)。オレはもう冗談から生まれた男だから、女に声かけるのだけは得意なのね。これだけは宮内さんより上手い。的中率がめっぽう低いだけで。とにかくズバリ言っちゃう。『しない?』って(笑)」
宮内「ちょっと、ちょっと」
武田「ふつう女の人だったら『しない?』なんていきなり言われたら『やめてよ』と言い返しますよね。そしたらすぐ『ごめんねえ、変なクセがあって』なんてトボケていい子に戻っちゃうワケですよ。ところがウチのカカァに『しない?』って言ったら、じーっと考えやがってさ(笑)。でもその迷ってる顔がすごく嬉しかったのね。ちゅうことはしてもいいっちゅうことですからねえ(笑)。なにせ動物的な男ですから。しかし、なんでまた宮内さん独身主義なんですか?」
宮内「オレは女の人は好きですよ。女の人には優しい男だと思ってるし。でも『愛してる』って言葉は、やっぱり一番好きな人にだけ言わなきゃいけない言葉ですよね。でも世の中には色んなタイプのステキな女の人がいて、これしかないって自分の頭の中で決められない」
武田「モテる人はこれだからヤンなっちゃう(笑)」
宮内「だから、この人と結婚しても、ぜったい破局が来ちゃうと思ってしまうワケですよ。それに結婚っていうのは、お互いにこの人とは一生離れたくないと思ってるふたりが作りあげるものでしょ。ということは、悪く言えばひとりの女性にがんじがらめにされなきゃいけない。それがイヤなんですよ。彼女しかいないっていうのは、すごくオレにとっては消極的な行動に思えてしまうんだなあ。なにしろオレは、がんじがらめって言葉が一番キライだから」
武田「これはかなり重症だ。宮内さんをワタクシが診察しまするに、男が結婚して5年ぐらいして辿り着く心境ってあるんだけど、その心境に独身の段階で達してしまってるのね。こりゃ当分、独身は続きそうですな」
武田「3年B組はほとんど中3の生徒だから、まだ色気のほうが無いからいいけど、そっちは高校生だから大変でしょ」
宮内「大変ですねえ。ウチは芝居を本格的にやってない女の子が多いから、どうしてもオレが教えることになるワケですよ。ところが相手の女の子は、自分のために必要以上にやってくれてるんだと思ってしまうらしいんですね。このあいだも、その子が自分で編んだマフラーを持って来てくれましてね、お礼に。これが中学生だったら、別に芝居教えたからって、どうも有難うございましたで済んじゃうでしょ。変なところで大人なんです、ウチの生徒は。マフラー貰ったときは嬉しかったけど」
武田「ウチは持って来ません(笑)。欲しいワケではありませんが(笑)」
宮内「3年B組はやっぱり中学生って感じですか?」
武田「やっぱりまだ中学生ですよ。このあいだ演技の中で性教育の場面がありましてね。男と女の構造についてなんですけど、『男子の精子は1日で7千万。3日で2億1千万。4、5日ほっとけば中国の人口と同じ数になってしまうんだぞ、凄いだろ』って言いながら、ひとりの男子生徒を指差して言ったワケですよ。『おまえ、いま股ぐら重くないか?』って(笑)。そしたらその生徒、演技できずに真っ赤な顔してうつむいちゃいましてねえ。やっぱ、恥ずかしい年頃なんでしょうね」
宮内「ウチはなにしろ高校生ですからね。完全に異性を意識してますよ。ロケバスに乗るでしょ。男子と女子はしっかりわかれて、かたまって座ってますよ」
武田「ほう」
宮内「オレは1年間いっしょに仕事するんだから、家族だと思ってやろうじゃないかって言ってるんだけど、なかなかうまくいかない。だから、わざと男子生徒の前じゃパンツ一丁になって着替えたり、女子生徒が着替えてるところにバッと入ってしまうようにしてるんですよ。だから、いま非常に生徒たちの間で反感を買ってましてねえ(笑)。オレは親心のつもりなんだけど」
武田「いや、それは宮内さんが悪い。宮内さんのルックスがいけない(笑)」
宮内「でも、そうしなきゃ生徒を叱るシーンなんてよそよそしくなって上手く出来ないと思うんですよ」
武田「でもそれが必要以上にひとりの生徒に集中すると、よくない。ひいきしてると言うんですよ」
宮内「あ、それはありますね。男子生徒はほったらかしてても大丈夫なんだけど、女子生徒がねえ」
武田「実際の学校の先生と同じですよ。ひいきしてるって言われるのが、一番つらい」
宮内「オレはじゅうぶん気を使って、まんべんなく生徒と話してるつもりだから、大丈夫だと思うんだけど」
武田「ま、ルックスでは勝てないけど、視聴率では大統領に負けませんゾ」
宮内「それは、絶対にゆずれない(笑)」
大統領、負けちゃいましたねw そんな結果は武田さんご自身も『金八』スタッフの皆さんも全く予想されてなかったのでは?
確かに『金八』はそれまでに無かったタイプの学園ドラマだし、海岸で夕陽に向かって走るみたいな「青春」描写がダサいとされる空気もあったにせよ、そんな過渡期の流れにたまたま乗っかれたのが『金八』で、乗り損なったのが『あさひが丘』ってだけのことで、内容の良し悪しは関係なかったんじゃないかと私は思います。あの時期は『太陽にほえろ!』でさえ存続の危機に瀕してましたから。
それはともかく、この対談は「モテる男VSモテない男」の代理戦争みたいな側面もあって面白かったです。私は宮内さんのファンだし『金八』という番組が憎いけど、この代理戦争に関してだけは武田さん側に加勢したいですw バレンタインデーに山ほどチョコを貰ってたようなヤツとは、一生解り合えないと私は断言出来ますw
おっしゃるように80年代が潮目の変換期だったように思えます。人間で言うと"男は40で顔を作る"?みたいな…。
今はいろんなジャンルが「老後」みたいに思えてなりません。
こうして古いドラマをレビューしたくなるのも単なる懐古趣味じゃなくて、そこに若々しいエネルギーを感じるからなんですよね。
どんどん金八が面白くなっていき、気がついたら金八にはまってしまいました。太陽が面白ければ金八には見向きもしなかったでしょうね。タイミングが良かったのだろうと思います。
今だったら大変なことになりそうですが。
自分が想像するに宮内さん子どもの頃はつらかったとのちに語ってましたし、昔の家庭環境が結婚観に影響することはよくあるので(自分も良くない環境で育ったので)本音は違うところにあるような気がしてます。もちろん大人になって自分で稼げるようになり、また新たな目標を見つけてそれに突き進むために一人を選ぶケースもあると思います。
木之元さんが回想してたことによれば、「太陽にほえろ!」の頃に事業がやりたいと言ってたようですし、その後旅番組で忙しい日々を過ごしていれば独身の方が気楽かもしれません。結婚して家庭を持てばそれなりの制約がありますから。
古い話になりますが、80年代半ばだったか後半に芸能記者から突撃インタビューを受けた宮内さんを偶然午後の情報番組で見たことがあります。
かつてマスコミをにぎわせたロ〇疑惑のM氏が拘置所にいるときに文通していた元モデルの女性が宮内さんと過去に交際していたということで、その女性について聞かれてましたが記者の質問に驚いて
「普通にいい子だったよ」と答えてました。
その女性もマスコミの仕込みでM氏としばらく文通して自称恋人を演じてたのかもしれませんが、今やそのことは消されてますね。(M氏はその頃夫人と離婚してその後よりを戻して婚姻届を出していた)
某ブログで奥様らしき方が写ってましたが、(写真が不鮮明ながらも)その当時の渦中の女性と似たような顔をしていたのが印象的でした。(同一人物かどうかわかりませんが)宮内さんが勝野さんと共演してた某飲料のCMに出てた女性も似たような顔をしていますし、宮内さんが好きなタイプはブレてないのかもしれません。
奥様とはどういう経緯で結婚されたのかも不明ですし公表もしてませんが、大切なご家族をさらさずに守ったことは宮内さんの優しさだと感じました。
良きパートナーと出会えてよかったと思います。
ロス疑惑の人の文通相手と宮内さん!っていう話はまったく知りませんでした。まあ、そりゃあたいそうモテたでしょうから、掘り起こせば色々とあったんでしょたう。自分はモテなくてホントに良かったですw
モテすぎてもつらいと聞いたことがあります。
昔某県の臨時職員してた時に某町の事務所から出張でやってくる正規公務員のカッコイイ独身男性がいましたが、なぜかなかなか結婚できずに30代半ばでお見合いでようやく結婚したと聞きました。品があって有名大学卒の素敵な方でしたが、真剣交際に至らなかったようです。女性からすれば同性から嫉妬されたり略奪される心配が尽きずにデートもままならずにかなりのストレスになるとのこと。まして田舎であれば噂は広まりやすいですからね。当時もたぶん彼女がいるだろうからと、告白をあきらめた同僚がいたほどです。それに結婚まで視野に入れたらカッコイイだけでは難しい。
宮内さんもモテすぎて決められなかったのと相手が逃げてしまったのと両方の理由があったのかもしれません。
だって、モテるモテないは置いといても、宮内さんとの脚の長さの違い。顔の作りの違い。もうスタートラインからまるで違う。世の中は不公平で当たり前なんだと、受け入れるしかないんですよね。なんのこっちゃw