hinajiro なんちゃって Critic

本や映画について好きなように書いています。映画についてはネタばれ大いにありですのでご注意。本は洋書が中心です。

once Upon a River

2022年02月04日 | 洋書
 テムズ川沿いにある小さな町を舞台にした大人のための童話。
 The Swan というイン(階下に食事のできるパブのついた宿)は、夏場は旅人(主にビジネストリップ)で賑わい、冬場は地元の人々が店主のストーリーテリングを楽しみに集まる。
 そこで語られる物語は毎日かわり映えのしない日常を過ごしている町の人々にとってはちょっとした刺激のあるものでした。
 いつものように皆が集まり酒を片手に店主の話に耳を傾けていると、突然扉が開き、ずぶ濡れの男が入ってくるなり倒れて意識不明になる。
 
 この雰囲気!
 小さな町の酒場。人々が語り合う。
 カンタベリー物語の世界じゃないですか!そしてさらに言うなら、私の大好きなフィリップ・プルマンの「The Clockwork 」のオープニングにそっくり!無条件でそそられます。
 私は何を隠そうパブの上にある宿に宿泊するのが大好き。
 この夏も北部の古い町ダラムでパブの2階に泊まりました。しかも川沿いをずっと歩き、猛暑の中迷いに迷ってようやく到着したホテル。
 部屋に荷物を放り投げ、真っ先に階下のパブで2パイント飲んだものです。そして観光に来たのに出かけるのが面倒くさくなり、そのままそのパブでのんびり食事してだらだら飲んだ後部屋でまったりしたのでした。
 私が泊った宿は残念ながらストーリーテリングもライブミュージックもなく、大画面でスポーツ観戦。しかもその日はパキスタン戦のクリケット・・・・まーイギリスらしさを味わったといえばそうですが、その日の夕食はトラディショナルからは程遠いムサカでした。

 作品に戻りますが、小さいながらなかなか事件がおこりがちなこの町のそのインでその夜ついに衝撃的な奇跡が起こります。
 そのことについてその場に居合わせた者たちがみな次々と人々にその光景を話すのですが、それを聞いた人々がまたその話をちょっと尾ひれをつけて別の人々に話していく、その様子がなんとも滑稽なような微笑ましいようなという感じで最初はクスっと来るのですが、のちのち色々と事件を引き起こしていくという展開です。
 この奇跡やその後の事件をきっかけに、町の人々それぞれの抱えているいろいろな問題が浮き彫りになり、目をそらしていたことと向き合うきっかけを掴んでいきます。
 そういった現実的な面と町に伝わる伝説的なものがうまい具合に融合された作品になっています。
 書けば書くほど魅力を損なっていきそうなのでここまで。

 8 out of  10  登場人物の魅力とストーリーに純粋に感動
 
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