hinajiro なんちゃって Critic

本や映画について好きなように書いています。映画についてはネタばれ大いにありですのでご注意。本は洋書が中心です。

The Song of Achilles

2022年07月31日 | 洋書
 ずいぶん前から評判が良いので購入して温存?していた作品です。
 私は昔から何度もギリシャ神話に触れてきました。ところがですよ、原作の一部、映画、漫画、ベースにしたフィクション、絵画、彫刻、シェイクスピアの舞台、どんな媒体であろうと全てきれいに忘れ去ることができるくらい、全く頭にも入ってこないし記憶に残らないというくらい相性の悪いものでした。
 里中満智子の漫画を読んだ時は「なかなか面白いじゃない?今度こそ少しは頭に残るかも」と思ったものです。パーシージャクソンだって一巻は読んだような気もするし、映画だって2作も観ています。息子が小学校でゼウスの息子のアレス役をやった時は衣装を作りながらアレスのキャラクターを調査したはずです。「トロイラスとクレシダ」なんて本場?ストラスフォードにて2回も鑑賞しているということは、原作も読んでいるし下調べはばっちりしてあったはずなのに、トロイの木馬のエピソード一つまともに覚えていません。でっかい木の馬を建ててその中に隠れていたらしい、くらい。誰がかも知らないけど。ギリシャ神話に関わることはほんとにほんとに何にも覚えていられないのです。
 そんな中うちの娘が大学の英文学科に入学した途端、「イーリアス」「オデュッセイア」を立て続けに読まされていると聞きました。
 タフすぎる・・・・可哀想に・・・もうちょっと簡単なのにして気分よくさせてあげればいいものを。先制パンチもいいところではないか。
 ところが、彼女を始めクラスメート達は、パーシージャクソン世代のせいなのか、はたまた高校までにそれなりの知識もあったのか、ギリシャ神話はそう苦にも思わずむしろ楽しんだそうです。
 そんなわけで、私が長年温存してきたこの作品は、精通している娘が先に読み、「すごく良いし、キレイな作品。英語も簡単だよ」ということなので、ついについに手が伸びたわけです。

 前置きが非常に長くなりましたが私の感想は、

 とうとう私もギリシャ神話の一部を多少覚えておけるかもしれない作品に出会うことができた!

です。奇妙な達成感を得ることができました。

 「イーリアス」の主人公アキレスの友人パトロクロスが語り手となった彼らが関係を深めるティーン期の様子とトロイ戦争についてが本作の内容ですが、簡単な英語で、しかもページターナーで本当に読みやすい感じで書かれています。
 現代風フィクションでありながら、語り継がれている神話のエピソードにもかなり忠実に書かれています。
 ほかのギリシャ神話に関する作品ももしかしたらそうなのかもしれませんが、結構感情持っていかれます。残虐なエピソードにウッとなり、ところどころ泣き、アガメムノンにイライラムカムカし、オデッセウスの話し方にslynessを感じながらもちょっとリスペクト、そしてまた泣き、ハラハラドキドキしているうちにあっという間に読み終わります。
 残念ながら私には文章の美しさとか物語の進み方に作家の技量が見て取れた、とかの印象は特になく、straightforward な描かれ方の作品だなと思いました。
 
 8 out of 10 

 私のようにギリシャ神話に苦手意識のある方、苦戦中の方はぜひこちらを読んで克服してみてはいかがでしょうか
 オーディオブックもお勧めです。


 聖書のストーリー同様ギリシャ神話もたくさんの芸術作品のモチーフにされています。
 読了後たまたま訪れたギャラリーにあったもので、この作品と関連していたものをピックアップしてきました。


 アキレス亡き後、Ajax とオデッセウスでアキレスの遺体を取り合っているエピソード


 アキレスがパトロクロスを殺された復讐のためにヘクタールを殺して馬車で引きずり回したことを知り、ヘクタールの遺体を引き取りに来たトロイの王プリアム。アキレスはこの王を遺体のために王自ら敵陣に一人で乗り込んできて頭を下げたことに敬意を表しそのまま帰したが、数年後アキレスの息子がトロイを落城させプリアムを殺すというシーン。

 これからはもう少しギリシャ神話に関する芸術作品も楽しめそうです。
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