評判通りの素晴らしい作品でした。
たった一人の家族(ちょっと語弊はありますが)の母親がガンで苦しんでいる少年コナーが、歯を食いしばりながら一日一日を過ごしている姿を丁寧に丁寧に描いてあります。
ただ、この作品にはコナーをめぐる出来事だけではなく、モンスターがコナーに語って聞かせる物語の中には、正しいことは本当に正しいのか、人の善悪は表面で判断していいものか、すべてのことは見る角度を変えると違ってくるのではないか、考えただけで行動はしなかった、でも考えたことは罪なのか、などなど哲学的なことがたっぷり。大人の私たちでも唸ってしまう、考え込んでしまう、是非考えて欲しいことがたくさん。
ちょっと意外だったのが、モンスターは問題を投げかけるだけではなく、答えを出しているんですよね。私はこのスタイルがほかと一味違って余計に良いと思った点です。
そして私、またしても本筋とはズレたことが気になりました。
コナーの母親は、コナーを元気づけるため、そして心の準備をする時間を与えるためだと思うのですが、万が一のことを決して彼に話しません。あらゆる治療に失敗しても「次のはきっと効果があるに違いないわよ」と言い続けます。
あなたが母親ならどうしますか?コナーは12、3歳です。
私なら絶対最初の段階で最悪の可能性について子供たちに話すことと思います。コナーの母親とは逆の形で時間をかけて心の準備をさせたいから。きっとその話題には触れたくないと避けられるでしょうけど、それでも何度も食い下がって、先のこと、どのように生きていって欲しいか(できれば押し付けがましいことは言いたくないけど、私のことだからなー・・・・)を話し合おうとすると思います。下の子にはどんな気持ちなのかしつこく訊くかもしれません。
なので、コナーの母親の対応にはいい意味でショックを受けました。私にはきっと思いつかないだろうし、きっとできない。
どちらが最善か、の答えはもちろんありません。当然その子供次第でしょう。でも自分の子供にはどちらの対応が適しているか。その判断はできるものでしょうか。
モンスターだったらどっちだと語るでしょうか。
たくさんの子供たちに読んで欲しいけれど、残念なことに手にする子は限られているかもしれませんね。
是非とも Captain R くらいの年齢の子の課題図書にして欲しいと思うくらいです。
イラストはあった方がいいけれど、なくても自分で想像するのもいいかもしれません。
最後に、意外とモンスターのコナーへの対応が荒治療(もちろん優しさのこもった)で驚きました。おばあさんの古時計がちょっと気になって引きずりました(笑)
自分が末期癌で、先が長くなさそうだとしたら…って、考えてみたのですが、子どもがまだ小さいから、大切なメッセージを伝えるというのはまだピンとこなくて、娘もまだ「死」が分かってないし。大きくなってからだったら、やはり話するかな。あ、でももし明日、自分が死ぬかもと考えたら、「もっと楽しい時間を作ってやればよかった」というのが心残りになりそう。そういうことを考えなくても済むように、とりあえず健康には気をつけようとは思っています。十代で親を失うって、辛すぎますよね。
お子様が小さいとますます悩みますね。小さいから伝えたくない気持ちもあるし、小さくても考える力も感じ取る力もあるだろうから決して無視できないというか、コミニュケーションを怠らない方がいいとも思うし。とにかく子供をおいていく、なんてこと考えたくないですね、本当に。
1日で聞いてしまいました。先が気になって。ちゃんと答えを出す終わり方、、、おっしゃる通りでした。最後の一行に涙。そして、ここで終わらせているのも、児童書にふさわしいですね。ナレーターさんが上手くて、挿し絵を声で読んでいるようでした。
普段読む本には、エピローグがほとんどあって、最後の最後までという感じです。The Husband's Secretのは、蛇足!と思ってしまいました。知りたくなかった後日談。
治らないかもしれない病気になったら、、、よく考えます。今は、もう黙ってフェイドアウトするつもり、と思っています。この小説を15年前に読んでいたなら、そうですね、その後のことを考えて本当のことを伝えたと思います。希望を持たせるように言って、叶わなかったら、そちらの方の傷の方がずっと深くて立ち直れないかもしれないのに。その時に支えてあげれる自分がいないのに。「あとはよろしく〜」状態にはできません。
YAの分類、そうなのですか。たまたまそういうのに当たっていなかったようです。ファンタジー系が現実からあまりにもかけ離れていることに、かえってfictionとして単純に楽しんでいます。
Miss Pの映画のトレーラー私も見ました。設定とストーリーラインは本と一緒でしょうか。映画は見たいと思わなかったです。三冊全部読で、辻褄合わせ的な最後に「謎は全て解けた」的なプロットで、登場人物の大人にほぼことごとく共感できませんでした。特に両親と親戚(アメリカ人)。これってアメリカ的?理解不能!と腹立たしくなりました(舞台はイギリス)。途中からはリスニングのためだけのお勉強。この本を読んだ子供達は、大人は信用できないと思いそう。と言うか、読む年齢そのものが微妙です。設定が映画化しやすかったのでしょうか。
A Monster Calls いいですよね!
飛行機の中で映画も観たのですが、そちらもすっごく良かったですよ。まだでしたらぜひ!
この作品は原作も映画も underrated 過ぎると思うんですよね~
私も真実を伝えて準備をする派ですが、この原作を読んでこの母親のやり方もありだなぁと思いました。ただそのために主人公は苦しんでしまうのですが、子供によってはプラスに働く場合もあるだろうなと。
難しい問題ですが、こうして本を読むことによって考える機会をもつことって素敵なことですよね。