馬は、三頭とも、馬尻をはたいて解放した。
船は、もうすでに海上にあった。二人は、胸の辺りまで朝の海に浸けて、たどり着き、船に上がった。
日の出には、まだ、間がある。東の空は、明るさを増していた。
船上では出航の掛け声で、指示が飛び交っている。帆柱には、横に長い帆が張られた。折からの山おろしの陸風をはらみ、その風に押されて、海面をすべり始めた。陸地が離れていく。方向が定まってきた。漕ぎ座の水夫たちが合図とともに、いっせいに櫂に取り付き漕走を開始した。船は、スパルタを離れていく。ヘレンは、安堵すると同時に、これからの不安を思わずには入られなかった。胸の内を惜別の情も通り過ぎていく。もう帰ることが出来ない、頬を一筋の涙が滴った。あとは、運を、船べりをたたく波に任せることにした。
パリスは、掠奪脱出行の成功に欣喜した。知恵をしぼり、段取りと手配りが効を奏しての出航であった。あとは湾を出て、一路、トロイへである。
パリスは、改めて、ヘレンの美しい横顔を見つめた。
船は、もうすでに海上にあった。二人は、胸の辺りまで朝の海に浸けて、たどり着き、船に上がった。
日の出には、まだ、間がある。東の空は、明るさを増していた。
船上では出航の掛け声で、指示が飛び交っている。帆柱には、横に長い帆が張られた。折からの山おろしの陸風をはらみ、その風に押されて、海面をすべり始めた。陸地が離れていく。方向が定まってきた。漕ぎ座の水夫たちが合図とともに、いっせいに櫂に取り付き漕走を開始した。船は、スパルタを離れていく。ヘレンは、安堵すると同時に、これからの不安を思わずには入られなかった。胸の内を惜別の情も通り過ぎていく。もう帰ることが出来ない、頬を一筋の涙が滴った。あとは、運を、船べりをたたく波に任せることにした。
パリスは、掠奪脱出行の成功に欣喜した。知恵をしぼり、段取りと手配りが効を奏しての出航であった。あとは湾を出て、一路、トロイへである。
パリスは、改めて、ヘレンの美しい横顔を見つめた。
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