『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第2章  トラキアへ  152

2010-02-19 13:43:08 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 海路でサロスの浜を目指している部隊は、アミクスが隊長の任についている。海路の部隊と陸路の部隊の両隊を指揮するのはオキテスである。彼らの三艘の小舟は、集落を大きく離れた地点を目指した。サロスの浜より1キロ以上西の地点に上陸した。釣り上げた魚を焼いて、夕餉の肴にした。彼らは、小舟を浜に引き上げ、ひっくり返して、その下に身を入れて休んだ。小舟一艘につき、一人の不寝番の兵を配しての寝である。
 オキテスの思いでは、海賊が襲ってくるのは薄明のころか、はたまた、その少しばかり前かと予想しての作戦構想であった。陸路部隊のタルトスには、海賊の間者と村人の中の内通者に注意を払うように言い、当然、その者たちの処分方法についても指示しておいた。
 サロスの集落は、浜から200メートルくらいの距離がある。オキテスの作戦構想での海賊の殲滅は、上陸時より1分以内の勝負である。それ以上の猶予時間はない、瞬時決着の作戦である。彼は敵を制した勝ち場面を描いて瞼を閉じた。
 有情の月は黒い船影を照らしていた。
 オキテスの部下の一人に変わり者がいた。変わり者と言っても特別の変わり者ではない。ただ彼の持ち物が変わっていたのである。彼は、1匹のハツカネズミを鳥かごの中に飼って持ち歩いていたのである。ハツカネズミの習性のひとつに、腹が減ったら行動する習性があり、鳥かごの中に造ってある車を動かすのである。