『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第2章  トラキアへ  155

2010-02-24 08:31:26 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アミクスの部隊に先駆けて進発した小舟4艘の20人は、サロマの浜の河口近くに待機している、海賊に対して万全の布陣であるといっていい。彼らも海賊の来襲に身構えていた。
 海賊船は、勢いよく浜に乗り上げ、奴らは浜に降り立った。その数40人余りと見える。賊頭の指図に従って、静かに集落に向けて歩を運び始めた。
 その時、海の中から30の海坊主の頭が現れた。先ず、賊の船の見張り役の者が海中に引きずり込まれて命が断たれた。海坊主の一群は、海賊らの背後におどりかかった。突如、月下の闇を裂く断末魔の叫び、海坊主らに呼応して、タルトスの部隊が前面から襲い掛かった。月下の静寂に干戈の響きと絶叫があがった。不意を衝かれた海賊は腰を抜かした。そこに待機していた20人が押し寄せる。80人の兵に包囲された海賊に逃げ道はなかった。一瞬にして、サロスの浜の砂は血を吸った。皆殺しである。オキテスは情け容赦はしなかった。一人残さず、その止めを刺した。オキテスの心情として、このような奴らを許すことは出来なかったのである。仕事は終わった。まだ夜明けは来ない。味方の損害は些少であった。傷を負った者5名を数えただけであった。兵たちは肩を叩き合って、静かに鬨を上げた。