『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY          第4章  船出  15

2011-11-25 08:53:28 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『お~お、それはいいな。イリオネス、どうだ。ご馳走になろう。時などどうでもよい』
 イリオネスはうなづいた。
 『では、言葉にあまえて、トリタス、ご馳走になる。いいのか』
 『よろしいですとも、よろしいですとも、直ぐ準備いたします』
 トリタスは二人の浜衆に言いつけて、小屋うちに昼めしの準備をさせた。
 トリタスを加えた四人が一列に並び、しげしげとエノスの浜の沖を眺めていた。三人にとって、この浜には、懐かしさがあった。
 この浜に上陸した日がふつふつと思い起こされた。建国の壮途につく船出の日が近いばかりに、あの日の事の感慨が深かった。
 トリタスは、統領の目にじい~っと見入った。彼は、統領の目に潤みを見た。そして、ふと感じた。
 『おや、これは何かあるな』
 彼は、それを言葉にせず、感じたことを心に閉じ込めた。
 昼めしの準備に取り掛かっていた浜衆から声がかかった。
 『統領、イリオネスどの、ギアスさんも、どうぞどうぞ、昼めしの準備が出来ました。席のほうへ、、、』
 四人はきびすを返して、トリタスの浜小屋に歩を運んだ。焼けた魚の香ばしい匂いが戸口に立った彼らを誘った。