『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY           第5章  クレタ島  46

2012-05-08 08:17:40 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 ギアスとアレテスが姿を見せた。
 『おはようございます』
 『おう、おはよう。オキテスは』
 『オキテス隊長は統領、軍団長と打ち合わせです』
 『判った。彼がいないか。まあ~、いいだろう、差しさわりのないことから打ち合わせを始める。一同揃っているな』
 パリヌルスは彼らとの目線を合わせながら一同を見回した。
 『諸君っ、おはよう。異国の小島の朝だ。気を抜くな。異変はお前らの命を奪うぞ、油断は禁物だ』
 言いながら、オロンテスのほうへ身体を向けた。
 『朝いちの用件は朝食の件だ。オロンテスよろしく頼む。ところでだが、今日の夕食、そして、明日一日の食事計画を作ってほしい。オキテスも加えて検討しなければならない。そういうことだ』
 オキテスが戻ってきた。
 『おう、パリヌルス、そして、居並ぶ諸君、おはよう。統領と軍団長には、天候の推移とそれに伴う行動、その他の情況を説明した。返ってきた答えは『任せる』のひと言であった』
 彼は言いながら空に目を移した。
 『雨粒を落とそうとしているこの曇天は、全くいかん。全天薄墨色の雲ではないか、どこにも明日が見えない。パリヌルス、どうする』
 『昼過ぎまで様子を見ようではないか』
 『君たち、今の話を耳にしていたな、昼過ぎまで様子を確かめた上で明日の事を決める。いいな。夕めし前に打ち合わせをやる。判ったか。では、今日の作業の指示をする。まず、船の点検だ。船は昨日の荒い波にもまれている、目に見えないところを念入りに点検してほしい。それから、明日からの糧食のことだ。これはオロンテスの指示で作業を行う。人員の配分はオロンテスのところへ半数をさいてくれ。以上だ。質問はあるか』
 『判りました』
 エノスから、この小島まで南下すると大気が肌にあたたかく感じられた。
 風浪の小躍りはおさまる気配がなかった。