『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY           第5章  クレタ島  49

2012-05-11 08:41:26 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『俺の予測か、答えはアカテスの言い分とそっくりだ。明日の風向きだ。我々にとって条件のいい風向きであってほしい。我々が『うちわ』で風を起こしてどうにかなるものではない。また、それを望んで祈って、そのようになるものでもない。判っていながら、そうせずにはいられない。まあ~、運の領域だ』
 『お前の言うとおりだ。南からの風だけはごめんだ』
 アカテスが口を挟んだ。
 『お前ら、どう考えている、それではちっとも理詰めではないな。この小島の立地だ、早朝は東からの風が期待できる。この風は、海上では北からの風にかわる確率が高い、我々の総意が、風を有利な条件に必ず変える。まあ~、そのように信じて疑わないことだ。必ず、何かが我々に味方すると考えることだ。そうは思わんか』
 『老アカテス、あなたの考えはなかなか理詰めだ。恐れ入った。アカテスお前の言うとおりだ。俺としたことがちょっと考えが浅かった。ひと言を祈っても、その集中が違う。実現の確率が高くなる。よく言ってくれた、有難う』
 『そうするより、仕方あるまい』
 『パリヌルス、明早朝、ミコノスに向けて出航だ。そのように意志を決めよう』
 『判った。意志は決まった。今日、これからの段取りをする』
 ユールスは、傍らに立って、怪訝な表情で海を眺めていた。彼の瞳からは希望の耀きが出ていた。
 『オキテス、いいか。迷わずそれでいく、いいな』
 『おうっ、パリヌルス、それでいい』
 二人は心を決めた。