『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY           第5章  クレタ島  51

2012-05-15 08:26:15 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスは各船を見て廻った。担当者から報告を受け、入念にチエックを入れた。船に詳しい己の観点から不具合がないかを慎重に確かめた。小さな不具合も見逃さないように念を入れた。不具合と思われる点に付いては、再度の点検と修復を指示した。また、そのよう場合には、修復技術等の指導も行った。パリヌルス、オキテスの二人にとって出航までの時間は貴重であった。二人は我を忘れて立ち回った。
 二人の心境は、少ないといえども一国の民であり、彼ら全員の命の安全と目標の達成を言葉にこそしていないが約束しているという自負であった。
 午後には、雲の切れ間から太陽が望めるようになってきていた。陽の姿が見えれば時間の推移が身体に感じられる。パリヌルスは空を見上げた。
 『うっう~ん、この調子なら進捗が予定した時間通りにうまくいく。よかろう』
 オキテスの各船の点検が終わろうとしていた。
 『おっ、オキテス、作業の進み具合はどうかな。船長、副長らを集めて打ち合わせをやりたい、もう、いいか』
 『おっ、パリヌルス、ご苦労。もういい、みんなを集めよう。お前、統領と軍団長、呼びに行ってくれるか』
 『判った。俺は、統領と軍団長を呼んでくる。場所はここでやろう』
 天候は確実に回復に向かっていた。目を射る陽の光はまぶしかった。