イリオネスは、暗闇の中でパリヌルスの目をジイ~ット見つめた。彼は話を続けた。
『俺たちが住み暮らしているこの世で正しく北を示すものはというと、それは星だ。俺は星座の大荷車ではなく、小荷車の引手の星を基準にして鉄の棒の指し示す方向を確かめた。鉄の棒の全てがこの星の方角を指し示した。今度は、その鉄の棒で遊んだ。北を指している鉄の棒の端に南を指している鉄の棒の端を近づけた。すると、どうだ、互いがひきつけあって仲良くくっついたのだ。今度は、反対側の北を指す鉄の棒の端を近づけたのだ。鉄の棒はくっつかずに近づけた鉄の棒の端から逃げるのだ、つるし下げている鉄の棒の北の端は、近づけた鉄の棒の北の端とが反発しあった。また、ある日のことだが鉄の棒の一本をもってもの思いにふけっていたのだ。俺は鉄の棒で足元の砂を掻きまぜていた。不思議だったな。塵かほこりかわからんが、鉄の棒の先にくっついている。その時の俺には分からなかった。あとから知ったことだが、くっついたのは砂の中にある砂鉄というものだそうだ。俺は驚いた。正直言って目の玉が飛び出すくらいに驚いた。あの鉄の棒で砂鉄という鉄を採集するといったことを知った。パリヌルス、判ったかな。ここまで言ったことがあの鉄の棒の由来だ』
イリオネスは話を締めくくった。
『そうでしたか、あの鉄の棒の不思議さをよく理解しました。いろいろ聞かせていただいて、ありがとうございました。いやあ~、勉強になりました』
『そうか、鉄の棒の不思議さが判ったか。まあ~、そういうわけで、あの鉄の棒の利用方法を考えて造ったのが『方角時板』なのだ』
『そうでしたか、今お聞きしたことを肝に、いい『方角時板』の製作をやります』
『おう、パリヌルス、鉄の棒の話はそれまでだ。まだ何かこれは聞いておきたいということがあるか』
『充分に聞きました。しかし、それにしてもあの鉄の棒の利活用の用途を知っているのは我々だけなのですかな』
『それについては、まだ広く知られてはいないと思っている。あれは銅の鉱山で採掘したもので、それを製錬、鋳造したものだ。その鉱山では銅は採掘するが、あの鉄の鉱床からの採掘はやってはいない筈だ。その後どうしているかは判ってはいない。そいうことだ。ずいぶん長く話したな。夜も更けた、休もう』
『軍団長、ありがとうございました。お休みなさい』
パリヌルスは、深々と頭を下げて場を辞した。
歩を運びながら空を見上げた。澄み切った初冬の星空である、星は降るように瞬いていた。彼は感無量の心境で星空を仰いだ。
『何かを祈ってみたい』そのような感情が湧いて消えた。
『俺たちが住み暮らしているこの世で正しく北を示すものはというと、それは星だ。俺は星座の大荷車ではなく、小荷車の引手の星を基準にして鉄の棒の指し示す方向を確かめた。鉄の棒の全てがこの星の方角を指し示した。今度は、その鉄の棒で遊んだ。北を指している鉄の棒の端に南を指している鉄の棒の端を近づけた。すると、どうだ、互いがひきつけあって仲良くくっついたのだ。今度は、反対側の北を指す鉄の棒の端を近づけたのだ。鉄の棒はくっつかずに近づけた鉄の棒の端から逃げるのだ、つるし下げている鉄の棒の北の端は、近づけた鉄の棒の北の端とが反発しあった。また、ある日のことだが鉄の棒の一本をもってもの思いにふけっていたのだ。俺は鉄の棒で足元の砂を掻きまぜていた。不思議だったな。塵かほこりかわからんが、鉄の棒の先にくっついている。その時の俺には分からなかった。あとから知ったことだが、くっついたのは砂の中にある砂鉄というものだそうだ。俺は驚いた。正直言って目の玉が飛び出すくらいに驚いた。あの鉄の棒で砂鉄という鉄を採集するといったことを知った。パリヌルス、判ったかな。ここまで言ったことがあの鉄の棒の由来だ』
イリオネスは話を締めくくった。
『そうでしたか、あの鉄の棒の不思議さをよく理解しました。いろいろ聞かせていただいて、ありがとうございました。いやあ~、勉強になりました』
『そうか、鉄の棒の不思議さが判ったか。まあ~、そういうわけで、あの鉄の棒の利用方法を考えて造ったのが『方角時板』なのだ』
『そうでしたか、今お聞きしたことを肝に、いい『方角時板』の製作をやります』
『おう、パリヌルス、鉄の棒の話はそれまでだ。まだ何かこれは聞いておきたいということがあるか』
『充分に聞きました。しかし、それにしてもあの鉄の棒の利活用の用途を知っているのは我々だけなのですかな』
『それについては、まだ広く知られてはいないと思っている。あれは銅の鉱山で採掘したもので、それを製錬、鋳造したものだ。その鉱山では銅は採掘するが、あの鉄の鉱床からの採掘はやってはいない筈だ。その後どうしているかは判ってはいない。そいうことだ。ずいぶん長く話したな。夜も更けた、休もう』
『軍団長、ありがとうございました。お休みなさい』
パリヌルスは、深々と頭を下げて場を辞した。
歩を運びながら空を見上げた。澄み切った初冬の星空である、星は降るように瞬いていた。彼は感無量の心境で星空を仰いだ。
『何かを祈ってみたい』そのような感情が湧いて消えた。
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