『トロイからの落人』 FUGITIVES FROM TROY 第７章 築砦 229

　二人がしておかねばならないことが決まった、浜に立って情景を見ながら雑談をかわした。小島の方角から舟艇が浜を目指している。
　『おう、舟艇が帰ってくる』
　『ちょうどいいではないか。小島の状況を聞いてみる』
　舟艇が浜に乗り上げてきた。
　『おう、ギアス、ご苦労。小島の方はどうしていた？』
　『あ～、おはようございます。小島の連中ですか、彼らの半数は、漁に出ていきました。アレテス隊長もギョリダも漁の陣頭指揮です』
　『ほう、そうか』
　二人は顔を見合わせ、か～るく頷き合った。
　『よし、ギアス。おまえ、午後の予定はどうなっている？』
　『今日の午後は、小島へ夕めし前に明日のパンを届けるようセレストスから要請が来ています』
　『そうだろう。明日は、早朝からキドニアに出かける。オロンテスとは打ち合わせは終わっているのか』
　『はい、その件はオロンテス隊長と打ち合わせは済んでいます』
　『そうか、段取りはできているのだな。それでは、お前、昼を終えたら俺たちにつきあえ。セレストスの用向きの時間には帰ってくる。俺たちは小島にようがある、彼らが出向いている漁の結果に用があるのだ。それを終えたら、俺たちを乗せて小島を一巡する、洋上から島を見ておく、それと肝腎の用件は、二人で舟艇をよく見ておきたいことだ。それと、日を改めての上の事だが、ギアス、お前を交えて舟艇に関する意見交換をやりたい。そいうことだ』
　『判りました』
　『はっきり伝えておく、俺たち二人の間では、舟艇の建造計画が進んでいる。そいうことだ』
　『納得しました』
　二人の強い意志がギアスに伝わった。
　『ギアス、今日の午後の予定、判ったな。宜しく頼む』
　『判りました』
　三人の打ち合わせは終わった。空を仰ぐ三人、陽の南中までは、まだ間がありそうであった。

　樹木調査隊の一行は、マクロスとソリタンを先頭に二列縦隊で広いとはいえない原野の中に延びている道を歩んでいる。野を渡って過ぎる風は海に向かった吹いていた。一行の歩運びは、黙して語らず、私語が交わされることなく慎重であった。