『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  501

2015-04-06 08:19:10 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『パルモス浜頭、在宅かのう?』
 ガラガラ声だがよく通る、間をおかず答えが返る。浜頭が奥から姿を見せた。
 『おう!スダヌス、無事到着したか、待っていたぞ!元気であったか?』
 『おう、元気そのものだ。パルモスこそ元気であったか?』
 二人は肩を抱き合った。肩から手を離す、じい~っと目を合わす。
 『おう、元気元気!元気のやり場に困っている。それにしてもイデオスだが、いい若者になったな、話のうまい若者になった。お前の名代が務まる。話は聞いた、了解している。夕飯を皆でどうだ?準備はできている。一行をお連れしろ。屋敷では大人数が入りきらん。春の宵だ、野焼きをやろう』
 これも大声の受け答えであった。
 『パルモス浜頭、それはありがたい!そこまでやってくれるのか、感謝も感謝、大感謝だ。これは手土産だ、受け取ってくれ』
 スダヌスは、持参した大袋を浜頭に手渡した。
 『こんな大荷物、物は何だ?』
 『パンだ。旨いパンだぞ、味わってくれ』
 『ほっほう、ありがとう。遠慮せず、頂く』
 浜頭二人、邂逅の挨拶が終わった。スダヌスはイリオネスの方へ身体を向けた。
 『イリオネス、どうする?この際だ、浜頭の好意に甘える、それでいいな。統領以下一同を連れてきてくれ』
 『判った。そちらの事はお前任せだ。宜しく頼む』
 『判った。任せておけ』
 二人の呼吸は合った。
 パルモス浜頭は、浜衆たちを動員して野焼き食事の場をつくり、山と積んだ薪に火を入れて盛大に燃やした。総員25人余りとみての焚き火の野焼きの食事場である。食材が運ばれてくる、準備が整った。
 アヱネアスらは、陸にあげたヘルメスの見張り番二人を残して、食事場に姿を見せた。スダヌスはパルモスにアヱネアスとイリオネスを会わせた。夕飯の場はにぎわった。イリオネスはスダヌスにヘルメス艇の事を話題にしないようにと耳打ちした。彼は戸惑ったが納得した。
 『おう、スダヌス』と浜頭が声をかけてくる。
 『なんだ?』
 『一行の寝所の事だが、浜小屋のひとつを準備してある、広いとは言えんが、それでこらえてくれ』
 『そうか、それは有難い。5日間にもなると思がいいのか?』
 『大丈夫だ。俺の心配りだ甘えろ!スダヌスが俺にしてくれたことを考えるとこれでも返したらん。そういうことだ』
 『判った。ありがとう』
 『明日からのイデー山行き、気を付けて行って来い。どうせ明日は早立ちだろう、早立ちの世話は出来ないが許せ』
 『判った。昼過ぎまでにイデーの山の麓まで行く予定にしている』