クリテスは、何かと気を使いながら寝についていた。イデー山登頂予定を宿坊の主人に伝えてある。彼は思いのほか疲れていたらしい、寝つきも早く、ぐっすり寝入っていた。
宿坊の主人は、頃合いを見計らって、戸口に近い位置に寝ているクリテスの肩に手をかけてゆすった。
『クリテス殿、もうそろそろですよ。空には月がありますよ!』
小声で告げる、目を開けるクリテス、音を忍ばせて、戸外へ出る、空を仰ぐ、頭上の銀月は、白がねの光を振りまいていた。彼は雀躍した。
『よしっ!一同を起こす!』
彼は部屋に戻った。イリオネス隊長に起床を促した。次いでスダヌスを揺り起す。イリオネスが声をかけてくる、
『クリテス、朝行事の間があるか?』
『充分にあります!』
『そうか、よし!』
一同が目を覚ます、アヱネアスに声をかける。
『頭(かしら)、時間です』
イリオネスは、アヱネアスをどう呼ぼうかと寝て考えた結果の呼称であった。彼らは、朝行事にと小川へ向かった。
『うえっ!冷てえ!』
彼らは、流れる川の水の冷たさに驚いた。その冷たさが彼らの心を引き締めた。
朝行事を終えて、足ごしらえを整えた。スダヌスは全員の足ごしらえを点検した。
『よし!いいぞ!』
『イデオス、これはダメだ!ちょっとゆるい、締めなおすのだ。しかっり結べ』
『おう、イリオネス、一同、万端、OKだ!』
『私、ちょっと宿坊の打ち合わせをしてきます』
彼はクリテスを伴って、宿坊の主人と二言、三言打ち合わせた。イリオネスと目線を合わせる、手振りを加える。
イリオネスは一同に出発を告げて、クリテスに合図を送った。
『月があります、松明なしで登頂に出発します。登山口の三叉路まで、休みなしで行きます。出発!』と告げて、力をこめた一歩を踏み出した。
先頭を松明を入れた袋を背にしたクリテス、続いてアヱネアス、イリオネス、今日の食料を入れた袋を担いでイデオス、殿りをスダヌス、一行五人は、言葉を交わすことなく粛々と歩を進めた。
月は照り、星は輝く、イデーの山体は黒く大きく身じろぎもせず、峰筋は月照に輝き、山裾のソニアナの集落の甍が凍てついて目に映った。冬の名残りの風景であった。
『へえ~、これが山から見下ろす夜の風景!?』
彼らにとって、この情景はめずらしかった。
ソニアナを出てから2時間、記憶に残る登山口の三叉路に着いた。小休止する。一行は歩んできた道を振り返っていた。目に映る夜の眺望であった。
クリテスは、山行の<こうであろう>を簡単に語って説明した。
宿坊の主人は、頃合いを見計らって、戸口に近い位置に寝ているクリテスの肩に手をかけてゆすった。
『クリテス殿、もうそろそろですよ。空には月がありますよ!』
小声で告げる、目を開けるクリテス、音を忍ばせて、戸外へ出る、空を仰ぐ、頭上の銀月は、白がねの光を振りまいていた。彼は雀躍した。
『よしっ!一同を起こす!』
彼は部屋に戻った。イリオネス隊長に起床を促した。次いでスダヌスを揺り起す。イリオネスが声をかけてくる、
『クリテス、朝行事の間があるか?』
『充分にあります!』
『そうか、よし!』
一同が目を覚ます、アヱネアスに声をかける。
『頭(かしら)、時間です』
イリオネスは、アヱネアスをどう呼ぼうかと寝て考えた結果の呼称であった。彼らは、朝行事にと小川へ向かった。
『うえっ!冷てえ!』
彼らは、流れる川の水の冷たさに驚いた。その冷たさが彼らの心を引き締めた。
朝行事を終えて、足ごしらえを整えた。スダヌスは全員の足ごしらえを点検した。
『よし!いいぞ!』
『イデオス、これはダメだ!ちょっとゆるい、締めなおすのだ。しかっり結べ』
『おう、イリオネス、一同、万端、OKだ!』
『私、ちょっと宿坊の打ち合わせをしてきます』
彼はクリテスを伴って、宿坊の主人と二言、三言打ち合わせた。イリオネスと目線を合わせる、手振りを加える。
イリオネスは一同に出発を告げて、クリテスに合図を送った。
『月があります、松明なしで登頂に出発します。登山口の三叉路まで、休みなしで行きます。出発!』と告げて、力をこめた一歩を踏み出した。
先頭を松明を入れた袋を背にしたクリテス、続いてアヱネアス、イリオネス、今日の食料を入れた袋を担いでイデオス、殿りをスダヌス、一行五人は、言葉を交わすことなく粛々と歩を進めた。
月は照り、星は輝く、イデーの山体は黒く大きく身じろぎもせず、峰筋は月照に輝き、山裾のソニアナの集落の甍が凍てついて目に映った。冬の名残りの風景であった。
『へえ~、これが山から見下ろす夜の風景!?』
彼らにとって、この情景はめずらしかった。
ソニアナを出てから2時間、記憶に残る登山口の三叉路に着いた。小休止する。一行は歩んできた道を振り返っていた。目に映る夜の眺望であった。
クリテスは、山行の<こうであろう>を簡単に語って説明した。