夕食の場にいる者たちの耳と目がスダヌスに集まる。彼らと目線を合わせるスダヌス。彼はもったいぶった口調で話し始めた。
『さあ~さ、皆の衆、よ~く見てくれ!』
一拍の間をとる。
『今、この棒の両端が指し示している方角は南と北である。こちらが北、その反対、こちらが南だ。これをこうやって回転させる。やがて、この棒の回転が止まる』
棒を回転させるスダヌス、吊り下げているヒモによりがかかる、棒が反転する、そして、停止する。
『さあ~、よく見てくれ!棒の指し示す方角を見てくれ!先ほどと一緒の方角、南北を指し示して止まっている。これを何回、何十回やろうが、回転が止まると、この鉄の棒は南北を指し示して止まるのだ。全く不思議な鉄の棒なのだ。判っていただけたかな』
そのように言って、スダヌスは場を見まわした。
『浜頭、俺もこの棒を使って雲の垂れ込めた日の航海、星のない夜の航海に使っている。この鉄の棒一本で方角を間違えることなく船を航行させているといった具合だ。解っていただけたかな?』
彼は、浜頭の目をじい~っと見つめた。
『浜頭、実に重宝な頂き物だぞ。喜んで受け取れ!俺も使い始めて、半年になる、これ一本で夜の航海の不安が全くない』
『ほっほう、その様な不思議な鉄の棒か。ありがたく頂戴する』
浜頭は身体をアヱネアスの方に向け、
『アヱネアス殿イリオネス殿、これを頂戴します。ありがとう。厚く礼を言います』
浜頭は深々と低頭した。
『ところで、もう一つ。この板の使い方は如何様に?』
『おう、その板の使い方か、それはイデー山へ行ってきてから、じっくり説明してやる。それまで待て。その板でおおよその時間の見当がつくのだが、陽ざしがないと使うことができない。俺がイデー山から帰ってきてから説明してやる』
『よしっ!スダヌス、イデー山からのお前の帰りを待つ。それとも何かな、ギアス船長は山行に一緒するのか?』
『いえ、山行には行きません。船の留守番役です』
『こんな重宝な頂き物をして、その効用を一時でも早く知りたい、それが人情というものだ。明日にでも、ギアス船長から使い方を教わる。スダヌス、それでもいいだろう』
『おう、それでもいい。ギアス、浜頭に懇切、丁寧にわかりやすく教えてやってくれ』
『判りました』
そんなこんなで夕食の集いは終わった。
浜頭が松明を手にして、一同を浜小屋へと案内した。
『ギアス船長、松明はそこだ。やすむときは火の用心に充分注意だ。気を付けてくれ』
『判りました。浜頭、今日は大変にありがとうございました。馳走になりました。お休みなさい』
浜頭は、居宅へと引き上げていく。
春暖の候の浜小屋での雑魚寝、彼らの寝つきは早かった。
『さあ~さ、皆の衆、よ~く見てくれ!』
一拍の間をとる。
『今、この棒の両端が指し示している方角は南と北である。こちらが北、その反対、こちらが南だ。これをこうやって回転させる。やがて、この棒の回転が止まる』
棒を回転させるスダヌス、吊り下げているヒモによりがかかる、棒が反転する、そして、停止する。
『さあ~、よく見てくれ!棒の指し示す方角を見てくれ!先ほどと一緒の方角、南北を指し示して止まっている。これを何回、何十回やろうが、回転が止まると、この鉄の棒は南北を指し示して止まるのだ。全く不思議な鉄の棒なのだ。判っていただけたかな』
そのように言って、スダヌスは場を見まわした。
『浜頭、俺もこの棒を使って雲の垂れ込めた日の航海、星のない夜の航海に使っている。この鉄の棒一本で方角を間違えることなく船を航行させているといった具合だ。解っていただけたかな?』
彼は、浜頭の目をじい~っと見つめた。
『浜頭、実に重宝な頂き物だぞ。喜んで受け取れ!俺も使い始めて、半年になる、これ一本で夜の航海の不安が全くない』
『ほっほう、その様な不思議な鉄の棒か。ありがたく頂戴する』
浜頭は身体をアヱネアスの方に向け、
『アヱネアス殿イリオネス殿、これを頂戴します。ありがとう。厚く礼を言います』
浜頭は深々と低頭した。
『ところで、もう一つ。この板の使い方は如何様に?』
『おう、その板の使い方か、それはイデー山へ行ってきてから、じっくり説明してやる。それまで待て。その板でおおよその時間の見当がつくのだが、陽ざしがないと使うことができない。俺がイデー山から帰ってきてから説明してやる』
『よしっ!スダヌス、イデー山からのお前の帰りを待つ。それとも何かな、ギアス船長は山行に一緒するのか?』
『いえ、山行には行きません。船の留守番役です』
『こんな重宝な頂き物をして、その効用を一時でも早く知りたい、それが人情というものだ。明日にでも、ギアス船長から使い方を教わる。スダヌス、それでもいいだろう』
『おう、それでもいい。ギアス、浜頭に懇切、丁寧にわかりやすく教えてやってくれ』
『判りました』
そんなこんなで夕食の集いは終わった。
浜頭が松明を手にして、一同を浜小屋へと案内した。
『ギアス船長、松明はそこだ。やすむときは火の用心に充分注意だ。気を付けてくれ』
『判りました。浜頭、今日は大変にありがとうございました。馳走になりました。お休みなさい』
浜頭は、居宅へと引き上げていく。
春暖の候の浜小屋での雑魚寝、彼らの寝つきは早かった。