『統領、ご用件、終わりましたか?下山の刻限ですが』
クリテスが声をかけた。スダヌスとイリオネスが目でうなずき、アヱネアスと目線を合わせる。
『戻るとするか』
一行は、神域を去るについて、立木まばらの広場で神殿に向けて横一列に並び丁寧に低頭した。
神官と巫女は、この様子を遠くから見ていた。
『彼らは、想い定めたことを必ず為す』と頷いていた。
アヱネアスにとって貴重な時間であった。彼が想像していた神託授けのカタチとは全く違ったカタチでアヱネアスに渡された。人智が遠く及ばない遠い未来に到る建国○百年の大計ともいえる事であった。
『今があるからこそ未来へと続きます。貴方の未来が扉を開きます』
そして、
『祈り。祈りは力です。そして、それは願望なのです』
アヱネアスは深く感じ入った。
デロスでの神託、そして、今日の神官との語らい、これらが神の意志であろうか、摂理の至妙な計画なのであろうか、アヱネアスは判じかねた。神とは何なのだ、それについても判じかねた。
考えるべきを考え、捨てるべきを捨てると意に決めた。
デロスで聞いた神託をとんでもない答えに結び付けて、その神託を解しかねていたのである。今日のゼウスの神託は、神託ではなく人間が物事に対処していく姿を知らしめていた。それが人間の心の性善に反する行為であろうがなかろうが遂行していかなければならないと説いていた。遂行の躊躇はしてはならないと語らいは解いている。それは人類の歴史という超大な枠の中で針の一穴にもあたらないと説いていた。アヱネアスの今後においても対する相手と干戈を交えるに到っても相手に負けることは許されないとも説いていた。引き分けに到れば事後において必ず勝ちを得るべしと説いていた。勝ちとは人徳をもって得ることができる。闘いとは干戈をまじえることだけが闘いではない。平和への立案計画でもできると語っていた。
一行は、整った歩調で帰路のゆるいのぼり坂道に歩を進めていく、アヱネアスは確かな一歩を踏み出して歩を進めていく。心中に神官との語らいの要点を浸み込ませながら歩を運んだ。
彼らは、イデー山頂への三叉路に着いた。陽は沈み切って、宵の藍色が一行を包みつつある。スダヌスが一行の疲れ具合を各自に確かめた。
『おう、お前たち、なかなかの健脚じゃのう、重畳!クリテス、大丈夫か、隊列はこのままでいいな』
『え~え、よろしいです。松明は暮れきってから火をつけましょう。2本入っています安心しててください。ここからは道が下り坂となります。歩速が速くなります。足運びに注意してください。半刻くらいでソニアナに着くと考えています.では、、、』
クリテスが先頭にたって歩を踏み出した。スダヌスが声を出した。
『今夜は月はないのか』
『月のかけらも見えません。しかし、明朝の山行に月が出てくれれば、ラッキーということになるのですが。そろそろ、松明に火をつけます』
『判った!いいだろう。一本は先頭のクリテス、一本は最後尾の俺が持つ、それでいいな』
クリテスは火付け用具の一式を使って松明に火をつけた。
松明は、彼らの歩む道を明るく照らした。
クリテスが声をかけた。スダヌスとイリオネスが目でうなずき、アヱネアスと目線を合わせる。
『戻るとするか』
一行は、神域を去るについて、立木まばらの広場で神殿に向けて横一列に並び丁寧に低頭した。
神官と巫女は、この様子を遠くから見ていた。
『彼らは、想い定めたことを必ず為す』と頷いていた。
アヱネアスにとって貴重な時間であった。彼が想像していた神託授けのカタチとは全く違ったカタチでアヱネアスに渡された。人智が遠く及ばない遠い未来に到る建国○百年の大計ともいえる事であった。
『今があるからこそ未来へと続きます。貴方の未来が扉を開きます』
そして、
『祈り。祈りは力です。そして、それは願望なのです』
アヱネアスは深く感じ入った。
デロスでの神託、そして、今日の神官との語らい、これらが神の意志であろうか、摂理の至妙な計画なのであろうか、アヱネアスは判じかねた。神とは何なのだ、それについても判じかねた。
考えるべきを考え、捨てるべきを捨てると意に決めた。
デロスで聞いた神託をとんでもない答えに結び付けて、その神託を解しかねていたのである。今日のゼウスの神託は、神託ではなく人間が物事に対処していく姿を知らしめていた。それが人間の心の性善に反する行為であろうがなかろうが遂行していかなければならないと説いていた。遂行の躊躇はしてはならないと語らいは解いている。それは人類の歴史という超大な枠の中で針の一穴にもあたらないと説いていた。アヱネアスの今後においても対する相手と干戈を交えるに到っても相手に負けることは許されないとも説いていた。引き分けに到れば事後において必ず勝ちを得るべしと説いていた。勝ちとは人徳をもって得ることができる。闘いとは干戈をまじえることだけが闘いではない。平和への立案計画でもできると語っていた。
一行は、整った歩調で帰路のゆるいのぼり坂道に歩を進めていく、アヱネアスは確かな一歩を踏み出して歩を進めていく。心中に神官との語らいの要点を浸み込ませながら歩を運んだ。
彼らは、イデー山頂への三叉路に着いた。陽は沈み切って、宵の藍色が一行を包みつつある。スダヌスが一行の疲れ具合を各自に確かめた。
『おう、お前たち、なかなかの健脚じゃのう、重畳!クリテス、大丈夫か、隊列はこのままでいいな』
『え~え、よろしいです。松明は暮れきってから火をつけましょう。2本入っています安心しててください。ここからは道が下り坂となります。歩速が速くなります。足運びに注意してください。半刻くらいでソニアナに着くと考えています.では、、、』
クリテスが先頭にたって歩を踏み出した。スダヌスが声を出した。
『今夜は月はないのか』
『月のかけらも見えません。しかし、明朝の山行に月が出てくれれば、ラッキーということになるのですが。そろそろ、松明に火をつけます』
『判った!いいだろう。一本は先頭のクリテス、一本は最後尾の俺が持つ、それでいいな』
クリテスは火付け用具の一式を使って松明に火をつけた。
松明は、彼らの歩む道を明るく照らした。