『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  542

2015-06-09 08:23:22 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『あっ!父上、お帰りなさい』
 アヱネアスは、ユールスを浅瀬から抱き上げて、少々深みのところへ移った。彼は、7日ぶりに息子を抱いた、その成長を抱いた。
 朝行事を終えて、ユールス、父アンキセス、アカテスの4人で朝食をともにした。イデー山山行が話題となった。みやげに持ち帰った大皿を一同に見せた。父とアカテスが驚きの目を見張った。 
 『ややっ!これはこれは見事な大皿ですな。これは驚いた。このような見事な大皿ははじめて目にします。眼福です。統領、ありがとうございます』
 朝食を終えてアヱネアスは父に声をかけた。
 『親父殿、イデー山の神殿でのことはあとからゆっくり話す。貴方の考えも聞きたい』
 『判った。待っている』
 アンキセスは、瞬きとうなづきでこれに答えた。
 アヱネアスは場から立ち上がる。朝陽を受けて、明るい宿舎の戸口に立った。庭先で待っていたイリオネスが朝の挨拶をする。
 『おはようございます。昨晩はよく眠れましたか?』
 『横になったが、なかなか寝つけなかった。お前はどうだった?』
 『あ~、私ですか、私は単純な出来です。横になったと思ったら、たちまち眠りました。朝まで熟睡です』
 『それはよかったな。よく眠る、起床時の頭の冴えが違う。うらやましいことだ』
 『そうですかな』
 『よしっ!イリオネス、行こうか。午前中は各所を見まわる。午後は報告を聞いて打ち合わせをやる。今はそうでもないが、切所に立つときが必ず来る。そのとき、急かされることなく正しい決断をしなければならない。頼むぞ、イリオネス』
 『判りました』
 イリオネスは考えた。この山行の5日間に何があったのだろうかと考えた。彼は山行の前とは異なるアヱネアスを見た。
 二人は、二人の従卒を連れて歩みだした。
 『先ず、浜へ行く』
 4人は浜への道を下って行った。浜に立った二人が目にしたのは前にもまして、活気あふれる浜の風景であった。それを目にしたアヱネアスは安堵した。
 掛け声、呼び声があちこちに飛んでいる、声が凛としている、身の動きがきびきびとして軽やかであった。
 ギアスと漕ぎかたの一同がヘルメスの手入れの最中である。ギアスが二人の姿を見て朝の挨拶をした。