『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  547

2015-06-17 16:05:53 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『ほお~っ!そうだったか、お前も櫂を握ったのか?』
 『え~え、握りました。握ってみて、正しい握り方はこうであろうと、握り方と櫂操作を皆に指示したというわけです。あの櫂の構造は素晴らしい出来です。キドニア行きの舟艇の櫂をあの櫂に似せて改造させようと考えています』
 『おう、それはいい。漕ぎかたの連中に見本を見せて、削らせればいい』
 『はい、そうします』
 話は決着するところに落ち着いた。
 ドックスは、ギアスの話を聞いて、新艇をあらゆる角度からチエックした。航走の安定性について十二分にチエックを入れた。安定性と航走速度の相関性を考えた。帆のはらむ風量、風向きに対する風ハラミ順応性、それらを検討に検討を重ねた。三角帆の有効性と操作性、それらの働きによって導き出した構想を仮想して深く考えた。中央帆柱に取り付けた台形の帆のカタチを三角帆にすることを真剣に考えた。
 これまでに古代人が考えて造りあげた帆船の形態を覆す帆のカタチをもって帆船を造る。思考する者自体が、その思考に抵抗しながら考えた。
 ドックスは心に決めた。
 『じっくりと考えよう。時間もそれなりにある、慌てることはない』とした。
 誰かが呼んでいる。俺を呼んでいる。自分を呼ぶ声でドックスは我に返った。
 『ドックス棟梁!よろしいですか?』
 『おう、なんだ?』
 『今日の作業が終わりに近づいています。明日の用材の受け入れ態勢が整いました。点検ください』
 『おう、そうか。行こう。しかと視る!』
 ドックスは立ちあがった。
 このたびの新艇建造は、特別であった。期限は三カ月以内、5艇の建造である。彼らには総動員令が下っている。パリヌルス、オキテスの両隊長の指示による5艇同時建造着手で期限内完成を目指している。ニューキドニアの浜に5艇同時建造の場づくりを七日前より着手していたのである。
 用材の調達依頼先であるガリダ一族からの第一次用材納入が明日に迫っている。浜は、その着荷受け入れの場づくりに追われていた。
 ドックスは、振り返って思い返していた。場に立った。受け入れ態勢に遺漏はないか、彼は、場の出来具合を念入りに点検した。