『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  554

2015-06-27 08:37:17 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 ドックスは、運び込まれた用材の表面を丹念に見て、触れる、手を滑らせた。彼は、彼らの使用している道具類、鋸は?と考えた。かなり切れのいい鋸であろう事がうかがえた。それに比べて俺たちの使用している鋸とに差があるように感じられた。
 次に用材の仕上がり具合である。これはよくできている、我々の仕事の成果に比べて、格段の差が感じられた。彼は、背筋に冷たいものが走るのを感じた。と同時に考えた。
 『我々は製材屋ではない!だが、これについては考えねばならない。仕上がり具合に差がありすぎる。使用している道具の差も考えられるが技術面での差がある』と結論した。
 浜では、新艇建造の場づくりが開始されている。5か所に及ぶ建造の場である。ドックスの描いた図面に基づいての場づくりである。用材のチエックを終えたドックスは、各現場を見回った。
 『おい!お前たち!急がずとよい。丁寧に作業を進めるのだ。いいな』
 『判りました』
 彼らは図面と首っぴきで慎重を重ねて事にあたった。
 ドックスは考えている。
 『1艇を試作するのとトレードの俎上に載せる5艇を造り上げるのとはわけが違う!』
 新艇建造姿勢と心構えを作業に携わる者たちに徹底しても、技術的問題は別の次元の問題である。彼は、部材製作技術の導入をやらなければならないことを直感した。時限のあることゆえにやむを得ないと決断した。
 彼は、この件を早急にパリヌルスらと計って手を打とうと決心した。
 『こんなところに壁があった』とはであった。
 新艇は誰も気づいていない技術的思想で造られる、新しい構造と機能は、現在如何なる者も追随できない思考である。それを具現する新艇の出来上がりは美しく非の打ち所のない優れたものでなければならない。
 ドックスの想いは固かった。
 『必ずやり遂げてみせる!』であった。
 『よしっ!手配を急ごう』
 彼は決断した、動いた。
 彼は新艇建造の場づくりの各現場を見たあと、パリヌルスとオキテスに事情説明と相談に向かった。